3月13日(木)18時半より、もと日之出青少年会館会議室にて、青少年拠点施設プロジェクトの第8回会合が開催された。
前回に引き続いて、今回の会合もプロジェクトの取り組みの前提となるような学習・討論の機会として設定された。学習の主題は「『部落解放への提言』(部落解放運動に対する提言委員会、2007年12月12日)を読む」というものであり、長年、部落解放運動に関わってこられたプロジェクトのメンバーからの話題提起をもとに議論が進められた。
ところで、参加者に事前に配布されていた上記の文書「部落解放運動への提言」についてごく簡単に触れておきたい。同文書は、いわゆる「飛鳥会事件」をはじめとした部落解放運動団体の関係者による一連の事件を「市民社会の倫理から大きく逸脱した事犯」「部落解放運動と連帯してきた多くの人たちにも深い衝撃を与えた」ものと深刻に捉えている。その上で同文書は、「部落解放同盟が真に時代の要請に応える新しい運動の展望を切りひらき、人間解放の崇高な理念にもとづく活力ある組織として再生するためには何をなすべきか」を委員会として提言したものである。
詳しい内容の確認は各々でお読みいただくしかないが、同文書では、たとえば同和対策事業特別措置法の存在した1969年-2002年までの期間を「『特措法』時代」とし、部落の住環境改善をはじめとした大きな成果が得られたとまず大きく評価した上で、しかし運動内部において本来は手段であるはずの要求があたかも目的であるかのように見なす傾向や、行政との緊張感を欠いた「依存」的な関係が生じてきたことなどを指摘した。これらを踏まえた「光と陰の厳しい総括」による不祥事の乗り越えと運動論・組織の再構築というのが、提言の主要な柱にあたると思われる。
こうした内容を深めるかたちで、話題提供者の方からおおよそ次のような提起がなされた。第一に現在において「部落差別とは何か」という原理論的な考察・学習の必要性である。そのためにも特措法の時代において運動(と行政)が進めてきた取り組みにどのようなものがあり、それがいかなる成果を生み出してきたのかを具体的に検証すること。これが今後の解放運動の前進のために不可欠であるとされた。第二に、そうした運動の成果・地平を踏まえた上で、被差別部落住民とその他の人々との間のコミュニケーションのあり方をより〈対等〉〈自由〉なものにしていくということである。こうした関係づくりのあり方について、話題提供者の方は「部落民を自ら名乗る」=「自立宣言」としてのカムアウトの必要性をあわせて強調されていたのが印象的であった。第三に、これまでにも運動における組織的な危機と受け止められる様々な問題があったにも関わらず、十分な検証がされてこなかったのではないかという点についてである。その背景として運動内部における「事大主義的」な傾向があったのではないかという指摘がなされ、民主的な議論を徹底していく必要性が述べられた。
部落解放運動に長年携わってきた参加者が多かったこともあり、たとえば「カムアウト」と従来の運動方針のつながり、運動内部における活動家間の関係をめぐる具体的エピソード、特措法時代とその後で何が変わったのか、これまで被差別部落住民間での対話のあり方は(特に高齢者の場合)どうだったのか等々、提言の内容をふまえた発言や今後の検討課題に関する発言はつきず、会議室の閉室時間一杯まで活発な議論が繰り広げられた。総じて、現状への危機感と今後への課題意識を共有する場となったのではないかと思われる。
なお本プロジェクトの次回会合は、4月19日(土)18時30分より、もと日之出青少年会館でおこなわれる予定である。
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