調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究 部会・研究会活動「青少年対象施設を中心とした各地区拠点施設のあり方」検討プロジェクト > 研究会報告
2008.09.11
部会・研究会活動 < 「青少年対象施設を中心とした各地区拠点施設のあり方」検討プロジェクト>
 
「青少年対象施設を中心とした各地区拠点施設のあり方」検討プロジェクト報告
2008年06月28日

西成地区における子育て・教育運動について

 青少年拠点施設プロジェクトの第11回会合は、6月28日(土)18時30分から、もと日之出青少年会館会議室において開催された。

 今回の会合では、プロジェクトとして行っている第2次ヒアリングの結果をふまえて、現在、西成地区において子育て・教育運動を実際に担っている方々に報告をお願いした。特に、保護者や元青少年会館の指導員などがかかわっている自主的な子どもサークル「スプッチ」の活動について、その現状と課題についてお話を伺った。

 従来、青少年会館(以後「青館」と略)ではその基幹的な事業として、放課後や長期休み期間に子どもの居場所を提供する「子どもの広場」事業が存在した。「スプッチ」は、この広場事業の廃止を目前にした段階で、地域の保護者が自主的に呼びかけあうことで結成したという。また、活動開始の背景には、保護者や地元住民からの「子どもが安全に過ごせる仕組み・居場所がほしい」という根強い声や、大阪市による放課後の児童育成事業が小学生のみを対象としており、中学生が広場の廃止により行き場を失っているという実態などがあったという。ちなみに、「スプッチ」とは、従来の広場事業「チップス」の名称を逆にして名づけたそうである。

 「スプッチ」では現在、保護者や元青館指導員、高校生・大学生ボランティアを中心に運営されている。活動内容としては、月に1度、もと青館に10人程度の子どもが集まり、野球やボードゲームをして遊ぶ、空き缶のリサイクル活動、クリスマス会などの季節の行事、館外に出ての工場・博物館見学などを行っている。また、「スプッチ」では、大阪市の「こども体験プログラム・デリバリー事業」による子ども向けの出前講座も受け入れている。今のところは月1回程度が精一杯なのであるが、今後、夏休みなどの長期休みに合わせては、よりボランティアなどの協力を得て活動回数を増やすとともに、キャンプなども実施することを検討中だということである。ちなみに「スプッチ」では、インターネット上のブログを使うことで、日頃多忙なサークルの日常的な連絡・調整をおこなっているとのことであった。

 今回の報告のなかで、「スプッチ」の方からは、「できることを、できる人から」という考え方が大事だということを強調されていた。このことは、今後のもと青館を利用した活動内容を考える上で示唆的であった。また、「スプッチ」の方からは、実際にサークルの活動のなかでは、子どもがあまり集まらない日もあったりするそうだが、そういう場合でも、館に自分の子どもとキャッチボールに来たと思えばいいと述べられた。このことは、まずそれぞれの活動の担い手があまり構えすぎずに、もと青館を使ってできることから始めることが大事で、やがてそのつながりが蓄積されて、目に見える成果につながるという思いが、「できることを、できる人から」という言葉にこめられていたように思う。

 今回の会合は、本プロジェクトでも度々話題となってきていた「自主サークル」の日常的な活動の様子を、西成地区「スプッチ」の取組みを例として具体的にお話しいただくことで、今後の青少年拠点施設の「使い方」の可能性や課題といったものが共有される貴重な機会であった。

 なお、西成地区全体の子育て・教育運動の状況について、例えば区内の学校園・保育所や子育て支援関連の諸団体・諸機関などのネットワーク形勢による「子どもの虐待防止」の取り組みについての報告があった。また、従来、青館で対応してきた障がいのある青少年の放課後・長期休暇中の活動支援について、条例廃止などによって行き場を失っているとの話もあった。このほか西成地区の青館では、学校に行かない・行けない子どもへのサポートを、文部科学省の試験的な事業の枠組みなども使って行ってきたが、いよいよこれからという段階で青館条例自体が廃止されてしまった、という話もあった。このような話は、いずれも、今後の大阪市を含む各自治体の子ども施策、国の青少年施策のあり方などを考える上で、きわめて重要な課題を提起していると思われる。なお、詳細は『部落解放』2008年8月号を参照。

(文責:池内正史・住友剛)