青少年拠点施設プロジェクトの第14回会合は、11月8日(土)14時から、大阪人権センター会議室において開催された。今回の会合の主な内容は、(1)飛鳥地区の子育てサークルの保護者による、青少年会館(以後「青館」)条例廃止後の取り組みの報告 (2)「最近の子ども施策の動向等をめぐって」と題した住友座長からの報告の2点であった。
【第1報告】
まず飛鳥地区からの報告の冒頭では、最近のサークルの活動を紹介するスライドが上映され、条例廃止後も地域での日常的な子育て・教育の自主的な取り組みや、イベント開催、地域外への「外出活動」が活発におこなわれている様子が伝えられた。
この子育てサークルは、条例廃止が迫る状況のなか、青館によっておこなわれていた「子どもの広場事業」(以下、「広場事業」)に集う保護者を含むかたちで、自主的に結成されたものである。この飛鳥地区の広場事業をめぐっては、以前に保護者による「運営委員会」がつくられ、さまざまなイベントを積極的に発案してきたといった経緯があったという。こうした保護者間のつながりの濃さが、廃止後の子育てサークルの結成と活動展開に受け継がれている面があるといえるだろう。他方で、事業廃止をもひとつのきっかけとして、保護者・子どもの関係の輪を広げようという努力もおこなわれてきたそうである。
現在、サークルでは、毎週土曜日の午前・午後にもと青館を使った「会館活動」がおこなわれており、約30名程度の小中学生が、いくつかのグループにわかれ、ドッジボールをしたり、読書をしたり、ゲームをしたりなど、思い思いに過ごしている。サークルの保護者が事前に日程調整をして、毎回数名でこうした子どもたちの様子を見守っているということであった。また、春のお花見、夏の自然体験キャンプや地域の夏祭りへの参加、冬の芋掘り・焼き芋大会や100名近い子ども・保護者が集まるクリスマス会など、ここには書ききれないほどの(月に1、2回程度)盛りだくさんのイベントや外出活動の実施となっている。ほかにも、大阪市子ども青少年局による「こども体験プログラム☆デリバリー事業」を活用しての「古代文化」の学習なども実施されている。定例会議等による運営や分担の体制がとても機能的であること、地域行事などにつながりを活かして積極的に参加していること、行政施策をうまく活用していることなど、さまざまに参考になる点があると感じられる報告であった。
【第2報告】 報告:住友剛(愛知県立大学)
続けて座長から、「最近の子ども施策の動向等をめぐって」と題した報告がおこなわれた。この報告は、本プロジェクトがこの間におこなってきた大阪市内各地区のヒアリング結果を振り返り、整理するのに際して、政府レベルでの子ども(青少年)施策と大阪市内の状況とを比較することを意識したものであった。
報告では、近年、内閣府等の日本政府レベルにおける青少年施策のキーワードとして「人間力」が浮上しており、これは人間の能力を「知的能力的側面」「社会・対人関係力」といった多面的な観点からとらえるものだという指摘があった。また、少なくとも政府レベルでは、例えば学校外の体験活動の場、放課後の子どもの集団遊びの場づくり、全児童対策事業、地域社会における学習支援サービス等の充実といった、青少年社会教育や児童福祉の領域での取り組みを積極的に位置付ける方向性も出されているという。「人間力」という、政府レベルの青少年施策を貫く視点への批判的な検討も一方で必要である。だが、そこを脇においても、青館の廃止をはじめとする大阪市の施策の動向と、学校外活動のはたす役割も一定位置付けている政府レベルの青少年政策の方向性には、ズレが生じている。このズレの存在を認識した上で、今後、大阪市での取り組みを展望することが必要というのが、同報告の大筋であったと思われる。
2つの報告を踏まえた議論のなかでは、もと青館の施設そのものの整理を含む、大阪市による今後の施策の方向性や、それにどのように対応していくのかが真剣に議論された。ヒアリングを通しても共有されてきた、各地区でさまざまに芽吹きつつある自主的な子育て・教育活動の現状に対し、今後の大阪市がどのような姿勢で臨むのかがますます注目・検証されるべき時期にさしかかっていると考える。
(文責:池内正史・住友剛)
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