今日、就労意欲を持ちながら就労に結びつかないでいる人々、すなわち就労困難者が増加しているが、これらの人びとは、複合的な就労阻害要因を抱えていると考えられ、その実態を明らかにすることが、今般の調査の目的である。
調査の特徴は4点あり、1.この複合的な就労阻害要因は、今日、「社会的排除」として捉えることができる。そこで、今回の調査では他の社会的排除に関する調査と比較可能なデータを追及したい。そこで、社会的排除指標を念頭に置きながら調査票を設計したい。2.また、地域就労支援コーディネーターは、相談ケースから、かかる社会的排除の実態を相当把握しているものと思われる。そこで、補足的にコーディネーターにも協力を仰ぎたい。3.さらに、継続的な就労に繋がっているケースにおいては、その受け入れ先企業の理解や努力も大きいように思われるため、雇う側の取り組みにも注目したい。4.このように、就労困難者の実態や就労阻害要因を社会的排除という観点から明らかにしたい。他方で、本人の努力ももちろんであるが、それを支える地域就労支援コーディネーターや受け入れ先企業の支援を共に明らかにしたい。このことから、日本における社会への参入の実現可能性を追求したい。
社会的排除指標の具体的な項目に関しては、既にEUが1997年の調査において一定の枠組みを提示しており、主として6項目が挙げられている。すなわち、物質的剥奪、制度からの排除、社会関係、劣悪な住居、社会参加、主観的貧困、基本的ニーズからの排除であったが、2000年以降の調査では、そのような社会関係の全般的な排除という視点から、労働・雇用分野にシフトしており、社会問題としての社会的排除の要素が薄まりつつある。具体的には、就労に関わった学歴や訓練、就労経験などが調査項目として重視されているようである。
しかし、継続的な就労に結びついていない人々に注目した際には、学歴や就労能力以外の阻害要因は相当大きなものがあるのではないか。また、就労と社会的なネットワークとのつながりもまた、重要な役割を果たしているが、場合によっては、就労を阻害する方向で機能する場合もある。これらの事情を念頭において、日本の現状にマッチした社会的排除指標を勘案しながら、調査票を設計する必要があろう。
(文責:李 嘉永)
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