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2008.08.12
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地域就労支援調査研究会 報告
2008年04月24日

「甲賀湖南地域就労支援の取り組みについて」

福原宏幸(大阪市立大学大学院 経済学研究科)

 2007年11月26日に、甲賀・湖南地域の地域就労支援の取り組みについてヒアリングを行った。当日の出席者は湖南4市(草津、守山、野洲、栗東)であり、その他に湖南就労サポートセンターの方と、滋賀県人権センターの山口さんであった。

1.湖南地域就労支援の概要

 湖南地域で就労支援の取り組みが進められる背景としては、大阪と同様、地方分権の流れの中で、雇用対策法上地方公共団体もまた、雇用対策の取り組みを行うこととされたこと、今1つは、同和対策事業の関係で、一般施策化を進める必要上、新たな取り組みをしていこうということであった。

 滋賀県は全体を7つの福祉圏域に分けているが、湖南4市もまた、1つの圏域とされていた。また、部落解放同盟滋賀県連合会においても、4市で対応するという枠組みができていたのである。

 支援計画の枠組みは、主な就労支援を要する人々として、7項目を挙げていた。障害者、1人親家庭の親、同和地区の人々、学卒無業者、外国人など、働く意欲がありながら生活習慣、健康や家族などに困難を抱えるために働く事ができない人、その他を挙げている。

 支援の枠組みとしては、各市で設置される就労支援相談員がこれらの人々の就労相談に応じ、個別ケース会議において支援の方策を検討する。各市の事業を支援するためにサポートセンターが置かれており、大阪の地域就労支援の枠組みと類似している。ただし、サポートセンターの人員は2人であり、脆弱の感は否めない。

 この支援体制を形作るために、湖南地区就労支援計画策定委員会が設置されたのであるが、従前からの職業対策連絡協議会の枠組みに沿ったものとなっており、ハローワークや滋賀県人権センター、人権教育セクター、隣保館、各種学校、小中高の先生方がかかわっている。なお、社会保険事務所ではなく、社会保険労務士会が関わっている点は興味深い。この事業の特徴としては、障害のある人が相当就職希望者として沢山いる点である。障害者福祉や雇用促進事業が遅れている結果でもあるが、これらの人々が地域就労に流れ込んでいるとのことである。また、障害者手帳等を持たない人も相当いるとのことである。

 また、1つの特徴として、既存の相談窓口を活用している点である。既存の相談窓口を残しつつも、就労問題については、各市商工観光セクションが設置する就労相談員が関わっていくというスタンスである。既存の相談窓口とハローワークの職業指導員に加えて、地域就労相談員が重なるという形で、3層の構図になっている。

2.各市の状況

 各市の概要として、まず草津市については、製造業が多く、働く場所が多いためか、就労支援の取り組みとしては、推進会議が開かれていない点でやや立ち遅れている感がある。ただし、ケース会議は実質的に動いており、2007年度半期でのべ413件の相談件数となっている。就職者数は07年度で48人であった。

 栗東市は電話相談や訪問、手紙も含めて相談に応じているとのことであった。相談者の68%が障害者の方であり、13%が家族問題等による不安定就労の方であった。最近では難病の方も増加している。しかし、中には障害者手帳を持っていないため、却って支援が困難になっているとの事であった。ただ、行政の姿勢は積極的であるし、栗東の隣保館も、非常に的確な活動報告書を作成しており、熱心さが伺える。

 守山市の特徴としては、レインボープラン、障害者プラン、母子の支援対策を重点課題としている点であるが、最近になってニート(若年学卒無業者)対策が進められている。若者の就労悩み相談という新たな事業をはじめたとのことである。

 最後に野洲市であるが、高齢者が比較的多く、なかなか就労に結びつきにくいという課題がある。また、隣保館に職業安定協力員が置かれており、同和地区の就労相談はこの協力員が受けており、商工観光労働センターの地域就労相談員には相談に行かないという事情がある。

 なお、4市が出資して就労支援センターが設置されており、ここで就労支援相談員の養成講座を行っている。また、実際の就労支援に当たっては、ハローワークから求人データをもらって、それと相談者とを繋ぐ仕事をはじめつつあるとの事であった。さらに、各事業所に訪問して、独自の求人開拓にも踏み込んでいくとのことである。

(文責:李嘉永)