調査研究

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2008.10.29
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地域就労支援調査研究会 報告
2009年10月17-18

貧困研究会で、地域就労支援事業における相談者実態調査の結果を報告しました。

去る10月17日、18日に、大阪市立大学で、貧困研究会の第2回研究大会が開催されました。

その分科会IIIにおいて、当研究所も参加をして実施された「地域就労支援事業における相談者実態調査」の結果を報告しました。

 そこで、当日の報告の概要と、報告資料を掲載いたします。

●分科会設立の趣旨

 大阪における地域就労支援事業は、様々な就職阻害の要因によって就職がなかなか見つからないでいる人々、すなわち一般に「就職困難者」と呼ばれる人たちに対して、これらの要因の解決をはじめ就職に至るまでの支援を、一人ごとに、総合的に実施する就職支援である。彼らが抱える就職阻害要因とは、低学歴や資格のなさ、過去の就労経験の乏しさ、母子世帯などの家庭事情、貧困や多重債務、心身の障害、引きこもりや働くことへの自信の喪失、中高齢であることなどがあげられる。大阪府と大阪府内全市町村は、NPO などとの協力のもとに2002 年からこの事業を開始してきたのである。また、同じように、他のいくつかの地方自治体においても、同じ趣旨から自治体独自の就職支援事業が開始されており、それまでにはなかった新たな就職支援の枠組みが広がりつつある。

 特に大阪における取り組みは、様々な就職阻害要因の解決にあたって、関係する諸機関(自治体の福祉担当部局、教育担当部局、商工担当部局、ハローワークなど)や地域にある支援団体(母子世帯や障害者の支援団体・福祉法人、地域の商工団体など)との連携のもとに、これらの事業を展開している。

 こうした事業の相談窓口に毎年多くの相談者が訪れるが、2007 年12 月-08 年5 月の期間に、この就職相談を利用した方々に対し、彼らの就労と生活の実態についての調査を行った。具体的に、これらの就職相談者が抱える就職上のまた生活上の困難とはどのようなものであるかを、明らかにしようとしたものである。

 分科会IIIは、この調査によって得たデータの分析結果を踏まえて、多様な就職困難の要因が存在することを報告し、あわせてこれらの要因の解決に向け、現場の取り組みとしてまた自治体や国レベルでの施策として、何が必要なのかを明らかにしていきたい。

●報告の概要

 報告では、はじめに、この大阪における地域就労支援事業による就職困難者支援の枠組みと、その成果を紹介するとともに、今後の課題についてひとまず整理を行う。

 次いで、今回の調査で明らかとなった点を、学歴や世帯構成といった基本属性、就職相談理由や就職希望内容、過去の就労経験、健康と障害、暮らし向き、住環境、社会とのつながりなどの観点から報告する。それらは、貧困と、人とのつながりの希薄さや社会保障制度との関係性の弱さといった社会的排除の存在を明らかにするものである。また、それらの事実は、過去の生育環境と一定の関連性があることも明らかにする。

 最後に、これらの点が、就職困難という問題とどう関係しているのかを論じる。また、この地域就労支援事業の一層の充実に向けて求められる支援現場での取り組みや国に求められる施策について、提起をめざしたい。すなわち、彼らを就職までつないでいくにあたっての生活支援、メンタルな問題の解決、そして職業能力の向上に向けた福祉政策と雇用政策の総合的施策の必要性を明らかにする。

●『大阪地域就労支援事業相談者の貧困と社会的排除――調査報告から』<PDF>