1.地域就労支援事業の経過
1973年頃から、同和対策としての雇用施策が和泉市でも実施されたが、そこでは、教育と就職の機会均等が目指され、大企業ないし公務員の安定就労を目的とされていた。しかしその後、多様な職業選択の実現をするべく、自立就労支援が進められることとなる。1999年には、特措法期限切れを前に、自立就労支援方策検討委員会が設置され、市町村行政が雇用対策に取り組むこととなる。そのモデル事業として、2000年に、茨木市とともに、就労支援事業が実施された。その際、アンケート調査・ヒアリング調査を通じた就労実態調査を行い、これを基に、当事者団体の参画の下、就労支援計画を策定した。
この計画は、就労支援の理念として「就労阻害要因の除去・解消・解決に向けて、総合的に取り組んでいくこと」が必要であるとし、住民に最も身近な総合的行政として、市町村がそれを担うべきであるとした。もちろん、市町村だけでうまくいくわけではなく、市、府、国、企業、関係団体、地域社会がそれぞれ担うべき機能・役割を具体化しており、当該計画の推進のために、各部局との連携をつなぐための推進委員会が設置されている。
2.事業の取り組み
2002〜04年度では、職業能力開発、就職促進事業、情報提供事業、地域展開事業、雇用拡大事業、就労支援センターの6事業が行われたが、05年度以降、これらに加えて、無料職業紹介、キャリア・カウンセリングを行っている。
職業能力開発事業は、障害者、中高年齢者、若年者を対象とした能力向上事業を行った。 就職促進事業では、合同就職面接会や相談会、セミナーなどを行っている。とりわけ、和泉市内の産業団地(テクノステージ)に展開している企業の協力終えて、合同面接会を実施している。05年度には、2回の面接会に、それぞれ300名ほどの来場者があり、40〜50人が就職することができた。
情報提供事業では、パソコン・インターネットによる情報検索サービスを提供している。ハローワークの求人情報検索や、職業内容検索、適性診断などが自由に利用できる。
地域展開事業では、地域の各企業集団(企業人権協、商工会議所、テクノステージなど)のネットワーク化、及び職場体験訓練事業に取り組んでいる。
雇用拡大事業(市単費)では、ワーカーズコレクティブやNPOの設立支援助成を行っている。これを雇用機会ととらえて、これらの団体が、就労困難者の雇用を行うよう促す趣旨である。
就労支援センター事業では、4人のコーディネーター(市職員)と非常勤相談員3人を配置し、就労相談を受け付けている。就労困難者である中高年齢者、母子家庭の母、障害者については、それぞれ担当を定めて対応している。
無料職業紹介事業は、地方自治体によるものとしては全国初である。これは、大阪府内求人者及びテクノステージ和泉進出企業に対して就労困難者を紹介し、雇用・就労の安定を図っている。
3.実績と若年者の事例
05年度の実績では、505人を紹介し、182人が就職した。その支援の過程では、単に希望する求人に誘導するだけではなく、適性や能力についてカウンセリングを行い、うまくマッチする仕事に誘導している。ある事例では、どのような職種があっているのかを確定しないままアルバイト就労を続け、事務職への就職を希望していた若年者に対し、技能・体験不足解消のための公衆・講座を活用し、スキルアップを図ると共に、カウンセリングの結果、事務職よりは福祉作業に適性があることがわかったため、ヘルパー資格取得講座の受講を勧めるなどしている。
4.キャリア形成支援
「キャリア」とは、従前、職業的経験や経歴というように理解されてきたが、近年は「人が生涯に行う労働と余暇の全体」とされている。和泉市の就労支援の枠組みの中では、経済的自立や自己実現、社会参加といった働く意義を強調しながら、ワークライフプランを立て、自己と仕事の理解を促すキャリア形成支援を行っている。様々なアセスメントツールを用いながら、どのような職業に適性があるかを見定め、他方で、仕事の具体的な内容を知るためのツールとして、「職業ハンドブック」を活用している。
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