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2006.10.13
部会・研究会活動 <「就労困難な若年者支援」研究会>
 
「就労困難な若年者支援」研究会・学習会報告
2006年6月22日
豊川地区における地域就労支援の取り組み

前田 明美(豊川地区地域就労支援コーディネーター)

 茨木市豊川地区では、若い相談者が多い。進路選択支援事業を担っている元教師の相談員と連携し、高校生・中学生の進路状況を把握しながら、就労支援の取組みを進めていることが背景にある。

 2005年度の相談件数は375件であり、年齢層としては概ね同じ件数で分布している。しかし、中高年者は増加傾向にある。

 就労相談に来られた方の中には、様々な阻害要因を抱えている人びとがいる。生活困難や借金、自己破産、配偶者からの家庭内暴力や育児放棄などが見受けられる。しかしこれらの人びとは、様々な支援の仕組みを知らされておらず、例えば保育所入所の可能性についても情報を持っていない場合がある。また市役所の窓口に誘導しても、対応の冷たさにめげてしまう人もいる。

 若年層で言えば、こうした社会生活への一歩すらも踏み出せない者もいる。就労相談に来る子はまだよいが、そうでない子については、家庭訪問することもある。ただ、地区の中には、困ったら「前田さんのところにいけばいいか」という雰囲気がある。他方で、地区外の方も多く相談に来ている。その経路は、口コミや行政からの誘導などがある。

 豊川地区では、あまり人口の流動が激しくなく、他地区に比べて関係性はまだ保たれている。とはいえ、日常的な交際は希薄になりつつある。子育ての組織として「ティータイム」があるが、しんどいお母さんを組織し切れていない状況がある。しかし、そういったしんどいお母さんが相談に来ている。その結果、就労や生活保護、保育といった支援の仕組みにつないでいこうと努めているが、なかなか就労にまではたどり着けない。出口の問題はなかなか困難なものがある。その点では、ハローワークと連携している。時には履歴書作成や、面接の受け方を支援することもある。

 中高年男性は切羽詰っているので、割とすぐに就職について行動に移るが、若年者や母子家庭の母親などは、なかなか一歩を踏み出せない。仕事のイメージが上手く作れなかったり、自信が持てず、面接が上手く行かない場合がある。

 また、困難な家庭、とりわけ生活保護世帯で育った子どもの中には、生活保護で「なんであかんの」という反応をする子もいる。生活保護費の水準の給料を得ようと思えば、かなり厳しいということも背景にはある。困難な家庭に育った若者たちに、異なる環境を提供することで、彼・彼女らの意識が変わっていくということがあるが、以前であれば地区の青年部活動に引き寄せていたが、現在はなかなか乗ってこない。また、かつては解放教育という枠組みの中で、学校と親、そして地域が連携しており、小学校や家庭で、親世代の生い立ちや仕事について聴きとりをするという取り組みがあったが、現在ではなくなっている。

 若年者の成功事例でいえば、高校卒業後、社会福祉法人経営のパン屋さんの工房で働き、障害者の支援サポートをしていた。収入もさることながら、組織の中で人と人のつながりが自覚できるようになり、その結果仕事への責任感を持つようにもなった。「承認されている」「認められている」という感覚が大事だと感じた。

 男の子の場合、周りから「働けよ」という声があるのか、だいたい働いている。しかし、中にはしんどい子もいる。体力が持たず、よく無断欠勤をして、すぐに止めてしまったりしている。また、就職活動が上手く行かず,結局アルバイトをしている子もいる。この子たちが、将来の夢や展望をもてない状況は何とかしなければならない。

 また、行政的な支援については、若者向けのものがほとんどない。支援計画を立てる際にも、パソコン講習などがあるが、その前段の講習はないし、また、就業後に若者たちを見守るという機能もなく、受け入れ先開拓も就労支援コーディネーターに任せきりになっている部分がある。行政的な支援のあり方を再検討して欲しい。

(文責 李嘉永)