『人間みな兄弟―部落差別の記録』は、1959年〜60年にかけて制作され、60年に完成した記録映画である。監督は亀井文夫であり、本映画の制作経過は当時の雑誌『部落』、『解放新聞』や単行本『たたかう映画』(亀井文夫著、岩波新書)などに散見される。
本映画の制作以前から、野間宏・杉浦明平・八木保太郎・今井正・松本酉三らが部落問題に関する映画の作成を目指していたが、実現には至らなかった。しかし、1959年8月25日の部落解放同盟中央委員会決定により、「解放運動の発展に寄与するものと認め、その制作に協力することを決定しました」として映画制作の協力を承諾され、映画が作成されることとなった。制作趣意書によれば、その目的は部落差別の現実を「映画を通じて全国民に訴えること」となっている。映画制作には300万円の制作費がかかることから、そのうち150万円をカンパで賄うこととなっており、雑誌『部落』や『解放新聞』上でカンパのお願いが何度かなされている。
完成した映画については、北川鉄夫・上田正昭・谷口修太郎らが座談会形式で評価をしており、「部落問題を初めてえぐった作品」として一定の評価を与えているものの、解放運動の様子や運動に参加している人があまりとりあげられていないことから、部落解放運動に積極的に参加している人、部落問題に関心のある人にはものたりない、部落と部落外の比較がない、同和教育のうらづけがえがかれていないなどの批判も見られる。
部落解放同盟としても、1960年の全国大会に向けた一般活動方針(案)で、文化運動の一環として映画の上映運動が重要であることが指摘されているが、その後、部落解放同盟内部で大きく取り上げられたかどうかはわからない。しかし、高校など教育現場を中心に、活発に上映運動が取り組まれたとする資料もある。
1961年には、ブルーリボン教育文化映画賞、毎日映画コンクール教育文化映画賞を受賞している。