調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

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2003/05/07
部会・研究会活動 <都市下層と部落問題研究会>
 

都市下層と部落問題研究会

<都市下層と部落問題研究会とは>
 前年度までの成果は、ひとまず『都市下層社会と部落問題』と題する論文集として、当研究所から近く出版する予定である。そこで本年度から、そこで得た成果を共有し、それにもとづきながら、さらに都市下層と部落問題以外にも対象を広げ、そのことによって、ひいては、本来のテーマに関する新たな視点を獲得し、研究が深まることをめざすものである。

 本年度は、日本社会におけるさまざまな差別が社会構造との関わりにおいてどのように存在してきたのか、また社会の側はそれらの対象をどのように認識してきたのかについて明らかにした上で、「隔離と囲い込み」という視角を軸にしながら、多様な差別の相互連関を解明し、かつそれらを、日本社会のなかに位置づける試みを行う。

 本研究で設定している主たる対象は、次の通りである。まず社会全体の枠組みについて考察するための、(1)支配の正統性ならびに支配秩序形成に関する研究、を行い、それを共通認識としながら、(2)ハンセン病・結核などの病気、(3)被差別部落、(4)都市下層民・芸能民、(5)在日外国人、の個別の差別について研究を進める。

 本研究の特色は、(1)学際的であること、(2)多様な差別を文化史的アプローチで解明すること、(3)マイノリティと社会の関わりを考察し、ひいては近代社会に生きる個々人のありようを問うこと、にある。すなわち多様な差別に視点をあて、かつ差別という視点に徹底してこだわることにより、その地点から、日本の近代社会の支配秩序のあり方を浮かび上がらせることをねらいとする。

 具体的には、民衆はたえず<他者>としてのマイノリティに対して、<異化>したり<同化>を求めたりしながら、<統合と排除>を行ってきた。一見相反するように見えるこれらの対語は、実は混交し交錯しているのであり、またマイノリティの側も<自立>=<異化>と<同化>の双方の間を揺れ動きながら差別からの解放を模索し、他のマイノリティに対しては、同様に<統合と排除>を行うことに荷担してきた。こうしたありようを、<隔離と囲い込み>をキー概念として、<自己と他者>すなわち社会とマイノリティの関係を問うならば、自己の安泰を確保するための<隔離と囲い込み>が実は他者への抑圧となり、また自己の孤立化を招来し、ひいては自己への抑圧の強まりを結果することにもなるという構図が浮かび上がってこよう。なお、多様な差別の共通点は、いずれも差別は、差別のための<自己と他者>の境界が<つくられたもの>であることであり、その意味で、人種主義(racism)と同根であるといえる。

 以上のような見とおしに立ちながら、相互に活発な議論を積み重ねていきたい。

(黒川みどり)