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世界人権宣言54周年記念大阪集会講演(1)
2002年12月10日
タイにおける国家人権委員会

スティン・ノーパケッ(タイ国家人権委員会委員

タイ国家人権委員会設立経緯および基本内容

 タイ国家人権委員会設立にあたっての重要な要素は人々の参加と関与であったが、その活性化は非常な困難を要した。セミナーやワークショップ、歌など様々な活動が取り組まれたが、最も効果的だったのは活動のシンボルとなった「緑の旗」であった。

 タイにおける人権の保護およびその促進にむけて、大きく4つの法がある。

 一つは、政府、政界、市民社会の公開性と透明性を確保した「情報法」、二つめは、人権保護メカニズムの一部としての「オンブズマン法」、三つめは、下級公務員を高位の公務員による虐待から保護するための独立機関に関して規定した「行政裁判所法」、そして最後にこの講演のテーマでもある「国家人権委員会法」である。

 タイの国家人権委員会法の機能としては、

  1. 国内および国際レベルにおいて基本的人権の尊重と遵守の実行と促進する
  2. 人権侵害行為を調査・報告する
  3. 人権の保護および促進のための政策ならびに法改正等を提言する
  4. 人権に関する教育、研究および知識の普及を促進する
  5. 人権に関して政府機関や民間組織および他の組織間の協力・調整を促進する
  6. 国内の人権状況と委員会活動に関する年次報告書をそれぞれ準備する
  7. 政府が国際人権条約への加盟を検討している際に意見を提言する

などがある。

 このタイ国家人権委員会設立は、1997年のタイ王国憲法内に人権の保護および促進に関する部分として第199条および第200条が盛り込まれており、まずこれに基づいて「国家人権委員会設置法」が起草された。そして公正中立な選任委員会による国家人権委員選出のための努力がなされ、人々にとってより効率ある国家人権委員会となるようにしてきたのである。

国内人権委員会の重要性

 国内人権委員会がより効率的にその任務と責任を遂行するためには、なによりもまず、国内人権委員会はその組織構成、意思決定プロセスや財政面など、すべてにおいて完全な独立性が確保されていなければならない。そしてそのためには国内人権委員会が政府または政府のどの省庁にも属することのない、独立した機関であることが望ましく、あわせて非政府組織(NGO)からも独立した存在であるべきである。

 国内人権機関はあらゆる組織との直接的な衝突は避けなければならず、社会のあらゆる部門との活動および調整を行い、広く開かれた政策を策定しなければならない。

 そして国内人権委員会は、あらゆる人々が簡単にアクセスできる場所や組織の形態を考えて設置されなければならない。ただし、そのためには十分な人員が必要である。

 タイでは、2002年から2007年にかけて国家人権委員会の計画として8つの主要な戦略と5つの重点分野を設定した。

 8つの戦略とは、(1)効率、効果、説明責任を明確にした、組織の強化、(2)情報ネットワークと、行動を伴った調査に基づく関連知識の向上、(3)人権および人間の尊厳の尊重を確実にするための政策の促進と法改正、(4)国内パートナーおよび国際パートナーとのネットワークの強化、(5)組織内のより実効性のある人権保護メカニズムの構築、(6)憲法に規定された権利の行使と保護のための人々のエンパワメント、(7)促進的活動と予防的活動の協調、(8)人権および人間の尊厳の尊重に関する社会的学習プロセスの支持であり、5つの分野とは、(1)子ども・若者および家族、(2)天然資源基地とコミュニティの権利、(3)法律と司法手続き、(4)社会問題、(5)人権教育、である。

おわりに

 国内人権委員会設立に強い関心をもっておられる日本の人々に対して、以下のことを具体的に希望する。

  1. 現在審議されている「人権擁護法案」が飛躍的に改善されること。とくに委員会の独立性を高めること
  2. 人権委員会を法務省または内閣府などの省庁の所轄とする方針の転換
  3. NGOを含むより広範な活動によって、政府と議会に影響を与え、現在の「人権擁護法案」よりもいっそう独立性、公開性、実効性、機能をもった人権委員会の設置を実現していくこと。