講座・講演録

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2011.02.04
講座・講演録

 

第19回ヒューマンライツセミナー

待ったなし 日本の人種差別撤廃 -国連勧告の実施に向けて-

2010年9月3日(金)、大阪府男女共同参画・青少年センターにおいて第19回ヒュ-ンマンライツセミナーを開催、約450名の参加がありました。
2010 年2月にジュネーブで開催された人種差別撤廃委員会(以下、委員会)による日本報告書の審査の総括所見では、国内法の整備や条約の対象である日本のマイノリティに関する問題について30に及ぶ勧告が示されました。日本が条約に加入したのは1995年。この間、条約監視機関として委員会は日本の差別問題について様々な勧告を出してきたにもかかわらず、国の差別撤廃に向けた取り組みが一向に進んでいないことが明らかになりました。
今回のヒューマンライツセミナーでは差別撤廃に取り組むマイノリティコミュニティの代表と日本の法整備の問題に取り組んでいる市民運動の代表をお迎えして、「待ったなし!」の段階に来ている日本の人種差別撤廃の取り組みについて議論をしました。基調講演とシンポジウムの概要は以下の通りです。  (文責 事務局)

第一部 講演 武者小路 公秀さん(反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)理事長)

第二部 パネルディスカッション
和田 献一さん(部落解放同盟中央執行委員)
阿部 ユポさん(北海道アイヌ協会副理事長)
李 美葉 さん(多民族共生人権教育センター理事長)
山崎 公士さん(人権市民会議企画運営委員長)
司会進行:小森恵さん(IMADR-JC事務局次長)


 

◆◇基調講演◆◇
今日の日本における人権問題と種差別撤廃委員会の勧告
武者小路公秀さん(IMADR-JC理事長)

2 日本の人種差別をなくすには、日本に暮らす私たち自身が話し合う必要もありますが、外から見る方がわかることもあります。人種差別撤廃委員会(以下、委員会)の日本審査総括所見を受けて、私たちは日本を卑下するのではなく、政府と一緒になって世直しをしていこうと考えるべきでしょう。所見はさらに良い社会を築くためのアドバイスです。
所見には、アイヌ民族とともに沖縄の人々の代表者との幅広い協議も勧告しています。沖縄の固有な民族性や文化、伝統の認識を取り上げていることは、外国の専門家たちで構成している委員会が、日本についてかなり勉強している証(あかし)でしょう。私たちも日本における人種差別の特徴として、日本の歴史を基に様々な差別がどう起こってきたのかを考える必要があります。
徳川時代、ヨーロッパの植民地にならないために、日本は鎖国をしました。その際、日本人がまとまることがもっとも重要でした。小学校で子どもをまとめるのに一番手っ取り早いのは「いじめ」です。いじめられている子どもはつらいけれど、その子以外は自分を優位にみなし、誇りを持ってまとまります。明治維新では、天皇制の下、みな中産階級という意識をつくり、団結を強めるために部落差別を利用しました。部落差別の次に一連の植民地侵略に基づく差別がおこりました。北海道の植民地化を行い、アイヌ民族に対する差別を生みました。琉球王国を併合して、沖縄の民族をいじめられる側に立たせました。その次が韓国併合です。朝鮮半島から、強制移住も含めてたくさんの人々が来日しました。在日コリアンに対する差別は日本人を結束させるためのひとつの手がかりとして現在も使われています。最近はたくさんの移住労働者が来ていますが、やはりその人たちを差別して日本をまとめようという動きが出ています。
いじめの構造の中で日本はまとまり、経済的にも豊かになりました。今、それが変わる可能性があります。日本だけでまとまろうとするには無理な時代になって、そこをどう乗り越えるかという変化が起こっています。
民主党政権に代わり、人権問題に取り組む時代がきたと人種差別撤廃委員会も考えたようですが、残念ながら今のところそのような動きは出てきていません。このような人権重視の動きが出てくるようにするためには、私たちが民主党に対して人権NGOや市民の協力体制を作って、民主党が人種差別をなくすための施策を採用するように主張しなくてはなりません。在特会(在日特権を許さない市民の会)のように、日本人の結束を強化するような、外国人いじめがなくなったらつまらないと考えている人たちもいます。日本政府は人種主義の宣伝をすることが処罰対象とするべきであるという条文を留保しています。いじめの構造の中で、先生もいじめに参加した方が、効果的にクラスがまとまると考えているのでしょう。
政権が代わった今、さまざまなマイノリティが一緒に運動し、「待ったなし」と人種差別撤廃に向けて訴えるには良いタイミングです。「待った」をかけようとする運動も力をえようとしているのですから、我々は「待ったなし」でそのような反動的な運動に対して勝負をかける必要があるのでしょう。



 

◆◇パネルディスカッション◆◇
人種差別撤廃委員会日本審査総括所見を受けて

「世系」に基づく差別 ――部落問題

和田献一さん(部落解放同盟中央執行委員)

3 部落問題を人種差別撤廃委員に認識してもらうため、IMADRジュネーブ事務所が精力的にロビイング活動を行った結果、審査では政府に対してかなり突っ込んだ質問が行なわれました。
総括所見では部落問題について6つの勧告が出され、中でも政府が相変わらず、部落問題は社会的出身による差別で、人種差別撤廃条約の対象ではないとして報告書に一言も記述していない事に対して、次回の報告書に入れるようにとの厳しい指摘がありました。部落民の定義に関する質問にも、政府は「何の違いもない」「定義ははっきりしていない」と主張しました。委員会の「特別措置法が終了し、平等が実現したことが持続的である事実を数値的に示せ」という意見にも、「あらゆる差別をなくします」と抽象的に返すだけでした。国を代表する者がこのような認識であることは大きな問題です。
委員会は人種差別の定義に5つの事由を挙げ、そのうちの4つの事由に網羅できないものをフォローする概念として「世系」を挙げていますし、一般的勧告29でインドのカースト制度とこれに類似する差別が「世系」に入ると明確に示しています。明らかに部落問題は条約の対象となると示したのです。しかし、日本政府の姿勢は変わりません。アパルトヘイトの廃絶の次はカーストによる差別の廃絶に取り組まなければならないと人権高等弁務官は主張しています。国連人権理事会のメンバーである日本は、同和対策に取組んできた経験を生かして、世界にカースト制度とそれに類する差別を廃絶していくための先導役を担う責任があります。
日本は1995年に人種差別撤廃条約に加入しています。条約の重要な柱は差別行為の禁止、人権侵害を受けた人にたいする有効な救済措置、そして人権教育・啓発です。2002年の「特別措置法」終了後の部落問題の解決には、この条約が大きな力になっていくはずでしたが、現実にはこの条約は十分に機能していません。
その理由のひとつは「差別を犯罪として処罰する」条約4条を留保した上で加入したことです。表現の自由、結社の自由を守るため、つまり「部落民を殺せ」という人たちを守るために差別禁止法は作らないと留保しています。今回の審査でも差別の被害者の救済・権利回復のために差別禁止法をつくるように委員会は主張しました。条約の中心である4条を留保したのでは、条約が十分に機能できないのです。
今回の勧告では戸籍制度にも言及しています。戸籍法に差別に利用した場合の厳しい禁止措置、処罰規定を設けるようにとのことです。明治民法や「出生による差別を誘発する」戸籍制度が継続されていることは基本的人権の立場から厳しく批判されていますし、改正されるべきでしょう。


 

アイヌ民族の歴史と現状

  阿部ユポさん(北海道アイヌ協会副理事長)

4 アイヌ民族の立場で2001年と今回2010年の審査に参加しました。驚くべきことに、この9年間、日本政府はなんら進展のない報告をしています。国際条約は国家間の約束事です。条約をしっかり守っているかを監視するのが国連条約監視機関です。日本政府は委員会勧告を法的拘束力がないといいますが、だとしたらなんのために国際条約に加入したのでしょうか。
アイヌ民族は日本の先住民族です。先住民族の権利は「先住権」と言います。20年ほど前、参議院でアイヌ民族の先住権を認めるかと質問が出た際、当時の官房長官は「十分検討させます」と答弁しましたが、何も変わっていません。
2007年国連で「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されました。日本の国会でもこれを受けて、2008年6月に、衆・参両院で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が採択されました。「政府としても、アイヌの人びとが日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族であるとの認識のもとにアイヌ政策を推進する」との内閣官房長官談話も発表されました。この時点で、日本政府が、先住民族についての明確な定義を示さなかったのは残念ですが、万人が納得する定義を示すのは極めて難しいので、やむをえないのでしょう。
アイヌとはアイヌ語で、人間という意味です。「アイヌ・モシリ」とは、「人間が住む静かな大地」と言う意味です。アイヌ民族は北海道を中心に、現在のサハリン、クリル諸島、本州の東北部に住んでいました。近代に入って日本とロシアに侵略され、領土を分割されました。参議院議員だった萱野茂さんは、「アイヌ民族は、日本政府にアイヌモシリ(北海道)を、売った覚えも、貸した覚えもない」と言っていましたが、不法に日本国家に侵略され、征服され、支配されているのは事実です。日本のアイヌ民族に対する抑圧、征服、土地の強奪は、政治的問題だけではなく、民法問題でもあります。1997年に人種差別撤廃委員会による「先住民族に関する一般的勧告23」で、「先住民族の同意なしに奪った土地の返還、または公正で迅速な賠償」が求められましたが、日本政府の対応は、なんら変わっていません。
委員会では、国レベルの先住民族の実態調査の実施も勧告されています。北海道庁では7年に1回、アイヌ民族の実態調査をしています。ところが2006年の調査では大変な間違いがありました。1999年の調査では31%の人が「生活がとても苦しい」といっているのに、2006年には0.3%となっていて、私たちは再調査を要請しましたがまったく応じてもらえませんでした。ところが今年6月の北海道議会で4年前の調査報告書が間違いで、実は29.7%だったと報告されました。なんといいかげんな調査でしょう。これから北海道庁に強く訴えていきたいと思っています。


 

在日コリアンへの差別撤廃と人権確立

李美葉さん(多民族共生人権教育センター理事長)

6 多民族共生人権教育センターは、人種差別撤廃NGOの一員としてレポート作成にかかわってきました。審査が行なわれたジュネーブでは、昨年、在特会が京都の朝鮮学校に暴挙を働いた時のDVD上映が行われました。ちょうど高校無償化に朝鮮学校が排除されるという日本の差別を露呈するようなホットなニュースも飛び込み、勧告にも反映されています。今回の勧告の内、外国人に関するものでは、韓国・朝鮮学校生徒などの集団に対する露骨で粗野な発言と行動があいつぐ事件に対する留意、日本名や日本漢字の強要禁止、外国人の子どもの義務教育の保障や外国人学校に対する差別的取り扱いの禁止、そして公職、今回は家庭裁判所調停員に就けるようにといったものがあります。
今年は韓国併合100年、私たちが植民地支配から解放されて65年、韓日の国交正常化45年という年です。1982年の難民条約が発効して以降、日本の外国人に対する施策は大きく変化してきました。ところが、旧植民地支配出身者に対する露骨な差別は続いています。
入居差別は今でも深刻です。私の息子が大阪でアパートを借りる仮契約をした時、朴(パク)という名前を伝えたら、「先約があった」と断られました。しかし、これが差別だと証明できないので泣き寝入りせざるをえませんでした。外国人を忌避する意識はまだ残っていて、直接的な差別以外でも、差別とわからない巧妙な逃げ道を作っています。
さらに深刻な問題は、オーバーステイや非正規就労者を確認するため、外国人登録証の提示を求められる事件があちこちで起きていることです。その登録証が在留カードへ移行されている中、特別永住者の登録証は特別永住カードとなり、常時携帯を免れることになっています。こういうことが在日の特権だと在特会は言うのでしょう。彼らの最大のターゲットは私たち旧植民地支配出身者の子孫です。
国籍の問題もあります。旧植民地出身者には韓国籍と朝鮮籍がありますが、朝鮮籍は国籍ではなく、朝鮮半島出身者に対して日本政府が与えた記号で、その後韓国籍を取得していないということです。実際は無国籍です。しかし朝鮮籍=北朝鮮籍とみなしていることも問題です。参政権の議論でも、人権擁護法案で外国人にも人権擁護委員の門戸を開く議論の時も「朝鮮籍者は排除する」としています。他の国籍にはそういうことは言っていません。
日本における朝鮮人や朝鮮半島を植民地支配するに至った思想をきちんと検証しないと、根底のところから外国人に対する忌避意識は排除できないでしょう。差別禁止法の制定と共に、日本がたどってきた道をもう一度振り返ること、歴史教育にも解決の糸口をみつけていくことが今後の課題です。


 

国内人権機関の設置と人権救済法制度の充実をめざして

山崎公士さん(人権市民会議)

5 法学者として法的な義務の有無を検証すると、委員会が出した総括所見は日本の裁判官を直接法的には縛ることはできません。しかし、人種差別撤廃条約に日本は加入しているのですから、締約国によるこの条約の適用状況を監視する人種差別撤廃委員会が出した総括所見は、国家機関である内閣や裁判所によって尊重されなければなりません。条約の締約国は、総括所見に法的に縛られないにせよ、これを尊重し、できるだけその内容を実現すべき立場にあるからです。
条約の実施機関である人種差別撤廃委員会が提示した総括所見の内容は、国民の代表である国会できちんと議論されるべきです。私が所属する人権市民会議は、当事者主義を原則に日本社会の人権課題に関する法制度の検証や提言活動を行なっていますが、憲法や条約と言うものさしから見ると、日本の法制度には明らかにおかしい点があります。たとえば、婚外子に対する相続を婚内子の半分としている民法900条4号但し書きはあきらかに憲法が保障する平等原則に反しています。しかし、裁判所は立法府が法律を正さなければ、今ある法を当てはめて判断せざるをえず、間違いを指摘できません。
国会が法律を正さない場合、どうしたらよいのでしょう。オーストラリアでは、アボリジニの人々に対する差別的な政策はおかしいと政府から独立した人権委員会が提案を行ない、それを受けて当時の政府が謝罪したことがありました。是正すべき法制度が改善されないと、不利な立場におかれる人々には大変な権利侵害になり、日本全体にとっても不幸をもたらします。残念なことに権利侵害は公権力によることが多く、本来は国会が是正すべきものですが、国会が問題提起できないなら政府から独立した人権機関を早めに作って、その役割を果たさせる必要があります。
現在、日弁連や活動家の皆さんと作っている人権擁護法案の対抗案づくりの大詰めのところです。様々な救済方法を挙げ、差別助長行為に対する差し止め請求訴訟や、法制度是正意見表明のように法制度の中に根源が埋め込まれている人権侵害についても救済の対象にすべきとしています。実現すれば画期的なものになるでしょう。改善すべきポイントを提示する形で、広く市民の合意を得て国会での議論に持ち込みたいと思います。


 

質疑応答

人種差別撤廃条約を日本で機能させるには?
7和田 そのために政府が掲げているのは人権教育です。人権教育の内容は、条約の中に示されている国際人権基準を学ぶことです。人権侵害や差別の状況を変えていくには条約の人権基準を機能させることに心を砕くべきでしょう。
条約加入の際、村山内閣当時の国会が付帯決議に「部落差別を含むあらゆる差別」が対象としていますが、基本的に第1条に部落をいれていません。また第4条を留保しています。条約をしっかりと機能させるには、これらを変えねばならないでしょう。

Q北海道庁の調査結果の誤りは作為的ですか、単なるミスですか。
阿部 このことを私たちが知ったのは2週間ほど前の8月20日です。2月の国連人種差別撤廃委員会における日本政府報告で政府が2006年の調査に触れられているにもかかわらず、間違いの部分は報告していませんから、もっと早い段階でわかっていたのかもしれません。意図的だとしたら大変な問題です。慎重に調べて北海道庁と話し合いをしなければいけません。マイノリティに対して人権侵害をするのは国家権力、行政ですから、連帯して訴えていきたいと思います。

Q福祉行政で外国籍の人が差別されていると思いますか。
李 在日外国人高齢者や一部障がい者の年金問題は未だ解決されていません。また、外国人が増える中で、あらゆる福祉行政の不備や不徹底が問題となっています。外国人登録法が昨年改正され管理が強化されてきています。管理の必要性ばかりが注目されていますが、単に、司法、行政の視線だけの管理にならないように、私たちの生存権に還元されるような法制度になっていくよう、注目していきたいと思います。

Q日本政府代表の見解は政権与党が変わっても影響を受けないのですか。
山崎 条約には日本政府が入るのではなく日本国が入っています。ですから日本国を代表する政権がどう変わろうと、一貫して条約に対する責任を負っています。

Q日本が勧告をすべて受け入れた場合、一般市民への影響はありますか? 
山崎 これまで見過ごされてきた様々な人権侵害の解決方法が出てきます。裁判が起こしやすくなりますし、非公開の場で当事者間の話し合いを行なう場合もでてくるでしょう。

Q人権侵害救済のための仕組みづくりの今後のスケジュールは。
山崎 国内人権機関設置検討会がこの秋に要綱を示す予定です。内閣府に設置する、様々なマイノリティを委員・事務局に登用する、独立した財源を確保する等を柱に策定しています。


 

これからの課題

和田 委員会における政府の説明はかなり抽象的でした。委員会は差別の事実を実態調査に基づき、具体的に示す作業を強く求めていました。また、「特別措置法」終了後の部落問題解決の日本政府の基本的方針は1996年の地域改善対策協議会意見具申と表明しているので、それをきちんと読み直すことが必要です。
2002年までは総務庁地対室が部落問題の担当でしたが、現在は担当部局がありません。また、国際人権条約の批准は外務省の責任、国内での人権教育の推進は法務省の責任としていて、国際人権基準を内容とする人権教育を徹底させる道筋ができていません。
これからの運動は、丁寧な作業をつないで道筋を作ることです。とくに国会議員が条約を掲げて議論し、国内基準として徹底させていくことが必要でしょう。

阿部 8月の国会で菅総理は韓国支配に対する談話を発表しましたが、創氏改名が最初に行なわれたのはアイヌ民族です。強制的に日本民族に入れられ、言語や宗教、狩猟・漁労も禁止しました。食べるものがなくなり、アイヌの中で餓死者が出ると、日本政府は「文明国家である日本で、土人が餓死するのは国際的に恥ずかしい」と、明治32年の「北海道旧土人保護法」をつくったのです。アイヌ・モシリを北海道と改称し、日本の国有地にしました。これを植民地化というのです。日本でいくら訴えても取り上げてくれないので、国連で訴えたら、世界の仲間が一緒になって活動してくれました。日本の先住民族問題は決してローカルな問題ではありません。今後もご支援をよろしくお願いします。

李 私たちは、多くの人々が困っていることを吸い上げながら活動をしていて、法律や条約を常に気にしているわけではありません。しかし、私たちだけでは状況を変えることはできないので、IMADRに集う人たちとネットワークや、他の全国のNGOとのつながりを強化しながら、多くのことを変えていける力にしていきたいと思います。
メディアの力もうまく利用したい。踊らされるのではなく、どうしても右寄りになっている日本の流れに厳しい目をもって、迎合しないスタンスをもっていきたいと思います。

山崎 国会議員や政府に対する人権教育のあり方の検討や国内人権機関の新設が目標です。
当事者を政策立案に参加させることも大切です。昨年12月に内閣に設置された障がい者制度改革推進本部のもとに立ち上がった障がい者制度改革推進会議のメンバーは半数以上が当事者またはその家族です。障害者権利条約のキーワード「私たち抜きに、私たちのことを決めないで」は、さまざまなマイノリティの現状を語る場合も使えます。会議では1,2年以内に自立支援法にかわる障害者総合福祉法、2年以内に障害者差別禁止法を作る方向になっています。
今年の参議院選挙前に各政党に国内人権機関の設置についてアンケートを送りました。みんなの党は無回答でしたが、自民党からは否定的回答を、その他の政党からはそれなりに前向きな回答をいただきました。この結果を報告した院内集会はメディアの関心も集めました。議員は「人権課題は票にならない」と勘違いしていますので、そうではないと認識いただくためにも今日のような集会を開催するなどの活動を重ねていきたいと思います。


 

パネルディスカッション終了後、管直人内閣総理大臣宛の「人種差別撤廃条約および人種差別撤廃委員会の勧告の完全実施を求める要望書」が満場の拍手で採択されました。

当日資料として配布された「現代世界と人権24 今、問われる日本の人種差別撤廃 国連審査とNGOの取り組み」(定価2、300円+税)を販売しています。お問い合わせはIMADR-JC(〒106-0032 東京都港区六本木3-5-11 TEL03-3568-7709 FAX03-3586-7448 Email:imadrjc@imadr.org)まで