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行財政部会・学習会報告
1999年3月13日
ブレアのイギリスから何を学ぶか

(報告)舟場正富(神戸商科大学)

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 1997年に英国で成立したブレア政権(労働党)の政策展開、特に自立支援の政策を中心に報告していただいた。(参照、舟場正富『ブレアのイギリス』PHP新書)

 ブレア政権では、国家は国民的な課題の解決を行うものではなく、人々の自立への支援を行う役割を果たすべきだとしている。

 ブレアの政策の最大のポイントは、第1は教育の再生であり、第2は雇用を通じて福祉のあり方を変えていこうとすることである。

 それまでは、教育の役割は能力に応じた選別化であるというスタンスであったが、ブレアは、すべての子どもの将来に責任を持ち、ハイテク時代の産業に寄与するための学力の底上げを主張した。具体的には、学力の向上に失敗した学校の名前を公表し、それを改善できない学校においては、校長を始めとした教師の入れ替えを行うという措置等をとった。また、教員の給与に学力向上への成果を反映させるという成功報酬を盛り込むことも提案されている。

 福祉面では、国や地方自治体による社会的弱者への給付型の福祉が理想とされてきたが、それにより国民の自立心を弱体化させてしまったとブレアは評価した。そこで、従来とはまったく違う大胆な「ウェルフェア・ツー・ワーク」(仕事のための福祉)という政策を打ち出した。福祉のニューディールとは、福祉の対象者を自立した就業へ移行するための政策体系をつくるということであった。その際に念頭に置かれたのが、25万人の若年失業者と100万人のシングル・マザーであった。具体的な政策としては、25歳以下の失業者25万人を雇用する事業者に対して補助金を出すこと、100万人にのぼるシングル・マザーに対して生活扶助から脱却して就業を保障するための就業補助金や保育の体制の整備を進めることであった。

 以上のようなブレアの政策体系を、新産業主義というキーワードで捉えることができる。それは、イギリスの人々に自立した協働社会をつくっていこうという勇気と信念を与えることに成功し、既得権に安住して衰退していくことではなく、すべての国民に働く機会をつくりだすトータルなシステムを提起できているからである。

 時代の移り変わりとともに、どのように公共の役割が変化してきているのかということをしっかりとつかみ、今何が求められているかを見極めることが大切である。

(豊岡慈子)