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行財政部会・学習会報告
1998年7月30日
同和地区のまちづくり論

(報告)内田雄造(東洋大学)

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 同和地区のまちづくりを既成市街地のまちづくりの先進的事例として取り上げ、その特徴、まちづくりの進展を保障した条件、問題点を整理し、これからのまちづくりの展望が報告された。

 まちづくりの先進事例として、北九州市北方地区のまちづくりが挙げられる。北方地区は人口4091人、住宅戸数1926戸(うち不良住宅1116戸)の大規模な同和地区であり、不良住宅が密集し、道路網が不備である点が最大の問題であった。事業は1984年から1995年にかけて事業費286億円を投入して行われたが、この地区におけるまちづくりの特徴としては次の5点が挙げられる。


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 第1に、大規模な改善型のまちづくりであるということ。第2に、まちづくり推進協議会を設置し、住民と行政、地区住民と周辺住民のパートナーシップが重視されたこと。第3に、ワークショップが多用され、住み手参加の住まいづくりが実践されたこと。第4に、福祉のまちづくりが重視されたこと。第5に、集まって住む楽しさを追求したこと。

 このようなまちづくりを保障した条件として、第1に、まちづくりが住民運動として取り組まれたこと。第2に、行政当局が、住民参加のまちづくり推進委員会等を設け、きめ細かく住民の参加を保障したこと。第3に、部落産業の振興、同和教育の推進、社会福祉の推進といった地区総合計画の一環としてまちづくりが取り組まれたこと。第4に、小集落地区改良事業等のフレキシブルで小回りのきく事業手法が適用されたこと。第5に、住民と事業主体である地方公共団体に対し、それぞれの負担を軽減する措置がとられたこと、の5点があった。


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 このように、まちづくりを推進させるためには上記の諸条件の保障が不可欠であり、その中でも特に住民がまちづくりに主体的に参加し、住民と行政のパートナーシップがつくられることが重要である。

 同和地区のまちづくりに残された課題としては、‡@若年層の地区外転出と地区人口の高齢化、‡A同和地区のまちづくりが周辺地区のまちづくりと切り離されて実施されてきたこと、‡B公営賃貸住宅中心主義をどう評価するのか、‡Cまちを住みこなしているか、‡D住文化を確立したかの5点が挙げられる。‡Bの公営賃貸住宅居住に関しては、結果的に住民がサービスの受け手に位置づけられ、行政への依存度が高まり、自ら居住空間を創造、管理していく能力が弱まっているという問題がある。

 これらの課題に応えるために、行政が住民の主体的な努力や自立をエンパワーすること、多様な住宅供給(持家建設を含む)の保障、公営住宅制度の改革、周辺地区と一体のまちづくりの推進等が求められている。

(豊岡慈子)