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1998年8月、現在の同和行政の現状を確認するためにアンケートを行った。実施対象は、同和対策(地域改善対策)事業実施都府県と、すべての政令市、及び一部の中核市等、あわせて39都府県21市であり、そのうち38都府県19市から回答が寄せられた。以下、質問項目ごとに回答結果をみていく。
(1)人権条例・人権宣言の有無
人権条例には2つのタイプがあり、差別を規制し、その発生を防止する条例が5府県で、人権擁護、人権尊重の条例が5府県2市で制定されていた。また、宣言は12府県5市で採択されていた。条例・宣言は、それぞれの行政目標を明確にした、まちづくりの展望のためのものという性格に変わってきている。
(2)同和行政等に関する審議会・検討 会議等の有無
同和行政に関しては18府県8市で審議会が、庁内検討会は22府県9市で設置されていた。審議会では、96年から98年にかけて7府県7市で答申や意見具申が出されており、法期限にあたって論議が活発に行われたと考えられる。
一方、人権行政に関しては大幅に立ち遅れており、審議会は8府県4市、庁内検討会は15府県10市に設置はとどまった。審議会からの提言が出されたのは、横浜市のみであった。同和行政と人権行政の審議会が両方ともあるのは、三重、大阪、鳥取、高知の4府県であった。同和行政と人権行政をどのように位置づけるのか、まだ手探りの状態である。
(3)同和行政等に係る基本方針・総合 計画等の有無
同和行政に関する基本方針や基本計画があるのは、21都府県11市であったが、基本計画の中で目標年次を定めているのは8県のみであった。
一方、人権行政・啓発に関する基本方針・基本計画・総合計画の策定に関しては、5府県3市で策定及び策定中であった。人権行政については現在取り組みが始まった段階であるが、今後の課題としては、人権啓発の枠にとどまることなく、幅広い個別課題に対応した行政施策の検討が求められる。
(4)同和行政、同和教育、人権(啓発)推進部局の実態
96年から98年にかけて、名称変更、新設を含めた、人権行政や同和行政・同和教育関連部局の機構改革が約7割に及んだ。所属部局が、福祉関係の部局から県民生活関連部局や総合調整部局に変更されたところが多くみられた。
(5)「人権教育のための国連10年」推 進本部、行動計画、懇話会の有無
推進本部は、19府県5市で設置されており、府県レベルでは対象府県の半数以上で設置されているが、市レベルでの取り組みは遅れ気味であった。また、行動計画の策定は、7府県2市にとどまった。
全体を通して言えることは、この数年間は同和行政にとって激動期であったということである。人権行政は、個別の計画行政を重要な構成部分とし、個別行政の上位概念として発展していく総合行政にならなければならない。同和行政が重視してきた、差別の現実を明らかにするということや、当事者参加を保障してきたこと等をふまえ、自治体ごとの個性的な人権行政の展開が望まれる。