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2004.07.28
部会・研究会活動 <行財政部会>
 
行財政部会・学習会報告
2004年6月10日
『各都道府県・政令指定都市の人権・同和行政の現状』について

中川幾郎(帝塚山大学)

はじめに

『人権年鑑2003』の「各都道府県・政令指定都市の人権・同和行政の現状」に係って、2002年度に実施した「同和行政・人権行政推進に関するアンケート」(47都道府県と12政令指定都市)の調査結果の紹介と課題について報告していく。

アンケート調査結果の概要

人権条例・人権宣言

2000年の「人権教育・啓発推進法」施行以後、取り組みは進んできている。アンケート対象自治体では、15県3市で19の人権条例が制定されており、前年度(2001年度)回答と比較して2県1市の増加である。

同和・人権行政審議会等の設置状況

男女共同参画推進、障害者、子ども等の分野別人権行政の進展が著しく、また、「同和行政」が「人権行政」へ緩やかに移行しつつあるというパターンがうかがえる。

同和・人権行政基本方針・基本計画等

ここでも「同和行政」から「人権行政」へのシフトが進んできていることが観察できる一方、「同和行政」、「人権行政」の双方を合計した、基本方針・基本計画策定自治体の伸びが前年度(2001年度)回答と比較して停滞感がみられる。

推進部局体制

体制については、<1>同和行政推進部局、<2>同和教育推進部局、<3>人権行政推進部局、<4>人権教育推進部局、<5>人権啓発推進部局、の5項目についての設問を行った。

ここでもやはり、「同和」から「人権・同和」へ、「人権・同和」から「人権」へのシフトが続いていることがみられる。さらに、人権教育推進部局については、「人権教育」の位置づけと「同和教育」の再位置づけが課題になってくると思われる。また、人権啓発推進部局については、人権啓発の専門性、重要性が少しずつではあるものの認識されてきているとも考えられる。

「人権教育国連10年」と「人権教育・啓発推進法」

2004年が最終年となる「国連10年」については、組織名称に「国連10年」を冠していないために「無」と回答したところがいくつかあったと考えられる。その点では、むしろ今後「国連10年」を契機として、恒久的な組織としての位置づけが望まれる。

同和問題解決のための一般施策

「法」期限切れ後も、なお同和問題が存在しているという意味では、この問題解決にむけた自治体としての主体的な政策の確立と、具体的な施策をどのように位置づけていくのかが問われているが、この設問に対しては10県4市から具体的な回答があった。大阪府、大阪市など5都府県1市では新しい政策方針と政策体系を明確にして、これを受けた具体的な事業が紹介・整理されていた。そして、その他の多くは奨学金等学校教育補助、社会教育事業、市民啓発事業に比重がおかれていた。

同和・人権行政のチェックシステム

各種人権行政を実効たらしめる人材配置、制度(準則、ルール)、その他のチェックシステムについての設問では、そのうちのいずれかが「有」と回答のあったところは、10県2市であった。そのうち、もっとも多数該当したの項目は人材配置であり、多くは各部局ごとに人権担当職員を兼務配置するという方式がとられていた。

今後の課題として

今後の課題は以下の通りである。

<1>全体の流れとしてある、「同和」から「人権」へのシフトの中身をどうチェックしていくのか、とくに「人権」のみの用語を使用している場合、「同和」の位置づけをチェックしていく、<2>たとえば2000年以降、大阪、鳥取、香川、千葉などで実施されたような自治体独自の同和問題についての実態調査の点検、<3>一般施策を活用した同和行政についての具体的な内容の把握、<4>「国の法律がなくなったから」という認識の克服、<5>行政主導ではなく、市民参加・参画・協働のシステム(人権のまちづくり)の導入、<6>総合入札制度における人権の視点の有無等の評価システムのチェック、等である。

(松下龍仁)