これまでの調査から考える課題を挙げてみると、三重県のような「特別対策の終了が、同和問題への取り組みの終了でない」ことを表明している行政に光を当てる必要がある。
また、「一般対策」という言葉が、これまで「収入が、一般財源であるから一般対策」「対象者・対象地域が、一般だから一般対策」の二つの概念があった。しかし、今後は対象が一般であることを「一般対策」の概念とすべきである。そして、その結果、同和地区に対しても適用できるものであるということを確認する必要がある。また、「生活実態が合致すれば適用できる」というものがある。奈良県での靴や皮革に関わる助成対策等がそれにあたる。そして、三つめに、一般財源を使いながら新たに創設する事業が考えられる。
次に、事業内容が、啓発事業と給付事業に偏っている。行政が責任を負うべき事業と民間活力を支援する事業に分けると、職員研修、市民啓発、地方改善事業補助などが挙げられる。地方改善事業補助は、鳥取県のように新たな事業の創設も見られる。民間活力の支援については、奨学金が最も多い。また、民間で行う人権活動の補助などが挙げられるが全体としては薄い事業と言える。これには、NPOへの補助も含まれる。そして、西高東低という傾向が現れている。
今後の方向性として、財務評価だけでなく社会性も取り入れ、入札の際の判断基準とする「総合入札制度」における人権の視点の置き方を調査し、行政に対して意識化していくべきである。また、企業の社会的責任が最近、問われているが、行政においても同じ課題を「総合入札制度」も含めて問い直す必要がある。
質疑応答では、「一般施策」の概念整理に関わり、「特別施策」にも廃止、期限をつけて継続、期限をつけずに継続、新しく創設したものがある。そして、「一般施策」では、既存のものを活用、既存のものを工夫して活用、創設したものがある。また、国の補助があるもの、都道府県が補助しているもの、市町村の単独があり、これらが分類の基準となるのではないかという意見があった。
(坂東 知博)
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