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2006.01.04
部会・研究会活動 <行財政部会>
 
行財政部会・学習会報告
2005年09月20日
堺市における人権・同和行政の現状と課題

堺市市民人権局

〈同和行政〉

同和行政の取り組みと経過について(法期限後)

2002年3月、それまでの同和対策事業実施の根拠となっていた特別措置法の失効によって同和対策は特別措置から一般施策への移行という大きな転換期を迎えた。堺市では、先述の1997年の答申以降の社会情勢の変化や2000年の「同和問題の解決に向けた実態等調査」結果を勘案して「堺市同和対策協議会」が2002年に意見具申を出しており、答申をうけて2004年に「堺市同和行政基本方針」ならびに「堺市同和行政推進プラン」を改訂した。

堺市同和対策協議会の意見具申(2002年)

「基本認識」として、同和問題が深刻かつ重要な課題として位置づけ、今後は同和問題を人権問題という本質からとらえ市民一人ひとりが主体的に共通の課題として取り組む必要性を述べている。

「解決のための基本目標」としては、(1)差別意識の解消、(2)地域住民の自立と自己実現のための諸施策、(3)地区内外の交流の促進、をあげている。

「2000年実態調査」結果の分析としては、(1)核家族世帯の割合が高く、さらに高齢者、母子・父子世帯の割合も高い、(2)若い世代ほど地区内外の通婚率が高くなっているものの結婚にかかわっての差別がみられる、(3)高校進学率の較差は改善されてきてはいるものの高い中途退学率、(4)パソコン普及率の低さ、(5)雇用・就労状況の悪化等の9点をあげている。

同和問題解決に活用できる一般施策

「総合生活相談・人権相談事業」:人権ふれあいセンター担当。「堺市地域就労支援事業」:労働課担当、堺市就労支援協会へ事業委託。「地域子育て支援センター事業」:子ども育成推進室担当。「仕事と家庭両立支援特別援助事業(ファミリーサポートセンター)」:子ども育成推進室担当、社会福祉協議会へ委託。「地域子育て講座(デライトセミナー)」:児童育成課担当。「奨学金等進路支援連絡会議」:学務課担当。「人権相談ネットワーク事業」:指導課担当、人権ふれあいセンターおよび各支所の計8ヶ所で実施している人権相談等のネットワーク化をめざす。他を含めて、計16事業を実施。

今後の同和施策の推進について

上記事業について管理している同和行政課で現在、法期限後の同和施策推進の方向をより明確にするため、過去3年間の事業について整理している。このことによって今後の堺市の同和行政のあり方が具体的かつ全庁的にみえてくるのではないか、同和施策の把握と同和問題の認識を再確認ができるのではないかと考えている。また、円滑に同和行政を推進していくために「堺市同和行政協議会」や「堺市同和行政推進委員」の制度を今後も活用していく考えである。

もうひとつ大きな課題として地域の「まちづくり協議会」があり、現在その準備会が発足したところである。ここでは地区の人口減少や住宅建て替え等、高齢化などの課題について、地元と行政の新しい関係や役割をどう創造していくのかという課題がある。とくに公営住宅の家賃、入居システムは今後のまちづくりの上で大きな課題になっている。

〈人権行政〉

はじめに

堺市では、憲法の基本的人権尊重の精神のもと、人権施策を市の最重点施策のひとつに位置づけ、人権に関する世界の潮流等を把握しながら取り組みを進めてきた。とくに今日、その指針となるものが2001年の「人権教育のための国連10年堺市後期行動計画」による成果を継承・発展するための「堺市人権施策推進計画」(2005年)である。


推進計画の位置づけと期間

計画は、堺市総合計画「堺21世紀・未来デザイン」の目標の一つである「人が輝く市民主体のまちづくり」の実現に向けて堺市が人権施策を推進していくための計画であると同時に、「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第5条における堺市の人権教育及び人権啓発に関する基本計画になる。また、この計画の期間は2005年度から2014年度までの10年としており、期間中必要に応じて見直しを行うものとしている。

人権施策の推進

施策の推進については、人権の視点でのまちづくりのために基本方針に沿って、(1)人権の課題別に取り組む施策、(2)人権意識の向上を図る施策、(3)人権擁護を図る施策に分類し、実態を把握しながら総合的な施策の推進をめざしている。そのまちづくりの担い手は、地域住民であり、自らのまちづくりを進めていくための協働関係を築きながら人権尊重社会をめざしていくことはもちろん、市民一人ひとりのエンパワメントの支援を念頭においている。

人権の課題別に取り組む施策

課題別については、(1)同和問題、(2)女性の人権、(3)子どもの人権、(4)障害者の人権、(5)高齢者の人権、(6)在日外国人の人権、(7)高度情報化社会に伴う人権、(8)さまざまな人権(野宿生活者、犯罪被害者、特定の疾患に対する人権課題、性的マイノリティ、刑を終えて出所した人、アイヌ民族、沖縄の人々、環境問題等)の施策展開に努めていくことになる。

人権意識の向上を図る施策

人権施策の実施にあたり、人権教育は欠くことのできないものであり、人権侵害をなくし、自由、公平、平和な社会の構築に貢献している。

人権教育の推進については、「人権教育のための国連10年」をふまえ、その基本的枠組みを継承している。

人権擁護を図る施策

人権侵害に対する救済も人権教育とともに重要であり、制度の整備が必要である。その具体的役割のひとつに人権相談がある。そして人権相談窓口では、(1)人権に対する情報の提供、(2)カウンセリング機能、(3)ケースワーク機能、をもち、いつでも、どこでも、誰でも気軽に相談でき、相談者のエンパワメントに留意した設置・運営をめざしている。あわせて、人権相談ネットワークにも努めている。

計画の推進

推進体制としては、「堺市人権施策推進本部」の充実・強化をめざすとともに、人権施策推進審議会の設置を検討しているところである。さらに、1985年から概ね5年に一度実施している人権意識調査結果の人権施策への反映や仮称であるが「人権尊重のまちづくり条例」制定への取り組み、計画の実効性を高めるための評価システムの導入に向けての研究・検討も行われている。

こうした取り組みから堺市として、すべての人の人権が尊重される平和な社会の実現をめざしていきたい。

(文責:松下 龍仁)