1.地方自治体の歳入確保策の意義とその方策等
自治体の直接歳入確保策の最近のおもな施策について紹介すると、まず税収確保策では、1.自治体による「独自課税」があり、現行税率に上乗せした超過課税方式や法定外税の創設などがある。この独自課税については、税の目的、使途、財源の規模、受益と負担の透明性、負担の公平性、政策効果などについて系統的で厳密な検討がされなければならない、2.「滞納整理」は徴収率の低下に歯止めをかけ、税の公平性確保のために不可欠であるが、一般的には95%の徴収達成率が基準とされている、3.民間セクタ-の債権回収機構などを活用した税等の電話などによる「督促手法の導入」は、大阪府堺市などが参照事例となる、4.コンビニ収納など納税者の便宜を配慮した「収納改革」は、最近ではインタ-ネットを活用した納付システムの構築などもみられる。
税収確保策以外の施策では、1.債権整理の工夫、2.すでに多くの自治体で活用されている広告料の確保、3.特許権確保など無体財産権の活用、4.大阪ド-ムなどに事例としてみられる命名権、5.資産の売却、貸付、活用、6.寄付金による基金造成、7.使用料・手数料の確保、などがある。
このような取り組みを含め、これからの歳入確保策を考える場合の条件として、1.「三位一体改革」の影響、2.個人所得などの税収の中期的低落傾向、3.格差社会(競争社会)への「構造改革」、4.規制改革(緩和)、5.競争促進政策の推進、6.労働分配率低下、などがある。
社会の不安定化が心配される中、「新しいセーフティネットの構築」が求められており、そういう意味からも、税の公平性の確保しながら安定的な収入の確保がより厳しく求められている。加えて、国レベルでは所得税の累進税率見直しについても俎上に載せていかなければならない。
2.2008年度の地方財政対策と地方税制改正(案)について
今回の地方財政対策の中心は、ひとつは地方と大都市部の税収格差是正のために、法人事業税の約半分にあたる2兆6千億円(消費税1%分)の国税の地方法人特別税への移管であり、もうひとつは地方交付税の特別枠、つまり4千億円の「地方再生対策費」の新設である。しかしながら、この「地方再生対策費」の原資は、国税である地方法人特別税のうち4千億円を交付税化しただけであり、実質的には国から地方への財源移譲を意味していない。しかも2008年度は地方法人特別税が2008年10月期から収入されるために原資がなくなく、ここでも地方財源の振替が行われるということになる。
なお、今回の対策では「地方再生対策費」を除けば2千億円の減になり、これは主に自治体の歳出削減の努力による基準財政需要収縮によるものである。この結果は、地域社会における基礎的セーフティネットや地域活力の破壊につながっていき、結局4千億円の「地方再生対策費」では地方は再生できず、地方6団体が主張している国の財源を移譲したかたちによる交付税5兆円の復元が求められる。なおその際には、福祉、医療、教育、環境の4分野を中心にした、地域の活性化につながるものとすべきである。
3.地方公共団体財政健全化法について
2007年6月15日、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法)」が成立、新しい財政再建制度が整備されることになった。
財政健全化法では、これまで「実質赤字比率」のみだった健全化判断比率を、1.実質赤字比率、2.連結実質赤字比率、3.実質公債費比率、4.将来負担比率、の4つの指標に拡大し、これら指標を監査委員の審査に付したうえで議会に公表する義務を負うことになる。さらに財政健全化法では、これら4つの指標について「早期健全化基準」と「財政再生基準」の2段階の基準を設けて財政悪化をチェックし、この4つの指標のうちひとつでも「早期健全化基準」にひっかかると「財政健全化計画」という早期是正措置を定めなければならない。また、1.、2.、3.の指標のいずれかに「再生判断基準」がひっかかると「財政再生計画」を定めなければならない。なお、公営企業については、「早期健全化基準」に相当する「資金不足比率」という指標だけで判断される。
財政健全化法のもとでの課題としては、連結対象の各会計、第三セクタ-との財政関係を市民に公表できるよう、問題点をも含めた整理がまず挙げられる。また、「将来負担比率の算定」について、各自治体自身の判断に基づく自律的な判断基準づくりも必要で、その際、市民合意による市民の側からの基準づくりが重要で、岐阜県多治見市の取り組みが参考事例のひとつになる。
(文責:松下龍仁)
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