はじめに
-アンケートの送付・回答について
今回報告のアンケート調査結果は、部落解放・人権研究所が実施した「2006年度同和行政・人権行政に関するアンケート」の報告であり、対象とした47都道府県と17政令都市の計64自治体のうち47都道府県と新潟市、浜松市、堺市を新たに加えた16政令都市から回答を得ている。
アンケートは大別して、<1>人権条例・人権宣言の有無、<2>同和行政・人権(人権全般、女性、子ども、障害者、外国人、高齢者等)行政に関する基本方針・計画等の有無、<3>同和行政・人権行政に関する審議会・庁内検討会議等の設置状況、<4>同和・人権(行政、教育)に関する推進部局の現状、<5>「人権教育のための世界プログラム」推進本部と行動計画の有無、<6>「人権教育・啓発推進法」にもとづく基本計画と年次報告の有無、<7>これからの人権行政、の7項目ならなっており、具体的な調査結果については、『人権年鑑2008』を参照されたい。
アンケート調査結果から
今回の調査からは、人権行政の着実な広がりが一定程度確認できたように思われ、相談窓口の増加なども見られたが、いくつかの重要な視点を含めた課題等について以下にまとめておく。
- 同和問題をはじめ人権問題は、現実には局地的・個別的に具現化するので、一般社会啓発のような社会全体への施策対応とあわせて、個別・具体的かつ専門的な施策対応との双方の取り組みが必要である。
- 分権時代における自治体人権行政は住民構成に対応した個性的なものになり「地域性」が重視されるとともに、教育や福祉、保健、医療、労働、環境、都市計画、土木、建設等、横断的な「総合性」の確保が必要である。
- あわせて、人権行政すべての分野において、実態把握、理念および施策構想(基本構想等)、事務事業遂行(実施計画)という明確なヒエラルキーが実在し、機能されなければならず、本アンケート調査の意義もここにある。
- 人権施策について定期的・継続的な見直しや転換の議論の際には、実態調査抜きには語れないし、当事者の参画が費用不可欠である。つまり当事者市民の「参画」と市民と行政の「協働」が人権行政各領域で実践されなければならない。
おわりに
また、今回の調査をとおして、あらためて同和問題を明確な人権課題として取り組む姿勢を示している自治体と、消極的な姿勢にとどまっている自治体との分化の印象が見受けられた。今後とも注意を払うべき状況にあるといえる。
とりわけ、2006年に入って同和事業をめぐる各種の事件をつうじて、従来型の同和事業へのマスコミ等の批判が厳しさを増し、一方的な批判が再び部落差別を助長する危険性も危惧されている。このような状況に向き合っていくためにも、同和行政の施策を進める各ステージとしての理念構築、政策立案、施策設計、事業評価・修正の過程において、当事者の「参画」と「協働」はどのようであったか、また、今後のあり方はどうあるべきかについての論議が重要になっているのではないだろうか。
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