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女性部会・学習会報告
2000年3月17日
北京会議フォローアップと反人種差別世界会議にむけて

(報告)藤岡美恵子(反差別国際運動事務局次長)

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 今年は、第4回世界女性会議が開催されて5年目を迎える。そして、6月には国連特別総会として女性2000年会議(「北京+5」)がニューヨークで開催される予定である。この会議の目的は、95年の第4回世界女性会議で採択された北京行動綱領の実施状況を検討することである。

 当初、ニューヨークでは政府間会議のみの予定であったが、急遽NGOシンポジアが開催されることになり政府間会議と平行してフォーラムが予定されている。

 さて、北京行動綱領は、12の重点分野を定め政府ならびにNGOがとるべき行動を示したもので95年の政府間会議で採択されており、日本政府も賛成の票を投じた。この北京綱領の意義を振り返ったとき、金井淑子の整理によると次の4点に整理できる。‡@「女性の権利は人権」というNGOのキャンペーンが成功し女性の権利を人権の主流に据えることができた。その結果、ドメスティックバイオレンス、旧ユーゴスラビアの集団レイプ事件など女性への暴力が大きな課題として取り上げられるようになった。‡A「持続可能な発展」が必要という認識。貧困が女性の発展を妨げるが、グローバル化の中で貧困は途上国だけではなく先進国女性の課題にもなりつつある。‡B女性のエンパワメントと参画という認識。‡C「ジェンダーの正義」という認識。つまり、貧困や暴力という抑圧をうむ構造の中で日々の女性差別が発生する。したがって、日々感じる差別とグローバルな構造は直接つながっているという考え方。

 以上のように、北京行動綱領はグローバルな課題をグローバルな視野で提起したことに大きな意義がある。

 次に、マイノリティ女性の課題をこの綱領がどのように捉えているか。特にマイノリティ女性の項は起こしていないが、12の重点分野の随所に先住民女性などより困難を抱えた女性への施策が言及されている。国連の中でも女性差別と人種差別などの複合差別への認識は徐々に高まってきている。

 そこで、反差別国際運動としては、6月のNGOフォーラムの中でこのテーマで分科会を設け議論したいと考えている。そして、その成果をもとに、2001年「反人種差別・差別撤廃世界会議」で複合差別を取り上げるよう積極的に働きかけていく。この会議は97年の国連総会で提案されたもので、人種主義・人種差別をなくしていくための、予防や教育、保護のための方法や効果的な救済などの実際的な行動重視の方策が話し合われる予定である。

 そのための準備として、現在、反差別国際運動日本委員会が「マイノリティに属する女性に対する複合差別ネットワーク」を立ち上げて、マイノリティ女性に対する複合差別問題の現状把握と問題解決にむけた調査・研究・ネットワークづくりを開始している。

 複合差別については、アメリカ合衆国において移民女性、黒人女性などのテーマでかなりの研究蓄積がある。そのような蓄積にも学びつつ、研究と実践を積み重ねていきたい。

 歴史的にマイノリティ女性が声を挙げたとき、そのマイノリティ集団から運動のマイナスになるとして抵抗を招いてきた。それは、アメリカのO.Jシンプソン事件などで記憶に新しい。しかし、マイノリティ女性の声は、運動のマイナスではなく、むしろマイノリティの運動じたいを豊かにしていくと考えられる。(西村寿子)