調査研究

各種部会・研究会の活動内容や部落問題・人権問題に関する最新の調査データ、研究論文などを紹介します。

Home調査・研究部会・研究会活動女性部会 > 学習会報告
部会・研究会活動 <女性部会>
 
女性部会・学習会報告
1997年1月13日
訴訟事件からみた女性労働問題の動き

大野町子(部会長、弁護士)


----------------------------------------------------------------------------

●まず、最近の雇用形態は可能な限り常用労働者を減らしパート、嘱託、契約、派遣等安価で雇用調整を可能にする雇用形態が積極的に採用されている。現行の労働法制が働き方の多様化に対応していないことから処遇が分断個別化され、賃金等の労働条件の格差が拡大すること等、今日均等待遇の保障は非常に困難になっている。女性労働者については、サービス経済化の進行によって戦力化は拍車がかかっているのに待遇改善がそれに追いついていない。

●訴訟事件から女性労働問題を見ると1960年代以降、結婚・出産退職制や女子若年・差別定年制を中心に訴訟が相次ぎ、労働基準法の空白部分がそれによって是正されてきた。最近では、配転、昇進・昇格差別、コース別雇用管理等の導入による男女の賃金差別の是正を求める訴訟が各地で取り組まれ、賃金問題が今日の大きな焦点となっている。

●昨年11月27日、東京地裁で判決が出された芝信用金庫事件は今後の影響力が極めて大きいと考えられる。この事件は、1987年女性職員13人が昇格・昇進差別の是正を求めて提訴。芝信用金庫には、人事制度として職能制度があり、この資格の昇格と連動して職位が決められる。男性は、年功に応じて例外なく係長から昇格するが、女性は33歳で自動昇格である主事(係長職)とはなるが、あとは無役のままである。

●請求の趣旨は、1.原告らがいずれも課長職の資格および課長の職位にあることの確認、2.差額賃金の支払いである。

判決はうち10名について課長職の地位にあることを確認し、差額賃金の支払いを命じた。判旨は、

  1. 昇格差別については明らかに差別があり副参事または課長職以上の男女の構成比は、男99.6%、女0.4%である。
  2. 昇格の実態は、昇格試験制度はあっても、男性に対しては特別な政治的配慮、抜擢人事をしている。即ち年功的要素が強い。
  3. 金庫の人事政策つまり昇格実績は長期間継続してなされてきたことで一般化し、共通性を有するから金庫の労使慣行として確立している。
  4. しかし女性にはこの適用を排除してきた。この措置は就業規則3条に違反し、現行法秩序からも是認出来ない。
  5. 昇進についてー職位就任は一定の資格を要することになっているが、当然に保証されるものではなく、配置(上位職位)については、金庫側の専権に属する人事政策事項である。