今会議の目的と特徴
会議の目的は、北京会議(第4回世界女性会議)から10年が経って、「北京行動綱領」と2000年の第23回特別総会の成果文書を各国政府がどこまで実施できたか、残る障害と課題は何かを明らかにすること。とりわけ、女性と少女のエンパワメントのためにどんな課題にとりくめばよいかを明らかにすることであった。
毎年開催されている国連女性の地位委員会よりレベルをあげ、閣僚級が80カ国から参加し、1800名の政府代表と6000名のNGOを集めて国連本部で開催された。日本は、西銘内閣府大臣政務次官が政府代表演説を行った。
アメリカは、「『北京行動綱領』と第23回特別総会成果文書は、新たな国際的人権を作り出すものではなく、中絶への権利を含むものではない」という修正案を出し、「北京行動綱領」の再確認に反対していたため、アメリカの修正案を巡って最後まで紛糾した。ブッシュ政権は、中絶に反対であり、これをアメリカのキリスト教も支持している。
採択された政治宣言と10本の決議
リプロダクティブ・ヘルライツ(「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、女性が生涯にわたって身体的、精神的、社会的に良好な状態であることを指している。このリプロダクティブ・ヘルスを享受する権利をリプロダクティブ・ライツという)は、北京行動綱領ですでに世界的に確認されたものであるにもかかわらず北京から10年も経って、未だにアメリカは、認めようとはしない。
しかし、ぎりぎりになってアメリカが修正案を撤回し予定通り「女性の地位委員会宣言(政治宣言)が採択された。
会議最終日10本の決議が採択された。
- 決議1:女性、女児、HIVエイズ
- 決議2:女性と女児の人身取引に対する需要の撤廃
- 決議3:女性を差別する法律に関する特別報告者設置提案の価値
- 決議4:国内政策及び計画へのジェンダーの視点の主流化
- 決議5:インド洋津波災害の余波を災害後の救援、回復、リハビリ、再建努力へのジェンダーの視点の統合
- 決議6:パレスチナ女性の状況と支援
- 決議7:国際婦人調査訓練研究所の強化
- 決議8:女性の経済的地位の向上
- 決議9:「北京宣言と行動綱領」の10年後の見直し以降の先住民女性
- 決議10:アフガニスタンの女性と女児の状況
決議(4)には、「ジェンダーに基づく統計・指標と調査、ジェンダー分析及びその他の手段、訓練、手法が効果的なジェンダー主流化には極めて重要である」という記述があり、連合でも運動方針にこの視点を入れてジェンダー統計の必要性について謳っている。
決議(8)に関しては、ディセントワーク(まともな社会的保護のある労働につく権利)を追及していくことが必要である。
今後の課題
連合としては、(1)パート労働法の改正、(2)男女の賃金格差をなくすこと。均等法の改正、間接差別の撤廃、妊娠出産の不利益取扱いをなくすことに取り組んでいく。
また、現在労働現場では、正社員が減り、多様な雇用形態の人が増える傾向にある。均等法は、正社員だけのものではなく派遣社員をはじめとした多様な雇用形態の人にも適用すべきである。雇用形態間において格差があってはならない。均等待遇で相互転換性のある雇用形態が必要であり、連合は、その実現をめざしている。
また、政府は、女性差別撤廃委員会での政府報告審議結果に関して今後どのようにしていくのかの会議で、マイノリティ女性の実態把握については、まったく政府案のなかには出されていなかった。今後政府への強力な取り組みと働きかけが必要であると思われる。
結論
いずれにしても北京行動綱領と今回採択された10大決議を活用し、日本の女性の実態に照らし合わせて、女性差別撤廃を実現していくことが重要である。
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