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調査研究

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高校部会・学習会報告
2002年7月13日
高校における総合学習の取り組みについて

大阪府立金剛高等学校

7月13日、本年度第1回の高校部会オープン学習会が開催された。テーマは、「高校における総合学習の取り組みについて」。本格実施まであと1年に迫った「総合的な学習の時間」。この間、先行実施を積み重ねてきた大阪府立金剛高校より実践報告を受け、大阪教育大学の長尾彰夫先生から助言をいただく形で進められた。以下、概要を記す。

大阪府立金剛高等学校における「総合的な学習の時間」の取り組みについて

 本校は今年で創立23年になる。1979年に地元高を富田林にという要請の中で作られた学校。人権教育を学校運営の柱のとしている。

 2000年度より「総合的な学習の時間」(以下、『総合』)の先行実施を行ってきた。1999年に、本校のカリキュラム小委員会のメンバーが「総合」の先行実施を来年度からやろうと提案した。2003年度から新カリ(新しいカリキュラム)も始まる、同時に「総合」についても考えなければならないのはかなり大変だろう、それなら先行実施ができる「総合」については2000年度から始めようということになった。「最初の年については担当者も全部自分たちのほうでやる」というカリキュラム小委員会のメンバーの声があり、職員会議でもその方向で決まっていった。だから、「総合」については基本的には有志で、すなわち「総合を担当してもいい」と思っている先生に集まってもらって、案を考え実践がスタートした。

 本校は、その形(有志の先生方が中心になって『総合』を担当する)が基本的には現在まで続いている。「チーム総合」という名前をつけ、「この指とまれ」方式でここまでやってきた。指にとまる気持ちのある先生が集まってくるので、一人ひとりの負担は大きいけれども、それなりに前向きなプログラムを作っていくことができた点ではよかったと思っている。

 「総合」の講座名は、1年次は「発見」、2年次が「発信」。1年次の「発見」では、体験を通して生徒たちに様々な気づきをしてもらう、そこから次につながる何かを養っていけたらということで、2年次の「発信」は自分が見つけてそれだけで終わるのではなく、それを外に発信していくことができればということで名付けた。

 2000年度(21期)の取り組みのメインは、バリアフリー体験。1年生をグループに分けて地域にある施設・障害者作業所等に交流体験に行かせる。富田林にはこういう施設がたくさんあり、トータルで30箇所近くの施設に依頼して受け入れていただいた。多くの生徒が最初は抵抗感を示す。実際に出かけていくのが2学期の期末考査明けのいわゆる試験休み中ということもあって「試験休みになんで出かけて行かなければならないのか」と言う生徒もいた。

 ところが、体験を終えて戻ってきた感想を聞いてみると「出かけていって良かった」「向こうの方と交流してすごくいい経験ができた」とか、特養の老人ホームから帰る間際になって入居されている方が生徒の手を握って「帰らんといて」といって涙ぐむ姿があったり…。生徒たちは、このように人から求められることが経験としてあまりないので、自分が他者から必要とされていると体験を通じて感じたことは大きい。

 2年次、何をしていこうかと考えたが、進路について生徒の意識を高める必要があるという先生方の意見が多くあった。そこで、1学期は「進路」、それも「大学に行く」というような目先のものではなく「将来自分はどんな職業に就いていきたいのか」というところを考えさせようとなり、「仕事」を中心に据えたプログラムを作っていった。 

 7月に大阪ドームで行われたリクルート主催の「わくわくライブ」に生徒を行かせた。いろんな職業に就いている方々がいらっしゃって、インタビューをしてレポートを作るというのが1学期のプログラムだった。

 2学期は、最後のプログラムということもあって、課題別の学習をやってみようと8つのテーマを担当者の方で決めた。(国際理解・経済・福祉・情報・地域・保育・クラフト・イベント)「留学生とパーティーを開こう(国際理解)」とか「フリー・マーケットに参加してみよう(経済)」という具合にテーマを決めて、それを生徒に下ろして選択させてという形になった。

 1年、2年と「総合」を受けてきた現3年生(21期生)には、自分が何をしたいのかをはっきりと口に出している生徒が多いのではないかと感じる。1年次のバリアフリー体験の中で福祉に興味を持った生徒がいたり、2年次の仕事の取組を通じて保育士の仕事に理解を深めたような生徒が多いのではないかと感じている。

 今年(2002年度)の1年次と2年次のプログラムが本校の「総合」のプログラムの基本になっていくと考えている。去年の1年次では生徒の興味・関心に応じて体験をさせたが、生徒に任せると、例えば「障害のある人の作業所に行きたい」とはなかなかでてこない。興味・関心に応じて生徒に任せることも大事だが、この点は知っておいた方がいいということを教員の方で用意することも大事だと考える。その意味で、今年の1年次では、2学期の前半は「バリアフリー体験」と「多文化体験」の二本立てで生徒に選択させて実施し、2学期の後半は自分たちの興味・関心に応じて課題を設定して訪問先を決めて体験を実施することになっている。

 「総合」に対して、「まず、基礎学力の充実が必要だ」等の意見もあるようだが、生徒自らが様々な体験をすることを通じて自分の進路をはじめとする様々な意識を高め、その高まった意識の中から勉強に励もうという意識が出て来るのではないかと考えている。