大阪においては一九九五年度に大阪の部落史委員会が発足し、部落史編纂に向けた本格的な史料の発掘・収集の事業が始まりました(委員長 上田正昭京都大学名誉教授)。本事業は大阪府・大阪市のご理解とご協力、関係各位のご支援のもとに進められ、部落解放・人権研究所も他の諸団体とともに同委員会の構成メンバーとして参加しています。『大阪の部落史』第一巻(史料編 考古・古代、中世、近世1)第二巻(史料編 近世2)および第四巻・第五巻・第六巻(史料編 近代1・2・3)、第七巻・第八巻(史料編 現代1・2)が刊行され、今後さらに第三巻(史料編 近世3)、第九巻(史料編 補遺)、第一〇巻(通史編)の刊行が予定されています。
『大阪の部落史』は、大阪府域を対象とし、各地域における今後の部落史研究に役立つ基礎的な史料集であると同時に、部落問題の啓発・教育に資することを目指しています。歴史史料は膨大な量に及びますし、中には貴重ですが難解なものも含まれていますので、第一〇巻として史料編に掲載されている史料を読みこんで大阪の部落史全体を詳細に叙述した一冊(通史編)を刊行する計画をたてています。
しかし、教育・啓発現場からは通史編の刊行を待たずに、これまでの調査研究で大阪の部落史に関してどのような事実が明らかになったのかをわかりやすく簡潔に紹介してほしいという声が上がってきました。本書はそうした声を受けて、史料編近代・現代に掲載した史料の意味や新しい部落史の見方について、編纂事業に参加した一三人の研究者が読みやすい内容と文章で、エピソードを盛り込み、独自の視点で執筆したものです。
本書の編集にあたっては大阪の部落史委員会の企画委員会でも承認をいただき、研究所内に『大阪の部落史』普及版プロジェクト(座長 秋定嘉和大阪人権博物館館長)を立ち上げて、全体の構成、項目や内容の協議を重ねましたが、それは同委員会の企画委員である後記の三名が担当しました。
もとより、『大阪の部落史』第四巻~第八巻で明らかになった事実は、本書で取り上げた三〇のテーマに限られたものではなく、数多くの興味深い内容が含まれています。読者の皆さんには、本書を手がかりとして『大阪の部落史』をお手もとにおいてご利用下さり、大阪の部落史の理解を深めていただくことをお願いします。
二〇〇六年二月