調査研究

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2007.06.11
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大阪の部落史通信・39号(2006.11
 

新刊案内

『大阪の部落史』普及版プロジェクト編著

『自覚と誇り 『大阪の部落史』を読む-近現代』

 大阪においては一九九五年度に大阪の部落史委員会が発足し、部落史編纂に向けた本格的な史料の発掘・収集の事業が始まりました(委員長 上田正昭京都大学名誉教授)。本事業は大阪府・大阪市のご理解とご協力、関係各位のご支援のもとに進められ、部落解放・人権研究所も他の諸団体とともに同委員会の構成メンバーとして参加しています。『大阪の部落史』第一巻(史料編 考古・古代、中世、近世1)第二巻(史料編 近世2)および第四巻・第五巻・第六巻(史料編 近代1・2・3)、第七巻・第八巻(史料編 現代1・2)が刊行され、今後さらに第三巻(史料編 近世3)、第九巻(史料編 補遺)、第一〇巻(通史編)の刊行が予定されています。

 『大阪の部落史』は、大阪府域を対象とし、各地域における今後の部落史研究に役立つ基礎的な史料集であると同時に、部落問題の啓発・教育に資することを目指しています。歴史史料は膨大な量に及びますし、中には貴重ですが難解なものも含まれていますので、第一〇巻として史料編に掲載されている史料を読みこんで大阪の部落史全体を詳細に叙述した一冊(通史編)を刊行する計画をたてています。

 しかし、教育・啓発現場からは通史編の刊行を待たずに、これまでの調査研究で大阪の部落史に関してどのような事実が明らかになったのかをわかりやすく簡潔に紹介してほしいという声が上がってきました。本書はそうした声を受けて、史料編近代・現代に掲載した史料の意味や新しい部落史の見方について、編纂事業に参加した一三人の研究者が読みやすい内容と文章で、エピソードを盛り込み、独自の視点で執筆したものです。

 本書の編集にあたっては大阪の部落史委員会の企画委員会でも承認をいただき、研究所内に『大阪の部落史』普及版プロジェクト(座長 秋定嘉和大阪人権博物館館長)を立ち上げて、全体の構成、項目や内容の協議を重ねましたが、それは同委員会の企画委員である後記の三名が担当しました。

 もとより、『大阪の部落史』第四巻~第八巻で明らかになった事実は、本書で取り上げた三〇のテーマに限られたものではなく、数多くの興味深い内容が含まれています。読者の皆さんには、本書を手がかりとして『大阪の部落史』をお手もとにおいてご利用下さり、大阪の部落史の理解を深めていただくことをお願いします。

二〇〇六年二月

部落解放・人権研究所 『大阪の部落史』普及版プロジェクト
秋 定 嘉 和
北 崎 豊 二
渡 辺 俊 雄
(本書「はじめに」より転載)

『自覚と誇り 『大阪の部落史』を読む-近現代』目次

I 近代<1> 近代社会と部落差別

「解放令」の諭告―差別撤廃の法令と差別の現実(北崎豊二)/部落の生業の変化―肉・革を中心に(秋定嘉和)/学校教育への欲求―西浜部落の場合(吉村智博)/芸能を担った人びと―近代初期の差別の変容(中島智枝子)/自由民権運動と差別―森清五郎(北崎豊二)/部落改善の先覚者―森秀次(北崎豊二)/「侠客」と社会事業―小林佐兵衛(秋定嘉和)/部落問題についての諸潮流―近代初頭の思想と文化(中島智枝子)/部落の「堂班」への思い―近代社会の序列と被差別部落(藤本信隆)/大学に図書館を寄付―宗教・教育への思い(藤本信隆)

II 近代<2> 解放と融和の道

部落と町村合併―舳松村と堺市(北崎豊二)/大阪府水平社の創立―女性たちの活躍(久保在久)/多様な大阪府水平社―革命から融和まで(久保在久)/激しく闘われた争議―部落産業と労働運動(久保在久)/「名望家」として、議員として―西浜部落と沼田嘉一郎(吉村智博)/朝鮮皮革株式会社―部落産業の背景にあった朝鮮支配(横山篤夫)/朝鮮人と部落の住民―競合・共生(横山篤夫)/部落解放をめぐる二つの路線―全国水平社と中央融和事業協会(秋定嘉和)/同和奉公会と水平社―融和へいたる道(秋定嘉和)/「国民的」課題に―同和教育、戦前の到達点(伊藤悦子)

III 現代 継承と発展と

差別意識と部落の実態―生き続ける差別(渡辺俊雄)/解放運動を担った組織―青年同盟、解放委員会(渡辺俊雄)/同和事業の展開―戦前の継承と発展(里上龍平)/同和教育の先駆性―内容、方法の創造(赤塚康雄)/変化する自己意識―「自覚と誇り」へ(渡辺俊雄)/就労の変化―高度経済成長がもたらしたもの(石元清英)/身分と階級―論争の奥にあったもの(渡辺俊雄)/全国の運動を先取り―糾弾と生活改善の取り組み(溝上 瑛)/量的発展と質的強化―解放運動の新段階(渡辺俊雄)/自らの思いを社会に―「解放の文化」の創造へ(渡辺俊雄)