調査研究

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2006.08.21
部会・研究会活動 < キャリア教育と人権研究会>
 
キャリア教育と人権研究会
2006年6月24
18歳時点での多様な進路選択のできる子どもたちを育てよう

田中宏和(茨木市立豊川中学校)

 茨木市にある豊川中学校区は、文部科学省のキャリア教育推進地域の指定を受け、校種間連携によるキャリア教育の推進に取り組んでいる。

 この10年間で、少子化の進行、保護者の意識の変化、ニュータウンの造成など、豊川中学校の状況は大きく変化した。さらに、学校や同和地区での取組みが弱まってきたことや、中国にルーツを持つ子どもや家庭支援の必要な子どもの増加という状況もみられる。

 このような変化の中、校区では「ふれあい教育推進事業」を受けて以来、「18歳時点での多様な進路選択のできる子どもたちを育てよう」をテーマに保育所から高校まで連携した取組みを進めている。さらに3年前に文科省の指定を受けてからは、キャリア教育の観点からこれまでの取組みを再構築している。まず、保育所や小学校低学年では基本的な生活習慣を確立させることが重要と考えており、小学校中学年から中学校では、集団づくり、仲間づくりに重点を置いている。校区の全保育所・小学校では生活習慣の定着を目指して毎年生活点検表の取組みも行っている。

 本校では、ジェンダー概念にとらわれている生徒、家庭の影響で働くことにイメージを持てない生徒、高校を中退した先輩を見て進路について安易に考える生徒が多いこともあり、1997年から職場体験に取り組んでいる。当初は1日体験であったが、複数で体験した場合に効果が薄く、地区の生徒が地区内でしか体験しなかったため、3年目は一人一事業所で3日間の体験とし、さらに生徒がイメージしにくい職業について職場体験を行った。この時体験した地区の生徒は、連携している福井高校が生徒の進路意識に合った選択科目を設定したこともあり、卒業後も自分の目標をきちんと持って進路を選択している。

 豊川中学校区では、校種間連携を通じて、高校から中学校へ、中学校から小学校へ、小学校から保育所へ、卒業生から見えてくる課題を返しながら、それぞれがキャリア教育の実践を進めている。

能勢地域における小中高連携によるキャリア教育

河崎肇(能勢町立西中学校)

 能勢地域では3年間の研究指定を経て、2004年度から大阪府内の公立学校で初めて連携型中高一貫教育がスタートした。これに合わせ、能勢町では小中高の連携による12年間の一貫教育を目指した取組みを始めた。この背景には、生活実態調査の結果から、生活習慣の確立や家庭学習の定着のために校種間連携の必要性が見えてきたことがある。また、家庭の現状をみると、学校が主体的に取り組む必要もあった。

 小中高連携は、子どもに関する情報を共有できるように、小中高で教員間の人間関係づくりから始めた。次に、小中高で段差のない教育課程を構築するために、各教科で12年間を見通した教育計画(シラバス)を作成した。また、NS(能勢スペシャル)授業では中高の国数英の教員が一緒になって学習指導を行っている他、高校教員が小中学校で授業を行ったり、高校生による保育交流などの取組みを実践している

 能勢地域にとってキャリア教育は新しい取組みではなく、これまで実践してきた取組みを再構築することである。例えば、小学校での「自分史」の取組み、中学校での「職場体験」「わたしのしごと館」の取組み、高校でのインターンシップなどを系統的につなぐことを進めている。また、本校では職場体験の成果を受けて、今年度から総合的な学習の時間を活用して3年生全員がボランティア活動を行っている。さらに能勢高校入試の際に生徒が申告書を書くことになっているが、これが生徒に明確な目的意識と学習意欲を生み出している。

 小中高連携に取り組んで、教員が一体となって12年間で子どもを育てるという姿勢が生まれている。また、様々な調査で明らかになった子どもの実態について、教員が課題意識を共有できたほか、個別支援のためのケース会議を開催するなど成果が現れている。

(文責事務局)