調査研究

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2007.02.26
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キャリア教育と人権研究会
2006年12月16日
学校・家庭・地域の協働による教育の総合化

中野 直毅(田川市立金川小学校 元校長)/熊谷 正敏(田川市立金川小学校 教諭)

筑豊の旧産炭地区に位置し、校区に同和地区を有する金川小学校は、1980年代に少年非行や差別事件が多発し、大きく学校が荒れた。実態調査から、就労・経済状況の悪化と家庭・地域の教育力の低下が、いわゆる小1プロブレム、学力2極化、中1ギャップを招いている状況が明らかになった。

そのため、低学年からの学力保障を促すため、自尊感情(特に自己効力感)の育成をベースに、就学前教育の充実と1、2年生から少人数学習を展開するとともに、多様な大人のモデル像を提示するため、保護者や地域住民との協働によりさまざまな体験学習に取り組んでいる。また、保育園と小学校、小学校と中学校、保育園と中学校という異年齢交流を積極的に行っているほか、保護者が学習応援団、読み聞かせ応援団、お掃除応援団として学校の教育活動に参画し、子どもが自分にとって意味を問う価値ある出会いを体験する機会を設けている。

一方、地域との連携に関しては、元暴走族のボランティア団体の活動、金川校区活性化協議会主催による「まつり金川」の開催等がある。特に「まつり金川」はまちづくりに子どもを位置づけ、世代間、地域間のギャップを埋める大きな機会となっている。これらの取組みを通して、保育園児、小学生、中学生と大人との「あこがれる」「あこがれられる」関係の復権を目指している。また、金川中学校では、2006年度より「金川校区観光化プロジェクト」を立上げ、職場体験学習とアントレプレナーシップ教育の手法により、生徒が地域に誇りを持てるよう取り組んでいる。

これらの取組みの結果、標準学力検査では地区と地区外との格差はほぼ解消しつつある。一方で、学力期待値の低下傾向、特に家庭の経済状況による学力格差、家庭的領域・社会的領域での自尊感情の低さ、自己肯定感の低さなどの課題があり、個々の子ども・保護者へのフォローを強化するとともに、就学前からの積極的な体験活動、将来の展望につながるモデル像の提示、子どもが肯定的な評価を受ける場を意図的に設定するなどの工夫を重ねる必要がある。


地域と協働する学校づくりからキャリア教育の構築へ

丹松 美代志(池田市立細河中学校 校長)

細河中学校は1984年に「同和教育研究学校」の指定を受けたのを皮切りに、毎年研究指定を受けて取組みを進めてきた。授業に関しては「学び合う共同体」をめざして授業改革を進めたほか、積極的な校種間連携、地域との協働にも取り組んできた。さらに生徒のコミュニケーション能力を育成するため、キャリア教育を核にして総合的な学習の充実を図っている。

職場体験学習に関しては、10年以上前から3日間の体験に取り組んできたが、中卒就労者の進路保障の経験と近畿経済産業局からの誘いをきっかけに「アントレプレナーシップ教育」の手法を生かして職場体験学習の充実を図っている。2004年度の2年生は、総合的な学習の時間を活用し、「私のしごと館」の見学、経営に関する事前学習や分析力や文章力を高める事前学習等を経て、地元の商店街を中心に50ヶ所で5日間の職場体験を行い、さらにその商店街の良さを伝えるPR紙の作成に取り組んだ。

2005年度には48ヶ所での職場体験に加え、府の技能士協会との連携による「ものづくり教室」やキッズマートにも取り組んだ。2006年度は地元産業である造園業や特別養護老人ホームを加え、52ヶ所で職場体験を実施している。

アンケート結果から5日間の経験で生徒が成就感を得たことが明らかになっている。また、将来の自分の進路について考えるようになったり、コミュニケーション能力を高め、自分たちの人間関係を考えるきっかけをつかんだ生徒が多い。今後ともこの取組みを地についたものとして「アントレプレナーシップ教育」を核にしたキャリア教育の構築をめざしていく。