今回は、2月におこなわれた準備会合を踏まえて構成メンバーそれぞれが今後の研究テーマについて発表し、相互に検討する形で行われた。以下、各自の研究テーマを紹介する。
北崎豊二さん
「解放令」に伴う除地の有税化と地租改正との関わりをめぐって、有租地化の具体的な進展と、それによって被差別部落にもたらされた変化の諸相を追う。
吉村智博さん
維新変革期における農村部落について、地域社会との関わりを、村内構造・生業構造を踏まえて明らかにする。
森田康雄さん
旧「えた」身分を中心に蓄積されてきたこれまでの部落史研究において、十分に顧みられてきたとは言いがたい、隠亡・髪結など多様な被差別民の、幕末・維新期における実態を解明する。
本郷浩二さん
明治初期に成立したとみられると畜業について、斃牛馬処理との連続/非連続の各側面を、早くから外国人によってと畜が始められた神戸の事例と、他地域とを比較しながら検討する。
上杉聰さん
明治初年から明治中期までの部落差別と部落内部の変化について、近代的国家機構の創出、文明開化、都市−町村の国家政策、民衆運動、部落内部の生業・経済状態の推移等から、総合的・体系的に把握する。
高木伸夫さん
神戸をフィールドに、幕末・維新期からの都市化・近代化に伴う部落の変化、特に部落への人の流入の在り方と生業構造の変化について解明する。
秋定嘉和さん
医療・警察・葬式・食肉・遊女など、これまでの部落史研究、あるいは歴史学研究で十分に扱われてこなかった分野について、京都を中心とした個別の事例の深化と、全国的な展開を整理する。
吉田栄治郎さん
森田さんと同じく、多様な被差別民の移行期における実態について、奈良の事例を中心に検討する。
里上龍平さん
明治初期の新聞における被差別部落に関わる記事を素材に、部落がどのような視角から報道されていたのかを検討し、部落をめぐる社会認識の変化の様相を追う。
あわせて、上杉さんから本研究会のための基礎作業として、研究文献目録の作成と収集・整理、研究史の整理、当該期に関わる通史記述の整理と問題意識の共有、史料集の目録作成と整理、原史料の発掘、という5つの課題が提示され、目録の共有、新発掘史料を含めた基礎史料集の発行などが提案された。