調査研究

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諸外国の若者就業支援政策の展開
〜イギリスとスウェーデンを中心に〜

日本労働研究機構

 本資料は、日本労働研究機構より「資料シリーズ(úY131)」として2003年4月に発行されたものである。

  周知のとおり、若年者の失業率は、多くの欧米先進国で1970年後半より上昇傾向を示し、その後、変動を繰り返しながらも比較的高い水準で推移してきている。最近のEU加盟国の平均では、15%程度の水準(2002年)となっているという。(本書より)

 それゆえ、欧米諸国の研究者や国際機関のこの問題への関心は高く、これまでに多くの調査研究がおこなわれてきている。

  一方、日本の若年失業率はこれまで4〜5%程度であり、欧米に比してきわめて低い数字で推移してきた。しかし、近年になって、10%近くに上昇し、フリーター、高卒無業者の増加等、若年者の雇用問題が大きくクローズアップされてきている。

  まさに、「わが国の若年失業率を再び低い水準に戻すことが出来るか否かには、現時点でどのような政策的対応をとるかが大きく関係する」のであり、その際、欧米の研究成果は、現在の日本にとって、大いに参考になるはずである。本資料が発行された第一の目的はそこにある。

 本資料では、イギリスとスウェーデンの2カ国について詳しくとりあげている。「どちらも90年代後半において若年者の就業状況の改善が大きい国であり、それぞれ独自の積極的な対策をおこなっている国」だからであり、「(日本が)いま、効果的な対応をとれば、両国がかつて経験したような若年者問題をひきおこさなくてすむのではないか」と考えてのことであるという。本欄では、イギリスについて触れておこう。

 イギリス(EU加盟国全体の傾向でもあるが)では、この問題を単なる失業対策というよりは、若者の社会参加の問題としてとらえ、「若者を権利と義務を兼ね備えた市民=シチズンとみなし、彼らの活動を助けることが明日への投資になる」と考えている点が特徴的である。

  具体的な政策としては、6ヶ月以上失業している若年者を「生活保護から職場へ」と復帰させることを目的として多様なプログラムを展開する「若年失業者向けニューディール政策」がまずあげられる。

  また、中退などのドロップアウトを未然に防ぐため、すべての13〜19歳の若者を対象にパーソナル・アドバイザー(個人相談員)を通じて実施するサポートシステム「コネクションズ・サービス」が2001年からスタートした。今後、大いに注目される政策であろう。

  それぞれの政策の詳細は、本編を参照していただくとして、これらの大胆な政策が採られた背景に、イギリスでは、近年、長期にわたって教育にも職業にも訓練にも属さないニート(Not In Education,Employment,Training)と呼ばれる若者たちが急増しつつあり、社会的排除の問題に対する重大な危機感が広範に存在することを見落としてはならない。

 ひるがえって、日本はどうか。内閣府に設けられた「青少年の育成に関する有識者懇談会」が、今年度早々に報告書をまとめあげた。これをもとに「青少年プラン」の早期策定が計画されているという。ようやく日本政府も「甘やかされた怠惰な若者の問題」という認識から脱して、本格的に青少年問題の政策立案に乗り出そうとしていると言えよう。 

  本資料に登場するイギリスをはじめとする欧米諸国の経験に学び、各部局の担当領域を超えた「総合的な政策」を打ち出していくことが今こそ求められているのではないだろうか。

 なお、本資料を入手するには、日本労働研究機構に直接申し込まなければならないが、「概要版」を日本労働研究機構のホームページから手に入れることができる。そこに、日本労働研究機構の主任研究員である小杉礼子氏の執筆による「本編」第一部「諸外国の若年就業支援政策の概観」が抜粋されている。表題どおり、欧米の若年雇用政策を概観するうえで、非常に有益な論文である。まずは、そこから読まれてはいかがか。