調査研究

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日本労働研究機構 2000 

フリーターの意識と実態
―97人へのヒアリング調査より
調査研究報告書No.136


概要

「フリーター」と呼ばれる若者たちの就業行動の実態と意識、その背景を探ることを目的

調査対象

自称「フリーター」で学生でも主婦でもない者、年齢は30歳未満

調査方法

ヒアリングシートを用意した上で、基本的に1対1で1人あたり1時間を目安にヒアリングを実施。101名(男性38人、女性63人)。分析対象はフリーター非該当者を除く97人(男性34人、女性63人)。

  1. 5つの専門学校(旅行・服装・理美容・コンピュータ・簿記関係)を通じた紹介 1999年7月 21人
  2. 情報誌(『じゃマール』リクルート・フロム・エー)による募集 1999年10月 8人
  3. アルバイト情報誌(『フロム・エー』リクルート・フロム・エー)による募集 1999年11月 72人

úJ.誰がなぜ「フリーター」になるのか

フリーターの6割は女性、年齢層は20歳代前半層までが中心

 高卒までの学歴が半数強、何らかの中退者が2割
 東京出身半数弱、千葉・埼玉・神奈川2割強、その他の地方3割弱
 7割強が高校時にアルバイト経験、高卒以下女性は9割、地方高校出身者は少ない

フリーターには「モラトリアム型」「夢追求型」「やむを得ず型」の3類型、細分化すれば7つの類型(契機と意識による分類)

モラトリアム型

  1. 離学モラトリアム型(29.9%):高校、専門学校、大学からの中退者、大学受験失敗・進学断念者、進路未定のままの高卒者・大卒者など
  2. 離職モラトリアム型(9.3%):高卒・短大卒・大卒後、数ヶ月から2年程度の正社員経験を経て離職し、フリーターとなった者。離職理由は労働条件や人間関係。正社員経験の印象はあまり良くなく、離職時に正規雇用を強く志向していない。

    夢追求型

  3. 芸能志向型(16.5%):バンドの練習、オーディション応募、養成期間所属、夢への接近度は様々
  4. 職人・フリーランス志向型(11.3%):経験を通した技能・技術の蓄積が要求される。関連するアルバイトを行ったり、仕事を請け負ったり、自ら作品を売り込んだりして、市場への参入を図っている。(若者のあこがれる職業には参入ルートが不確かなものが多い→職業そのものがフリーターという就業形態を要求)

    やむを得ず型

  5. 正規雇用志向型(13.4%):公務員など特定の職業への参入機会を待っているもの、離職したが正規雇用を志向している者、派遣を志向した者が含まれる。(企業の採用活動が積極的、労働市場の需給状況が緩んでいればフリーターにならず)
  6. 期間限定型(13.4%):進路変更による専門学校への入学時期待ち、次の入学までの学費稼ぎ、ワーキングホリデーのための費用稼ぎ
  7. プライベート・トラブル型(6.2%):トラブルによって学校を離れる

性別では、

 男性:「期間限定型」「正規雇用志向型」が多い
 女性:「芸能志向型」「職人・フリーランス志向型」が多い

学歴では、

 高卒以下:「芸能志向」が多い
 高卒超男性:「正規雇用志向型」
 高卒超女性:「職人・フリーランス志向型」

正規雇用経験者は4割、「離職モラトリアム型」「正規雇用志向型」以外は2〜3割。

フリーターになった背景に、家庭の経済事情・父母の離婚・家族の病気などの事情があるケースが2割弱(倒産・父の病気・介護・離婚など)。

úK.「フリーター」はどのような生活をしているのか

週労働日数は4.9日、月収は平均139,000円。

3分の2が親と同居、同居者の半数以上は何らかの経済的負担。別居者の8割弱は自活。

úL.「フリーター」はどのような就業意識を持っているのか

メリット:自由・時間の融通がきく・休みが取りやすい・様々な経験ができる

デメリット:収入が少ない・社会に認められていない・不安・不安定
 正社員は「金銭面」でよく、「安定」しているが、「拘束」されるという認識

やりたいことがあるフリーターとないフリーターを区別して評価

やりたいことがあれば正社員でもフリーターでもこだわらない

úM.キャリア形成・能力開発の問題はあるのか

多くの者に将来のキャリア形成への意識はあるが、消極的な現状肯定者や、具体的で有効な取り組みのない者も。

フリーターの就業職種は限定されており、基本的なソーシャル・スキル以外の職業能力形成に結びついている場合は少ない。

希望職種の就業可能性、学校入学後の入職可能性、資格取得の効果などに関する認識は必ずしも十分でない

20歳代後半にはフリーターに限界を感じ、「焦り」も。女性には職業キャリアへのこだわりのない者も。

úN.学校から職業への移行の仕組みに問題があるのか

高校時代には進学者・就職者とも、職業選択についての意識が不明確。

 高校時代からフリーター志向の者は「夢」ありタイプと「やりたいこと」が定まらない限り進学も就職も選択しないという2つのタイプに。現実的なキャリア形成という意味では問題を抱えている。

 進学に偏らない進路指導、企業人の関与、詳しい職業情報、早期の段階からの進路指導などを求める声も。

úO.求められる支援

職業意識の啓発

小中高を通じての総合学習・職場体験による職業観の育成と職業選択能力の向上

高校生インターンシップなどの勤労体験学習の普及

職業ガイダンスの充実

 新卒者・既卒者対象の専門相談・紹介期間の増設拡充
 専門キャリアカウンセラー・業界アドバイザーの配置
 現実的具体的な職業情報の提供と生徒の適性・能力・希望進路の現実性などの評価・助言
 「フリーター就業」の具体的特質についての情報提供

フリーターから正規雇用への移行支援が必要

 教育訓練制度の活用による就職促進
 就業機会情報の積極的提供による就職促進
 採用における学歴・年齢要件の緩和

(文責:内田龍史)