差別的に思われることと、と場の運営形態が異なることに関係があるのではないかと考えている。と場の運営は、1.行政、2.経済連(農協)、3.食肉組合、4.株式会社の4つの形態がある
「設置者」が市町村である場合は行政である。設備を県や市、町といった行政が所有しており、その設備を組合や株式会社に貸して食肉を生産しているというものである。関西で代表的なところは大阪南港市場、貝塚、神戸市、姫路、京都、福知山、近江八幡、和歌山市がすべてそうである。市場と名前がつくところはすべて行政管轄である。管轄の部署は環境課・環境衛生課などに無理位置づけられていることがある。
関西の近くにはあまりないが、徳島の鳴門・広島三次・香川大川などは農協が経営している。
組合運営は数が少ないが、もともと行政が持っていた設備を「もうあなたたちで使って下さい」と譲り受けたところがほとんどで、これは行政がこれ以上と場に対して予算を使いたくない、と言っているということだ。と場は株式会社の一部を除いてすべて赤字経営なので、行政としてはできるだけ手放したいという意向がある。「運営を任せる」と行政から手を引かれて閉鎖に追い込まれたと場は非常に多い。
株式会社が設備を所有、運営しているところは少なくないが、関西では滋賀県大津にある京滋畜産がそうである。また、日本ハムなどが全国にと場を持っている。九州では宮畜、南畜などの株式会社がと場を運営している。
行政運営のと場は役所の中に管轄部署があるとはいっても、担当者が数年毎に変わる行政のシステムであり、担当者の中で「と場が好きだ」という人はいない。彼らの本音は「あと何年か辛抱すれば、別の部署に配置換えされる」ということ。こういう意識でと場に接しているので、と場での現場を一度も見たことがないという担当者も珍しくない。そういう担当者は「こわい、気持ち悪い」といって見に行かないのだが、私にまで「現場作業中は(作業員がピリピリするので)立ち入り禁止です」と言う。こんな意識で良いものができるはずがない。
行政管轄のそれなりの規模のと場では予算が取れるが、零細と場では部署の担当者の熱意如何によって予算が決まる。と場の設備はすべて消耗品なので、定期的に入れ替えていかないと使えない。でも予算がないからしょうがない、という考えの担当者がいると場では、設備改善が後回しにされてどんどん蓄積されていき、改善を迫られるときに一挙に数千万、数億単位の金額が必要になる。そんな金はどこにもない、ということになって閉鎖に追い込まれる。そのような担当者は予算がないのではなく、作ろうとしないだけだ。熱心なところはどんなに小さな所でも存続できる。と場は環境課で扱われていることが多いが、管轄がゴミ処理や斎場と同じ所に入っている場合が多く、食品の生産工場が同じところで扱われているのは違和感がある。
全国的にみると北海道や東北のと場では、それほど特殊な業種といった感じを受けない。九州も、特にと場内の写真を撮ろうとすると、一緒に写りたがる人も多く、外国のようなイメージを受けた。北関東は黒人やブラジル人が働いていて、インターナショナルな雰囲気を受ける。関東では芝浦と横浜がやはり歴史を背負っているのか、差別に対する思いを感じる。歴史があるところはやはり、根も深いように思う。差別に関しては、近江八幡から姫路あたりまで強いように思う。部落産業、郷土色が強いところだ。
個人的に思うのは、差別意識が強いのは芝浦と関西圏で、牛を処理しているところなのではないかと感じている。他の大きなと場はほとんどが豚を解体している。
(文責:内田 龍史)
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