関西地域においては食肉市場、とりわけ解体処理に従事する労働者に対する偏見・差別はいまだ根強い。しかし、食肉労働に対する差別は部落差別の中でも重要な位置を占めているにもかかわらず、本格的な研究はなされてこなかった。食肉労働への差別の実態を明らにし、偏見を取り除くための調査・研究は立ち後れているのが現状である。
部落解放・人権研究所では、2001年度以降、所内に食肉労働に関するプロジェクトを立ち上げ、研究会の開催、食肉市場の見学、解体処理に従事する労働者からの聞き取りや、食肉労働組合の会合への参加などに取り組んできた。その成果については『食肉業・食肉労働に関するプロジェクト報告書』(2006年3月刊行)にまとめられている。
これらの取り組みによって、食肉業と食肉労働に対する差別を撤廃するための作業の一端に着手することができたが、残されている課題は少なくない。残念ながら、当初に掲げた「食肉業と食肉労働に対する差別の実態を明らかにし偏見を取り除く」という目的が十分に達成されたとは言い難く、その目的の達成に向けて、研究所としては2006年度から3カ年の目標で、第2次食肉業・食肉労働プロジェクトに取り組むこととなった。
今後具体的に解明すべき課題としては、<1>食肉業・食肉労働に従事する労働者の実態や想いの把握、<2>グローバル化、BSE問題などで急激に変貌すると場の実態の把握、<3>食肉業や食肉労働に対する差別を撤廃するための方策の研究、<4>その他関連する事項の調査研究があげられる。今年度は、主に<1>および<2>について研究を進める予定である。