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SOSニュース2001年度報告と2002年度の取組みについて

 「SOSトーチャー翻訳委員会(日本)」は、1987年11月の結成以来、本年で15年目を迎えます。当初より、スイスのジュネーブに本部を置くNGO「世界拷問防止機構」(OMCT/SOS-TORTURE)から送られてくる公権力等による拷問、不法な拘禁、殺害などに関する速報を日本語に翻訳し、人権関連団体、マスコミ、労組、政党、個人の方々に送付して、解決のための働きかけを要請してきました。

また、1997年度からは「国際人権連盟」(FIDH)と「世界拷問防止機構」との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」による速報も翻訳し、働きかけの要請を行なっています。

これまでに翻訳した事件数は、2002年3月20日現在(No.3282)で通算3282件に達しています。これまで世界各地で活動するSOSトーチャーのネットワークNGO等による働きかけなどによって、解決された事件もありますが、多くの場合人権侵害が繰り返されており、人権伸長への道のりは険しいというのが現状です。

こうした厳しい状況を踏まえ、当委員会の活動を充実させるために、2001年度の報告と2002年度の活動計画をお知らせします。

【1】2001年度のニュース(速報)の報告

【2】2002年度の取り組みについて

ニュースの発行状況に関する資料

【1】2001年度のニュース(速報)の報告

● 概要について

 <1>全体

2001年4月1日号〜2002年3月20日号 まで36回を発行し、47カ国(地域)における119件の速報を翻訳発行した(2000年度は41ヶ国、地域で161件)。

事件の内容は、人権の擁護および伸張を目指す活動家・平和的デモに参加する人々などに対する恣意的逮捕、不法な拘禁、また所在を明らかにしない拘禁、逮捕時や拘禁中における暴力や拷問、女性へのレイプ、軍隊や警察関係者による脅迫やいやがらせ、殺害に関するものである。犠牲者は、人権擁護の活動を行なう人々そして子どもを含めた一般市民である。

119件のうち「世界拷問防止機構」(SOSトーチャー)と「国際人権連盟」(FIDH)との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」の速報は、23件あった。

以下、地域別に分類した事件の特徴について。

 <2>アジア 35件

2001年度アジア関連の速報の中で、従来、東ティモールが多数を占めていたが、今年度はキルギスにおける人権擁護活動をする団体の事務所・活動家に対する人権侵害が主立ったニュースとして取り上げられている。人権活動のための事務所が政府関係当局によって恣意的に捜索され、活動家たちは逮捕・拘禁そして拷問を受けている。また市民が行なった平和的デモ行進も政府当局によって妨害されるなど、政治的動機による圧力がかけられているという報告が目立った。

マレーシアでは、野党政治家・人権擁護家たちが恣意的に拘禁されている。また、拘禁されている活動家を救済するための平和的デモに参加した子どもたちを含む一般市民1500人が、警察から暴力を受け、41人が恣意的に逮捕されるなど、政府当局が「国内治安法」を用いて人権を侵害する行為を強めている。

スリランカ、インドでは先住民、女性に対する人権侵害が報告されている。

 <3>中東(北アフリカ・アラブを含む) 25件

イスラエル国内あるいは占領地内において、イスラエル当局がパレスチナ人に対して拷問を行なっているという報告がある。特にイスラエルが「子ども権利条約」批准しているにも関わらず子どもたちが独房に拘禁され、拷問を受けているという報告が目立った。

トルコでは、人権団体の活動家が逮捕、拘禁されており、複数の事務所が一時閉鎖されたりなどの弾圧が繰り返し行われている。

エジプトでは、同性愛者の人権が政府当局によって侵害されているという報告が目立った。例えば、同性愛者である23人に対して、重労働刑の判決が出されて以降、同性愛者たちは恣意的に逮捕され、拘禁中に拷問を受けている。

チャドでは、家族12人が警察による組織的暴力を受けて拘禁されている。また、子どもたちが強制的に軍隊に入隊させられている状況が報告されている。

 <4>中南米(北米含む) 22件

中南米は、先住民族、女性、農民、労働者、ストリート・チルドレンなどに対する人権侵害が報告されている。特にコロンビアでは治安当局だけではなく、準軍事的組織による人権侵害も多いのが特徴的である。

グアテマラでは、ストリートチルドレンが殺害、レイプされるなどの報告が目立った。また、ストリートチルドレンを支援する団体事務所から子どもたちの個別情報が記載された文書が盗まれるなど、人権擁護活動を行なうための状況も悪化している。

コロンビアでは、先住民族、労働者、子ども、女性が準軍事的組織による人権侵害を受けている。同様に国内における武力衝突によって国内難民が増えるといった状況にある。

ホンジュラスではストリート・チルドレンが殺害、レイプされるという事件が起きている。他の中南米諸国でも同様に子どもの生命に危険が及ぶ事件が、他地域に比べて頻繁に報告されている。

<5>中央アフリカ、南部アフリカ 27件

  コンゴ(旧ザイール)では、軍事裁判によって子どもたちに死刑判決が出される事件が2件ある。スーダンでは、人権擁護家が恣意的に逮捕され拷問を受けている。またスーダン政府は「拷問禁止条約」に批准しているにもかかわらず、窃盗罪などで逮捕されている人々に対して「右手切断刑」「絞首刑」という処罰を判決として用いている状況が2件報告されている。

<6>ヨーロッパ 10件

 ギリシャ、ユーゴスラビアにおいて、ロマの人々が人権侵害にあっている。家族全員が市当局によって今まで暮らしていた家から追い出される、警察当局によって暴行、嫌がらせを受けているなどの事件が多く報告されている。

【2】2002年度の取り組みについて

 2002年度の取り組みとして、以下を課題としていますので、ご支援をよろしくお願いいたします。

(1) 「SOSニュース」の翻訳発行を継続し、内容の充実を図る。

  1. 読者などから、ニュースの背景状況に関する情報を募る。
  2. 従来 部落解放・人権研究所アルバイト職員が翻訳を担当していたが、2002年度から、翻訳ボランティア1名を加えて2名で翻訳を行なう。また、2人体制ではジュネーブからの速報のすべてを翻訳しきれていない。今後も翻訳ボランティアの拡大を目指していく。
  3. 英文でのひな型があれば、SOSニュースの要請行動をより早く送付できるという読者からの希望もあるため、簡単な要請文例を掲載するなど、要請行動がスムーズに行なえるようにする。

 (2) [SOSニュース]の積極的な活動紹介

  1. 要請活動を行なった団体や個人へ、要請行動の活動を継続して促していきたい。
  2. 要請行動後、万が一各国当局からの返事を受けた場合など、読者から翻訳委員会事務局に情報提供をしてもらう。
  3. 国際的人権問題に取り組んでいる団体や雑誌などに、翻訳委員会のニュースを提供し、情報活動を拡大していく。