【1】2001年度のニュース(速報)の報告
● 概要について
<1>全体
2002年4月1日号〜2003年3月20日号 まで36回を発行し、54カ国(地域)における145件の速報を翻訳発行しました(2001年度は47ヶ国、地域で119件)。
事件の内容は、平和的デモに参加する人々、人権の擁護および伸張を目指す活動家に対する恣意的逮捕および拘禁、また所在を明らかにしない隔離拘禁、逮捕時や拘禁中における暴力や拷問、女性へのレイプ、軍隊や警察関係者による脅迫や虐待、殺害に関するものです。犠牲者は、人権擁護の活動を行なう人々そして子どもを含めた一般市民です。
145件のうち「世界拷問防止機構」(SOSトーチャー)と「国際人権連盟」(FIDH)との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」の速報は、23件ありました。
以下、地域別に分類した事件の特徴についてです。
<2>アジア 46件
2002年度はこれまで速報として送られることがなかった中国におけるインターネット上で政治的意見を発表するインターネット活動家たちの逮捕、拘禁に関する報告が目立っています。また、スリランカにおける警察当局によって一般市民が逮捕され、拷問や虐待などを受けているという人権侵害についての報告も目立っています。
マレーシアの市民が行なった平和的デモ行進も政府当局によって妨害されるなど、圧力がかけられているという報告が昨年に引き続き多くありました。
その他、フィリピンでは、国軍によって一般市民が恣意的な逮捕、誘拐、虐待などの人権侵害を受けているケースが目立ち、その他、タイ、インド、ネパールなどで先住民、難民や女性、子どもへの人権侵害が行なわれていると報告されています。
<3>NIS諸国 24件
2000年まではほとんど取り上げられなかったNIS諸国における人権侵害が多く取り上げられています。特に今年からNIS諸国のみで24件の人権侵害の事件が報告されています。特にキルギス、アゼルバイジャンなどにおいて平和的デモなどに参加する一般市民を恣意的に拘禁、拷問するといった事件、また人権擁護活動を行なう団体や野党政治家への嫌がらせなど、政治的または宗教的的活動を行なう人々への人権侵害に関する報告が目立ちました。
またロシアでは、チェチェンにおける人権侵害、そして子どもが刑務所において拷問を受けるなどの人権侵害に関する報告が目立っています。
このように最近目立ってNIS諸国からの速報が多いということは、人権組織が活発に動きだしているという証拠ともいえます。
<4>中東(北アフリカ・アラブを含む) 29件
昨年度同様に、イスラエル国内あるいは占領地内において、イスラエル当局によってパレスチナ人、また子どもに対して組織的に人権侵害が行なわれているという報告が目立っています。特にイスラエルが「子ども権利条約」批准しているにも関わらず子どもたちが独房に拘禁され、拷問を受けているという報告、超法規的にパレスチナ人が処刑されているなどの人権侵害が行なわれています。
イランでは、人権擁護家や弁護士たちが恣意的に逮捕、拘禁刑を受けるといった事件の報告が多くありました。また子どもを含む多くの人びとが恣意的に逮捕、手足切断刑や公開処刑など人権状況が悪化しています。
<5>中南米(北米含む) 13件
中南米は、子ども、農民などに対する人権侵害が報告されています。特にコロンビアにおいては各地で人が失踪する、準軍事的組織による襲撃、暴行など一般市民への人権侵害が依然多いのが特徴であり、国内における武力衝突によって国内難民が増えるといった状況にあります。
<6>中央アフリカ、南部アフリカ 23件
ナイジェリアとスーダンでは、シャリア法を適用し、女性に対して投石による死刑判決などの人権侵害についての報告が目立ちました。
<7>ヨーロッパ 10件
ヨーロッパは、ロマ、難民に対する人権侵害が目立っています。ギリシャでは、庇護を求めている人々が何の提供も受けず、さらには恣意的に逮捕または拷問を受けているという報告がありました。またユーゴスラビア(セルビア・モンテネグロ)とブルガリアにおいて、ロマの人々が市当局によって強制退去させられる、また警察当局による暴行や嫌がらせを受けるなどの事件が依然多く報告されています。
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