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2004.07.09

SOSニュース2003年度報告と2004年度の取組みについて

  「SOSトーチャー翻訳委員会(日本)」は、1987年11月の結成以来、本年で17年目を迎えます。当初より、スイスのジュネーブに本部を置くNGO「世界拷問防止機構」(OMCT/SOS-TORTURE)から送られてくる公権力等による拷問、不法な拘禁、殺害などに関する速報を日本語に翻訳し、人権関連団体、マスコミ、労組、政党、個人の方々に送付して、解決のための働きかけを要請してきました。

  また、1997年度からは「国際人権連盟」(FIDH)と「世界拷問防止機構」との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」による速報、また2003年度からは「世界拷問防止機構」と「人間居住ネットワーク・ハビタット・インターナショナル連合(HIC-HLRN)」による共同要請速報も翻訳し、働きかけの要請を行なっています。毎号の平均アクセス数ホームページが約240件、メールマガジンの定期購読者は2004年5月13日現在で284人でした。

  これまでに翻訳した事件数は、2004年3月20日号現在で通算3569件です。これまで世界各地で活動するSOSトーチャーのネットワークNGO等による働きかけなどによって、解決された事件もありますが、依然として拷問、虐待、また居住する権利を奪うなどの人権侵害が繰り返されており、人権伸長への道のりは険しいというのが現状です。

  こうした、厳しい状況を踏まえ、当委員会の活動を充実させるために、2003年度の報告と2004年度の活動計画をお知らせします。

【1】2003年度のニュース(速報)の報告

【2】2004年度の取り組みについて

【3】ニュースの発行状況に関する資料

【1】2003年度のニュース(速報)の報告

●概要について

全体

2003年4月1日号〜2004年3月20日号 まで36回を発行し、50カ国(地域)における142件の速報を翻訳発行しました(2002年度は54ヶ国、地域で145件)。

事件の内容は、平和的デモに参加する人々、人権の擁護および伸張を目指す活動家に対する恣意的逮捕および拘禁、また所在を明らかにしない隔離拘禁、逮捕時や拘禁中における暴力や拷問、女性へのレイプや超法規的判決、軍隊や警察関係者による脅迫や虐待、殺害に関するものです。犠牲者の多くは、人権擁護の活動を行なう人々そして子どもを含めた一般市民です。

142件のうち「世界拷問防止機構」(SOSトーチャー)と「国際人権連盟」(FIDH)との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」の速報は、26件、また「世界拷問防止機構」と「人間居住ネットワーク・ハビタット・インターナショナル連合(HIC-HLRN)」の速報は6件ありました。

以下、地域別に分類した事件の特徴についてです。

アジア 53件

昨年同様に、中国におけるインターネット上で政治的意見を発表するインターネット活動家や人権擁護家たちの逮捕、拘禁に関する報告が目立っています。また、インドにおいて、ダリットや先住民の人々が数千人という規模で強制退去させられるなど居住に対する権利が奪われるケースがあります。

スリランカでは、警察当局による拷問や虐待など人権侵害についての報告も依然目立っています。

ネパールでは、ダリット(不可触民)を理由とした、逮捕や寺院参拝拒否などの暴力事件が報告されています。

その他、モンゴルとチベットでは、強制退去させられるなどの居住に対する権利侵害、またフィリピンでは未成年者が恣意的に逮捕、拘禁また拷問を受けているケースが目立っています。タイでは依然としてビルマ人など亡命者、移住者を強制追放するなどの人権侵害が行なわれています。


NIS諸国 25件

NIS諸国においては、キルギスで宗教団体に対する恣意的な逮捕、隔離拘禁および拷問、そして人権NGOに対する嫌がらせなどが相次いでいます。アゼルバイジャンでは、平和的デモなどに参加する一般市民を恣意的に拘禁、拷問するといった事件、また人権擁護活動を行なう団体や野党政治家への嫌がらせなどの人権侵害に関する報告が目立ちました。


中東(北アフリカ・アラブを含む) 23件

昨年度同様、イスラエル国内あるいはパレスチナ領地内において、イスラエル当局によるパレスチナ人、また子どもに対して組織的に人権侵害が行なわれているという事件が相次いで報告されています。特に、イスラエル政府が建設している「アパルトヘイト・ウォール」と呼ばれるパレスチナのガザ西岸の「隔離壁」が深刻な人権侵害を引き起こしているという報告が目立ちます。

エジプトでは、特に今年度は、イラク戦争およびイスラエルのパレスチナへの攻撃に関連して人権擁護家や平和的デモに参加する一般市民が逮捕、虐待・拷問、隔離拘禁されるといった事件の報告があるなど人権状況が悪化しています。

中南米(北米含む) 13件

中南米は、特にコロンビアにおいては各地で人が失踪する、準軍事的組織による襲撃、暴行など一般市民への人権侵害が依然多く報告されています。またホンジュラスにおいては、環境保全活動を行なう団体および活動家が脅迫、暗殺されるなどの報告が目立ちました。


中央アフリカ、南部アフリカ 18件

  スーダンにおいて、未成年者や女性に対して手足切断、むち打ちの判決といった拷問に関する事件が報告されています。またカメルーン、コンゴでは、「チャイルド・ウィッチ」と呼ばれる超自然的観念を持つ子ども達が施設内で虐待、あるいは拷問、殺害されるといったアフリカにおける特徴的な事件について今年度初めて報告されました。またナイジェリアやスーダンでは、前年度同様、シャリア法を適用し、女性に対する投石による死刑判決などの人権侵害についての報告が目立ちました。


ヨーロッパ 10件

 ヨーロッパは、ギリシャとセルビア・モンテネグロの2カ国のみが速報されています。ギリシャでは、庇護を求めている人々(子どもを含む)が拷問、拘禁され、強制送還されるとの報告が目立ちました。またセルビア・モンテネグロでは、警察当局による暴行や嫌がらせ、そして特にロマの人々が人権侵害を受けていると報告されています。

【2】2004年度の取り組みについて

 2004年度の取り組みとして、以下のような課題を考えています、今後ともご支援と要請をよろしくお願いいたします。

(1) 「SOSニュース」の翻訳発行を継続し、内容の充実を図る。

  1. 読者よりニュースの背景状況に関する情報を募ります。

  2. 部落解放・人権研究所アルバイト職員1名の翻訳担当者に加え、2003年度から、翻訳ボランティア1名を加えて2名で翻訳を行なっています。また現在、大学生1名が在宅翻訳ボランティアを行なっています。それでも、ジュネーブからの速報すべてを翻訳しきれていないため、今後も在宅での翻訳ボランティアを募っていきます。また、各国の団体名や要請行動の定型文書などを用語集として作成し翻訳がスムーズになるよう努めます。

  3. 現在、特に中南米諸国やアフリカ諸国の速報がスペイン語、フランス語で送信されてくるため、必ずしも世界各地の人権侵害の要請が日本語訳されていません。現在は英語のみを日本語に訳し働きかけ要請をしてきましたが、他言語にどう対応していくかを検討していきます。

  4. 各国の関係当局への要請行動文書のひな型英文があれば、SOSニュースの要請行動をより早く送付できるという読者からの希望があるため、英文でのひな型要請文を作成するなど、要請行動が迅速に行なえるようにしていきます。

  5. 続報として出てきたケースを定期的に収集し、「グッドニュース」特集として、参加者に報告していきます。要請行動することへの効果を感じることができ、SOSニュースを購読する人びとのモチベーションを高めることが期待できます。

(2) [SOSニュース]の積極的な活動紹介

  1. 要請活動を行なった団体や個人へ、要請行動の活動を継続して促していきます。

  2. 要請行動後、各国当局からの返事を受けた場合など、読者から翻訳委員会事務局に情報提供をしてもらいます。

  3. 国際的人権問題に取り組んでいる団体や雑誌などに、翻訳委員会のニュースを提供し、情報活動を拡大していきます。