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SOSニュース2005年度報告と2006年度の取組みについて |
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「SOSトーチャー翻訳委員会(日本)」は、1987年11月の結成以来、本年で19年目を迎えます。当初より、スイスのジュネーブに本部を置くNGO「世界拷問防止機構」(OMCT/SOS- TORTURE)から送られてくる公権力等による拷問、不法な拘禁、殺害などに関する速報を日本語に翻訳し、人権関係団体、マスコミ、労組、政党、個人の方々に送付して、解決のための働きかけを要請してきました。 また、1997年度からは「国際人権連盟」(FIDH)と「世界拷問防止機構」との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」による速報、2003年度からは「世界拷問防止機構」と「人間居住ネットワーク・ハビタット・インターナショナル連合(HIC-HLRN)」による共同要請速報も翻訳し、働きかけの要請を行なってきました。2005年度(2005年4月〜2006年3月)は、毎月のホームページに平均約432のアクセスがあり、メールマガジンの定期購読者は2006年3月31日現在で221人でした。 これまでに翻訳した事件数は、2006年3月20日号現在で通算3821件です。これまで世界各地で活動するSOSトーチャーのネットワークメンバーであるNGO等の働きかけなどによって、解決された事件もありますが、依然として拷問、虐待、超法規的処刑、人権擁護活動家への人権侵害などが繰り返されているのが現状です。 こうした、厳しい状況を踏まえ、当委員会の活動を充実させるために、2005年度の報告と2006年度の活動計画をお知らせします。 |
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【1】2005年度のニュース(速報)の報告 |
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【1】2005年度のニュース(速報)の報告(資料を参照) ● 概要について <1>全体 2005年度は、2005年4月1日号から2006年3月20日号 まで36回を発行し、33カ国(地域)における122件の速報を翻訳発行しました(2004年度は35ヶ国/地域で、127件でした)。 事件の内容は、人権活動に関わるNGO関係者、知識人、弁護士、労働組合員および一般市民に対する恣意的逮捕および拘禁、あるいは、これら人びとの隔離拘禁、逮捕時や拘禁中における虐待や拷問、超法規的処刑であり、さらには軍隊や警察関係者による脅迫や虐待、女性や子どもへの性暴力に関するものでした。2005年度の大きな傾向として言えるのは、SOSトーチャーでとりあげた人権侵害事件の対象者は、大半が人権活動に直接関与する人たちでした。 122件のうち「世界拷問防止機構」(SOSトーチャー)と「国際人権連盟」(FIDH)との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」の速報は72件あり(追加情報含む)、「世界拷問防止機構」(SOSトーチャー)からの速報は50件ありました。 世界的な要請行動が効を奏して釈放/改善されたケース、あるいは最初の速報から事態が進展したケースは、そのうち37件ありました。以下、地域別に分類した事件の特徴についてご報告をします。 尚、SOSトーチャー翻訳委員会では、「世界拷問防止機構」から送られてくるケースの大半を翻訳していますが、スペイン語やフランス語で書かれたケースを含め、すべてのケースを翻訳しているわけではないことを、ここでご報告しておきます。 <2>アジア 49件 ネパールでは、2005年2月1日に出された非常事態宣言が国際社会の圧力のもと同年5月に解除されたにもかかわらず、NGO、学生、知識人、政治家をはじめとした一般市民が恣意的に逮捕された事件が多数起こりました。とりわけ、平和的な集会やデモに参加中の市民や学生が大量に逮捕される、起訴もないままに長期間拘束されるなどの事件が相次ぎました。 カンボジアに関しては、人権NGOや労働組合への嫌がらせとして、関係者が恣意的に逮捕されたり、刑事裁判で有罪判決を受けるケースが目立ちました。ベトナムでは民主的改革を唱える知識人が嫌がらせを受ける事件がありました。フィリピンでは、2人の労組活動家が超法規的に処刑されました。スリランカとパキスタンでは、国家人権委員会を直接攻撃する事件が起こりました。 中国では、政府への陳情や自治体批判を行った人びとへの嫌がらせとして、不当な拘束や暴力行使が目立ちました。また、香港で、WTO(世界貿易機関)に関連したNGO集会で、韓国の農民組織代表が逮捕拘束される事件がありました。韓国では、公務員労組の活動家が逮捕される事件がありました。インドにおいては、性的指向が理由で男性4人が逮捕起訴される事件がありました。マレーシアでは「国内治安法」のもと2001年に逮捕された7人の学生が、4年に及ぶ裁判の末、無罪判決を得ました。 <3>NIS諸国 16件 ウズベキスタンでは2005年5月13日のアンディシャン事件(平和的なデモ参加者に対する政府軍の発砲で一般市民数百人が死亡)に続き、多数の人権擁護活動家やメディア関係者が恣意的に逮捕・拘禁される事件が相次ぎました。またウズベキスタンより庇護を求めて隣国のキリギスに逃れた人々が強制送還の危機に直面する事件がありました。アゼルバイジャンでは、ジュネーブの人権委員会に参加しようとした人権活動家に移動の制限が加えられたり、野党副党首が拘束されて拷問を受けた事件が起きました。ロシアでは人権関係のNGOの事務所が荒らされたり、ロシア・チェチェン友好協会への嫌がらせが続きました。 <4>中東(北アフリカ・アラブを含む) 18件 中東地域においては、イスラエル国内あるいはパレスチナ領地内において、イスラエル軍によるパレスチナのNGOメンバーや一般市民に対する拘束や拘束中の拷問の報告が目立ちました。イランでは、人権弁護士や著名なジャーナリストが恣意的に逮捕拘禁されたり、拘禁中の治療を拒否される事件がありました。 エジプトでは、憲法改正をめぐる平和的なデモに参加中の女性たちが、治安部隊より性暴力を受ける事件が起きました。 <5>中南米(北米含む) 1件 近年、中南米における人権侵害の事件の速報はスペイン語によって送られてくるため、日本語では速報を出すことができませんでした。しかし、最近になり、一部、事件の速報が英語で送られてくるようになりました。2005年度中には、1件、コロンビアにおける軍兵士による少女射殺・レイプ事件を日本語に翻訳して報告しました。 <6>中央アフリカ、南部アフリカ 28件 スーダンでは、昨年に続き、ダルフール地方の国内避難民キャンプにて、避難民男性が恣意的に連行されたり、女性や子どもたちが性暴力を受ける事件が続きました。また、首都付近でも大学生や弁護士、NGOメンバーに対する人権侵害が報告されています。エチオピアでは、人権活動に携わる人びとの逮捕が報告されています。ジンバブエでは平和的なデモに参加した人権擁護家が逮捕される事件が起きました。シェラレオネでは人権活動家のジャーナリストが国会議員によって送りこまれた暴漢に暴行を受け、死亡する事件が起きました。 <7>ヨーロッパ 1件 ヨーロッパでは、セルビアの事件を1件速報しました。警察官が一般市民の家に入りこみ、12時間におよび虐待した事件を報告しました。 |
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2006年度の取り組みとして、以下のような課題を考えています、今後ともご支援と要請行動への積極的参加をお願いいたします。 (1) 「SOSニュース」の翻訳発行を継続し、内容の充実を図る。 部落解放・人権研究所職員1名と翻訳ボランティア1名の2名で、ジュネーブから配信されてくるケースを翻訳しています。事件解決のためには迅速なケースの配信が必要なため、翻訳作業を助けてもらえる翻訳ボランティアを今後も募っていきます。 2005年度より、より多くの方々に要請行動に参加してもらえるよう、英語による要請文の例文をケース紹介に含めました。これは今後も続けていきます。 現在、特に中南米諸国やアフリカ諸国の速報がスペイン語あるいはフランス語で送信されてくるため、必ずしも世界各地の人権侵害事件を日本語に訳しているとはいえない状況です。他言語による速報にどう対応していくかは引き続き今後の課題です。 SOSニュースで配信する人権侵害事件の背景を読者の方々によりよく理解してもらえるよう、必要に応じて関連情報を提供する可能性を検討します。また、昨年度の課題として、要請行動によって改善されたケースを「グッドニュース」特集として報告していくことを挙げました。しかし残念ながら、特集するに至る件数がなかったため、これは、引き続き今年度の課題として追求していきます。 (2) [SOSニュース]の積極的な活動紹介 要請行動後、各国当局からの返事を受けた場合など、読者からSOSニュース翻訳委員会事務局に情報提供をしてもらえるよう求めていきます。 国際的な人権問題に取り組んでいる団体や雑誌などに、翻訳委員会のニュースを提供し、情報活動を拡大するとともに、要請行動へのより幅広い参加を求めていきます。 (3)[SOSニュース]の配信の状況
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