|
|||
SOSニュース2007年度報告と2008年度の取組みについて |
|||
「SOSトーチャー翻訳委員会(日本)」は、1987年11月の結成以来、本年で21年目を迎えます。当初より、スイスのジュネーブに本部を置くNGO「世界拷問防止機構」(OMCT/SOS- TORTURE)から送られてくる公権力等による拷問、不法な拘禁、殺害などに関する速報を日本語に翻訳し、人権関係団体、マスコミ、労組、政党、個人の方々に送付して、解決のための働きかけを要請してきました。
また、1997年度からは「国際人権連盟」(FIDH)と「世界拷問防止機構」(WOAT)との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」による速報、2003年度からは「世界拷問防止機構」と「人間居住ネットワーク・ハビタット・インターナショナル連合(HIC-HLRN)」による共同要請速報も翻訳し、働きかけの要請を行ってきました。2007年度(2007年4月-2008年3月)は、ホームページに月平均約11,415(2006年度の月平均約17,336)のアクセスがあり、メールマガジンの定期購読者は2008年3月31日現在で189人でした。 これまでに翻訳した事件数は、2008年3月20日号現在で通算4035件です。これまで世界各地で活動するSOSトーチャーのネットワークメンバーであるNGO等の働きかけなどによって、解決された事件もありますが、依然として拷問、虐待、超法規的処刑、人権擁護活動家への人権侵害などが繰り返されているのが現状です。 こうした、厳しい状況を踏まえ、当委員会の活動を充実させるために、2007年度の報告と2008年度の活動計画をお知らせします。 |
|||
【1】2007年度のニュース(速報)の報告 |
|||
【1】2007年度のニュース(速報)の報告(資料を参照) 概要について
1.全体 2007年度は、2007年4月1日号から2008年3月20日号 まで36回発行し、40カ国(地域)における108件の速報を翻訳発行しました(2007年度は39ヶ国/地域で、105 件でした)。 事件の内容は、人権活動に関わるNGO関係者、知識人、弁護士、労働組合員および一般市民に対する恣意的逮捕および拘禁、あるいは、これらの人びとの隔離拘禁、逮捕時や拘禁中における虐待や拷問、恣意的裁判、そして超法規的処刑が大半を占めました。さらに、軍隊や警察関係者による脅迫や虐待、女性や子どもへの性暴力に関するものも多数ありました。 108件のうち「世界拷問防止機構」(WOAT/SOSトーチャー)と「国際人権連盟」(FIDH)との共同プロジェクト「人権擁護家保護のための監視機構」の速報は61件あり(追加情報含む)、「世界拷問防止機構」(WOAT/SOSトーチャー)からの速報は47件ありました。 世界的な要請行動が効を奏して釈放/改善されたケース、あるいは最初の速報から事態が進展したケースは、そのうち20件ありました。以下、地域別に分類した事件の特徴についてご報告をします。 尚、SOSトーチャー翻訳委員会では、「世界拷問防止機構」から送られてくるケースの半数以上を翻訳していますが、スペイン語やフランス語で書かれたケースを含め、すべてのケースを翻訳しているわけではないこと、また翻訳するケースを選ぶ際には近隣地域にある程度の重点を置いていることをここでご報告しておきます。 2.アジア 63件 中国では、刑期を終えた環境活動家が厳しい条件のもと釈放される事件、不当な判決のもと拘禁されている女性権利擁護者の拷問、人権を標榜する作家の恣意的拘禁、そしてオリンピックを目前にひかえた2008年になってからは、人権擁護者の恣意的拘束など、人権擁護者の人権侵害の事件が目立ちました。 韓国では、労働組合活動に取り組んだ外国人移住労働者が強制退去させられる事件が起きました。 インドでは、人権侵害を調査中のNGOに対する当局の嫌がらせ行為や人権擁護家の恣意的逮捕、先住民族の村に対する軍の襲撃事件、レイプ被害の届け出の放置(警察による)など、当局による恣意的な事件が多数起きました。 フィリピンでは、フィリピンで顕著な人権侵害パターンとなっている超法規的殺害により、農民や都市貧困層の活動家が路上で銃殺される事件が続きました。また、市の助役が執務中、部屋に乱入してきた集団に銃殺される事件が起きました。 ネパールでは政治的安定が高まったため、前年のような侵害パターンは減少しましたが、警察官による少女の集団レイプ事件をはじめ法執行職員による市民への暴力事件や恣意的な逮捕が続きました。 カンボジアでは、違法な森林伐採や先住民族の土地からの追放に反対する環境保護運動関係者への襲撃事件、組合活動家の恣意的逮捕と不公正な判決の事件などが起きました。 タイでは、人権を脅かす法案に反対した人びとが逮捕、起訴されました。 ベトナムでは、信教の自由を訴える宗教家が恣意的に逮捕されました。 ビルマでは、労働組合活動家や民主活動家への弾圧や嫌がらせの事件が起きました。 マレーシアでは、ビルマ難民が強制退去させられようとしました。また、森林伐採に反対する先住民族のリーダーが超法規的に殺害されました。 バングラデシュでは、政治的反対派のメンバーの恣意的逮捕と拷問事件が起きました。 パキスタンでは、国家人権委員会関係者をはじめ人権擁護家に対する広範な弾圧事件が続きました。 再び内戦が危惧されるスリランカでは、赤十字のボランティアスタッフが超法規的に殺害されました。 アフガニスタンでは、女性の権利擁護家の情報を流したジャーナリストが死刑判決を受けました。 3.NIS諸国 10件 ロシアでは人権NGOや新聞社が司法の嫌がらせを受けました。政治活動や人権活動に関わる人が狙撃され死亡する事件が起きました。 キルギス共和国では、国家人権委員会の委員長が襲撃されました。 アゼルバイジャンでは、政治活動家が恣意的に逮捕され拘禁中に死亡しました。 ウズベキスタンでは、人権擁護家が恣意的に逮捕された後、条件つきで釈放されました。
4.中東(北アフリカ・アラブを含む) 14件 イスラエルでは、2005年5月から起訴もなく拘禁されていたパレスチナのNGOの活動家がようやく釈放されました。その一方で西岸地区で活動するパレスチナNGOに対する移動制限や、ナルブスのNGO関係者の恣意的逮捕が起きました。 イランでは、一時帰国中のイラン系アメリカ人が数人恣意的に逮捕される事件や、女性の権利の活動家が多数逮捕される事件が起きました。 イラクでは、組合活動家がテロリスト集団と思われる一団に拘束され殺害される事件が起きました。 バーレーンでは、人権活動家たちが恣意的に拘束され拘禁中に拷問される事件が起きました。 エジプトでは、人権NGOの閉鎖命令が政府より出される事件が起きました。 サウジアラビアでは、弁護士など人権擁護家10人の隔離拘禁が続きました。 シリアでは、人権擁護や民主運動に関わる人々が集会参加を理由に多数逮捕される事件が起きました。 エチオピアでは、教員組合の活動家が恣意的に逮捕されました。 5.中南米 8件 通常はスペイン語で発表されている人権侵害の速報の一部が英語に翻訳されて送られてきています。 コロンビアでは、社会運動や反戦平和運動に関わる人々への弾圧が続き、多数の人びとが拘束されました。 メキシコでは、強制退去で50人以上の死傷者と200人の逮捕者を出す事件や、平和デモ参加者が恣意的に逮捕される事件が起きました。 アルゼンチンでは、賃上げを求める教員のデモに参加していた大学教授に催涙弾があたり死亡する事件が起きました。 キューバでは、禁錮25年の刑を受けて2003年から拘禁されている政治囚の健康が悪化しました。 ベネズエラでは、親族が殺された事件の裁判を傍聴した人が殺しの脅しを受けました。 6.中央アフリカ、南部アフリカ 9件 スーダンでは、治安部隊の過剰な武力行使で一般市民が数名殺される事件や、強要された自白を基に少年を含む多数が死刑判決を受ける事件が起きました。 カメルーンでは、恣意的に拘束されていた人権擁護グループの最後の1人が釈放されました。 ルワンダでは、政府に批判的な意見を述べたために拘束されていた教授が釈放されました。 ジンバブエでは、人権弁護士への嫌がらせが続きました。 アルジェリアでは、ある男性が恣意的に逮捕されそのまま消息を絶つ事件が起きました。 コンゴ民主共和国では、警部補が恣意的に逮捕され拷問の危険にさらされる事件が起きました。 ケニアでは、人権・平和のNGOに対する政府の弾圧が危惧されました 7.ヨーロッパ 4件 ギリシャでは、イラク難民多数が不法入国で逮捕される事件や、ネオナチを刑事告発したグループが嫌がらせを受ける事件が起きました。 トルコでは、労働組合活動家や人権擁護家が平和や人権のために行った活動を理由に恣意的に逮捕されたり、有罪判決を受ける事件が起きました。
|
|||
2008年度の取り組みとして、以下のような課題を考えています、今後ともご支援と要請行動への積極的参加をお願いいたします。 (1) 「SOSニュース」の翻訳発行を継続し、内容の充実を図る。 部落解放・人権研究所職員1名と翻訳ボランティア1名の2名で、ジュネーブから配信されてくるケースを翻訳しています。事件解決のためには迅速なケースの配信が欠かせないため、できるだけ早く翻訳してケースを配信できる方法を模索します。 先述したように、翻訳委員会ではOMCTから配信されるすべてのケースを日本語に訳しているわけではありません。2007年度は、近隣地域で起きている事件の方がその背景をよりよく理解していただいているのではないかという想定より、アジア地域にやや重点を置いてケースを選びました。その結果、アジア地域が全体の半数以上を占める結果となりました。この点については、地理的バランスを大きく欠くことのない範囲で、今年度も続けていきます。 SOSの参加者には引き続き<手紙の例文>を本文に入れ、要請された行動を起こしていただく際の負担軽減に協力していきます。要請に基づいた行動に関しては、翻訳委員会でモニターができないため、今年度は参加者の方々を対象にアンケート調査をさせていただく予定です。 改善されたケースを「グッドニュース」特集として報告する可能性を追求します。 (2) [SOSニュース]の積極的な活動紹介 要請行動後、各国当局からの返事を受けた場合など、読者からSOSニュース翻訳委員会事務局に情報提供をしてもらえるよう引き続き求めていきます。 部落解放・人権研究所のホームページに常時ケースが掲載されていることについて、さらに宣伝を広めていきます。 他団体や他の機関の新聞・雑誌などに翻訳委員会のニュースを提供し、情報活動を拡大するとともに、要請行動へのより幅広い参加を求めていきます。
(3)[SOSニュース]の配信の状況 1. 部落解放・人権研究所のホームページへの掲載 毎号、すべての事件の日本語訳と英語原文を部落解放・人権研究所のホームページに掲載しています。要請行動の例文および要請先のアドレスも掲載されていますので、カット&ペーストで活用していただけます。URL:http://blhrri.org/kokusai/sos/sos.htm 2. メールマガジンによる配信 登録いただいている読者に、毎号、事件の日本語訳と英語原文を配信しています。現在の登録人数は189人です。 3. 『法律新聞』等への掲載 週刊『法律新聞』に毎号、SOSニュースで取り上げた事件のダイジェストを掲載していただいています。 4. 個人への送付 郵送の登録をしていただいている個人の方に、SOSニュースを郵送にてお送りしています。 |