1、はじめに
近年、日本においてもパソコン、インターネット等の普及の中で、これらを悪用した部落差別宣伝、扇動が増加の傾向にある。
本稿は、その現状を明らかにし、根絶に向けた提言を行うものである。
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2、現状
インターネット、とりわけホームページや掲示板を悪用した部落差別宣伝、煽動は、内容から見ると、以下の3類型に分けることが出きる。
(1)被差別部落の所在地一覧を作成し流布するもの。・・・この問題は、1975年11月に発覚した「部落地名総鑑差別事件」を想起させるものであるが、営利を目的と したものでないこと、極めて多くの人びとに情報が流されていて、就職差別や結婚差別に悪用されるおそれが多分にあること等の点で遙かに深刻な問題である。
(2)特定の著名人に対して、被差別部落民であるとか在日コリアンであるとか一方的に決めつけた情報を流布するもの。
(3)「部落民を殲滅せよ」等と大量殺戮を繰り返し呼びかけるもの。これらは、人種差別撤廃条約の第4条(a)項等で禁止されている行為である。ちなみに、日本は人種差別撤廃条約には加入しているが、条約第4条(a)項は留保してい手、こうした行為を直接規制する法律は存在していない。
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3、現時点での対応
(1)部落問題に関心を持っている個人や団体が、上記のような情報をキャッチした場 合、その情報を流している個人とプロバイダーの双方に、抗議文を送付し、情報送付の停止を要請している。
(2)その結果、これらの情報送付が停止されることもあるが、中には抗議をしても聞き入れずに差別情報を流し続けている事例も存在している。
(3)さらに、迅速な対応を困難にするためにアメリカや他の国のプロバイダーを経由することによって差別情報を流しているものも出てきている。
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4、根絶に向けた政府に対する提言
(1)学校教育をはじめあらゆる教育の場を通して、インターネットは平和と人権のために使用すべきものであることを普及すること。
(2)プロバイダー業者に対して、インターネットは平和と人権のために使用すべきものであることをユーザーとの契約の中に盛り込むことを求めること。
(3)実効性のある公的苦情処理機関を設置すること。
(4)上記処理機関が指導・説得をしてもそれに従わないユーザーやプロバイダーに対しては、一定の規制を行うこと。
(5)インターネットを平和と人権の擁護に活用する取り組みを積極的に奨励・支援すること。
(6)これらの内容を盛り込んだ、法整備を行うこと。
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5、国連への要請
部落差別のみならず、他の差別に関しても、インターネットを悪用した差別宣伝、差別扇動が増加してきている現状がある。しかも、それが国の枠を越えて地球的な規模で拡大してきている。この事態を放置すれば、社会の平穏と世界の平和を脅かすおそれが多分にある。
そこで、国連としても、この問題をあらゆる機会に議論し、国際的な基準としてこの問題に関する条約を採択していただきたい。
その内容としては、上記4を含んでいただきたい。
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6、おわりに
最後に、インターネットを活用して、差別撤廃と人権確立、世界平和の実現に向けた積極的な情報の発信を強めていく必要があることを強調しておきたい。その一翼を担うために、部落解放同盟中央本部、部落解放・人権研究所でもホームページを開設し、積極的な情報発信をしていることを紹介しておきたい。
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部落解放同盟中央本部のホームページ
社団法人部落解放・人権研究所のホームページ