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掲載日:2002.8.1
以下は、部落解放同盟第59回(2002年5月)全国大会方針書の一部で、複数の地方自治体によって近年実施された部落の実態調査に現れた特徴をまとめたものです。英語による翻訳は、国連の人種差別撤廃委員会による、条約第1条の「世系/門地(descent)」という用語の意味をめぐるテーマ別討議(2002年8月)に、部落解放同盟中央本部と部落解放・人権研究所からの参考資料として提出されました。

部落の置かれている状況と差別の特徴

2002年8月1日
部落解放同盟中央本部
部落解放・人権研究所



(1)はじめに

2000年、2001年に、大阪府(2000年5月)、鳥取県(2000年7月)、徳島県(2000年9月)、香川県(2000年11月)、千葉県(2001年4月)等で実態調査が実施され、その結果が公表されています。これらの調査結果に示された、今日の部落差別の実態の特徴を以下に紹介します。

(2)住環境面の実態

  1. 同和対策事業が実施されてきた地区においては、住宅、道路、上水道を中心に部落の実態は改善されてきています。この結果、「同和対策事業特別措置法」が制定された頃に存在していた4畳半に家族が6人、火事が発生しても消防自動車が入れない、共同井戸や共同便所を利用していると言った劣悪な住環境は改善されてきました。

  2. けれども、「未指定地区」や「事業未実施地区」においては、住環境面の改善とて立ち後れています。例えば、兵庫県宍粟郡千種町のN部落は住宅の老朽化が著しいうえに墓地の中に部落があるといった劣悪な状況に放置されています。

    また、「事業実施地区」においても初期に建てられ、築後30年を経過した改良、公営住宅は老朽化していますし、現在の水準に合わないという問題が出てきています。このような住宅は、各地で2割から3割に及んでいます。このため、一定の所得を得ている人や若年層が部落から出て部落外に住宅を求める傾向が強まっています。また、下水道の整備が立ち後れているところがあります。

  3. 現在、各地区で住宅の建て替えが重要な課題となってきていますが、その際多様な年齢層と所得階層が共に暮らせる安全な住宅の建設を求めていく必要があります。このためには定期借地権付き住宅の建設など多様な手法の導入が求められています。

(3)人口・世帯構成の実態

  1. 部落の人口の減少が進んでいます。この要因としては少子化の進行とともに若年層や一定の所得を得ることができるようになった人々の部落からの流出があります。とりわけ農村地帯では、働く職場がないために若年層を中心に部落からの流出が続いています。他面、部落外から部落への流入が進行していますが、高齢者や低所得者層の比率が高い傾向が見られます。

  2. 部落では、高齢者世帯、とりわけ高齢者の単身世帯が増加してきています。また、母子・父子世帯も多いです。例えば、大阪府では、高齢者世帯が16.1%(府 11.3%)、母子世帯が2.4%(府 1.4%)、父子世帯が0.7%(府 0.2%)、香川県では、高齢者世帯が26.9%(県 14.6%)、母子世帯が4.5%(県 0.9%)、父子世帯が1.3%(県 0.3%)、徳島県では高齢者単身世帯が13.7%(県 8.1%)、母子世帯が2.8%(県 1.4%)、父子世帯が0.7%(県 0.2%)、千葉県では、高齢者単身世帯が4.3%(県 2.6%)、母子世帯が2.2%(県 1.8%)となっています。

(4)生活の実態

  1. 経済状況の悪化に伴い、部落では住民税所得割課税が減少し、生活保護受給世帯や住民税非課税世帯が増加してきています。例えば、香川県では、生活保護受給世帯が26.8%(93年調査 28.3%)、住民税非課税世帯が26.1%(93年調査 22.3%)、住民税均等割世帯が11.7%(93年調査 13.2%)、住民税所得割世帯が30.6%(93年調査 35.9%)、千葉県では、生活保護受給世帯と住民税非課税世帯が30.4%(96年調査 25.7%)、住民税均等割世帯が12.1%(96年調査 15.4%)、住民税所得割世帯が57.5%(96年調査 58.9%)となっています。

  2. 不安定就労者の増加、年金制度への不信等の理由で、年金の未加入者が増加してきています。例えば、大阪では26.2%(90年調査 20.4%)、香川では47.8%、徳島では37.0%(93年調査 33.8%)、鳥取では34.2%が年金未加入となっています。

  3. 2000年4月より、介護保険が導入されていますが、部落内ではそれが十分浸透していない状況があります。例えば大阪では、自分では介護や援助が必要であると感じているのに45.4%もの人が介護申請をしていないという実態が明らかにされています。その理由としては、制度が複雑でわかりにくいこと、利用料の負担感、家族介護への依存、過去の福祉サービスを受けたときの不愉快な思いなどがあるものと思われます。

(5)雇用の実態

  1. 経済状況の悪化に伴い、失業者が増加してきています。これは中高年層のみならず、若年層にも現れています。例えば大阪では、失業率は男性で9.7%(府男性 6.6%)、女性で8.2%(府女性 5.6%)、20〜24歳の男性15.0%(府男性20〜24歳 9.9%)、20〜24歳の女性で16.9%(府女性20〜24歳 8.9%)となっています。

  2. また、雇用形態をみても、常雇が減少し、臨時で働く人が増加してきています。例えば香川県では、常雇が54.6%(93年調査 55.2%)、臨時が17.4%(93年調査 12.4%)、徳島県では、常雇が56.3%(93年調査 58.2%)、臨時が11.4%(93年調査 7.6%)となっています。

(6)産業の実態

  1. 部落の就労状況を産業別に見た場合、建設関係の比重は高く、香川22.9%(県 10.4%)、徳島21.9%(県 12.1%)、鳥取30.7%、千葉13.3%となっています。しかしながら相次ぐ公共事業の削減、大手民間企業の低迷により、部落内の建設業は厳しい状況におかれています。部落内の建設業は、下請け・孫請けが多く、仕事量の減少はすぐさま倒産・人員削減となって現れます。特に高齢者・女性にリストラが集中しています。

  2. BSE(牛海綿状脳症)問題の発覚により、畜産、屠場、食肉、レンダリング関係の業者、さらにはそこで働いている人々は倒産やリストラなど深刻な打撃を受けています。BSE問題は、基本的には農水省の失政によって惹起した問題です。このため国は、製造中止・出荷停止措置に伴う買い上げ措置を行うとの態度を表明していますが、なかなかそれが実行に移されていないと言う問題があります。

  3. 一方、大阪や高知など各地で、福祉、教育、まちづくりに関わった法人やNPOを立ち上げ、そこで雇用される人々が生まれて始めてきています。

(7)教育の実態

  1. 高校への進学状況を見ると、「特別措置法」が制定された頃の全国平均の半分程度しか高校へ進学していなかったという状況が、今日、4ないし5ポイント差まで接近してきています。これは、特別の奨学資金が整備されてきたことの成果です。けれども、中退率が平均の2倍から3倍あるため、卒業時点では10ポイント程度較差が存在しています。

    大学進学も高まってはきていますが、全国平均の6割程度にとどまっています。長期不況下で特別の奨学資金が廃止され、これに変わる適当な一般施策としての奨学資金制度が整備されなければ再び部落の高校、大学進学率は低下するおそれが濃厚です。高校奨学資金については同和対策の「特別措置」と実施されてきた施策を一般施策へと拡充することに成功しましたが、一般施策としての奨学金制度の充実を求めていく必要があります。

  2. 一方、中途退学者のなかで再度学習したいという意欲が強いことが明らかになっています。例えば、大阪の実態調査結果では、仕事上の不利益解消のため、自分自身の成長のため、など再学習への期待を持つ地区の中退者は3割を超えています。特に、再学習への期待は30歳代では過半数を超えており、これら再学習意欲に応えるための機会の提供が求められています。

(8)情報格差の実態

 パソコンの保有状況やインターネット等の利用状況において明らかな較差があります。

例えば、大阪の調査では、部落内でのパソコンの普及率は22.3%にとどまっており、全国の38.6%比して大きな開きがあります。また、インターネットの利用率においては14.4%と全国の28.9%の半分にとどまっています。部落の場合、若年層の比率が少なく、高齢者の比率が高いという事情はあるものの、21世紀は情報化社会であるといわれているなかで、隣保館等でのパソコン教室の開設など情報格差を克服していく手だてを講じることが求められています。

(9)隣保館の利用状況

  1. 全国におよそ1000館存在している隣保館は、今後、部落解放、人権のまちづくりに取り組んでいくうえで重要な役割を果たしていく必要があります。その点では、各地で、隣保館を増改築しデイサービス等を始めているところがでてきていることは注目されます。

  2. また、人権教育・啓発に関する情報を発信し、周辺地域住民にも開かれた講座等を提供するとともに、部落と周辺地域住民との交流を促進するための企画を実施している隣保館も増えてきています。
  3. さらに、隣保館の名称が、人権文化センターや人権のまちづくりセンター等へ変更されるところが増えてきています。

  4. しかしながら、隣保館の職員数や隣保館の運営活動費が、新たな活動に見合ったものとなっていないという問題があります。さらに、一部では職員や予算を削減し、隣保館を部落差別撤廃・人権確立とは全く関係のない施設へと変更してしまおうとする危険な動きも生じてきています。

(10)被差別体験と対応の状況

  1. 結婚については、多くの人々の努力によって、部落と部落外との結婚は増えてきています。けれども、その際、結婚差別を受けている人も少なくありません。また、結婚差別によって結婚に至らなかった例も少なくありません。例えば大阪の調査では、部落と部落外の結婚をしている夫婦の2割が差別に出会った経験を持っています。また、破談経験を持つ地区出身者の実に2人に1人が、その際、部落問題が関係していたと答えています。

  2. 部落出身者との結婚に際して反対の意志を示す親も少なくありません。例えば、徳島県の調査では、「子どもの意志を尊重する」が43.2%(93年調査 31.3%)、「親としては反対だが子どもの意志が強ければ尊重する」が 43.4%(93年調査 52.2%)、「家族などの反対があれば認めない」が8.3%(93年調査 10.2%)、「絶対に認めない」が5.2%(93年調査 7.3%)となっていて、若干の改善はみられるものの依然として厳しい実態にあることが分かります。

  3. 未婚者についても、部落出身者との結婚に対する差別的な意識は、根強いものがあります。例えば、徳島県の調査では、「自分の意志を貫く」が29.9%(93年調査 29.1%)、「親の説得の後に、結婚する」が24.6%(93年調査 14.2%)、「家族の反対があれば結婚しない」が13.3%(93年 22.0%)、「絶対結婚しない」が5.2%(2.4%)となっています。

  4. 被差別体験の有無をみると、およそ3人に1人が被差別体験があると回答しています。その内訳を見ると、恋愛・結婚、職場、隣近所、学校、就職等で受けた差別が多いことが分かります。例えば大阪では、28.1%の人が「差別を受けたことがある」と回答しており、その内訳をみると、「結婚」が24.7%、「職場」が16.5%、「学校」が16.3%となっています。

    香川では、「差別を受けたことがある」が43.8%で、その内訳は、「結婚」が27.5%、「地域」が20.7%、「学校」と「職場」がそれぞれ15.7%、「就職」が13.2%となっています。徳島では、「差別を受けたことがある」は32.4%で、その内訳は、「結婚」が27.1%、「職場」と「地域」がそれぞれ21.3%、「学校」が11.2%、「就職」が9.8%となっています。鳥取では、「差別を受けたことがある」は41.7%で、その内訳は、「結婚」が25.5%、「職場」が25.3%、「地域」が22.8%、「学校」が14%、「就職」が5.5%となっています。

  5. しかも被差別体験の時期を「この5年以内」と回答している比率も、およそ3分の1から4分の1を占めています。例えば、大阪では28.9%、香川では24.7%、徳島では27.9%、鳥取では、19.7%となっています。

  6. 被差別体験を持つ人の対応をみたとき、黙って我慢した人が半数近いという状況があります。また、地方法務局の人権擁護課や人権擁護委員等に相談した人は、きわめて限られています。さらに、わが同盟を始めとした民間運動団体に相談した人もそれほど多くないと言う問題があります。

    例えば大阪では、「黙って我慢」が38.5%、「行政に相談」が1.2%、「運動体に相談」が7.7%、香川では、「黙って我慢」が54.4%、「法務局や人権擁護委員に相談」が0.9%、「市町村行政に相談」が3.4%、「運動団体に相談」が2.1%、徳島県では、「黙って我慢」が51.8%、「法務局や人権擁護委員に相談」が1.0%、「市町村行政に相談」が2.0%、「運動体に相談」が2.9%、鳥取では、「黙って我慢」が44.3%、「法務局や人権擁護委員に相談」が0.7%、「市町村行政に相談」が2.2%、「運動団体に相談」が2.8%、千葉の場合では、「黙って我慢」が34%、「行政機関」が1%、「運動体に相談」が14%となっています。

(11)差別事件の状況

  1. 結婚に際しての身元調べもあとを絶っていません。例えば2000年12月には、長野県上田市にある興信所が、新聞の折り込み広告に、「結婚等の身元調査、先祖の疾病有無調査」を実施すると明記していたことが発覚しています。

    岡山では、2001年11月15日、興信所による身元調べの結果、結婚差別を受け破談になったMさんから、その事実を告発する投書が、県連に届いています。その投書によれば、結婚を約束していた男性側の両親の態度が一変し、職場にまで嫌がらせの電話があり退職にまで追い込まれたこと、その調査をした興信所が「岡山でこの手の調査をするのはうちだけ」と高額の調査料を請求していた事実が記されていました。

  2. 差別落書き、差別投書、差別電話、インターネットを悪用した差別情報の流布が続いています。例えば、2001年2月から5月にかけて、兵庫県連や新潟県連、栃木県連宛に、横浜市南区の住所とK名で、「結婚相談」を装い「相談に音沙汰のない、汚い同和の畜生たち」などと書かれた差別ハガキが郵送されるという事件が生起しています。横浜市がKさんに事情を確かめたところ、Kさん自身身に覚えのないことで、Kさん自身もさまざまな嫌がらせを受けていることが判明しています。

    この事件と同様の事件として、2001年11月2日には、岡山県連に「オマエラ、シンヘイ同和(エタ・非人)ノ集マリヤロ、犬畜生が、・・・」などと書かれた差別ハガキが郵送されてきています。差出人は、実在する人物名のAさんとなっており、調査の結果、Aさんに対しても嫌がらせのハガキが多数送られている実態が明らかになってきています。

    東京では日本橋郵便局館内の郵便ポスト2カ所に「エタ」、「東京中央 エタバカ」などの悪質な差別落書きが書かれていることを2001年10月27日、同郵便局職員が発見しています。

  3. とりわけ、インターネットを悪用した差別情報の流布には、部落の所在地一覧を掲示するもの、特定の著名人を名指しで部落民であるとか在日コリアンであるとか一方的に決めつけるもの、「部落民を皆殺しにせよ」等の差別扇動をするものが含まれています。

      昨年8月から9月にかけて南アフリカのダーバンで開催された反人種主義・差別撤廃世界会議で採択された「宣言」と「行動計画」のなかでも、インターネットを悪用した人種主義に基づく差別宣伝、差別扇動の増大に対して懸念を表明し、法的規制の必要性が盛り込まれています。

  4. また、明らかな差別行為をしているにもかかわらず、運動体のみならず関係行政機関等が差別の停止と反省を促しても聞き入れず差別を継続する事件が続いています。例えば、大阪府岸和田市の住民は、自宅に部落差別につながる内容の看板を立てかけ、関係者の度重なる説得にも全く耳を貸さないと言う事態が、1993年から続いています。

  5. 近年、三重、熊本、東京、千葉、広島県等で、裁判で差別の不当性が認められた事例が続いています。例えば、2001年1月12日には、東京地裁が、元慶応大学生による連続差別脅迫ハガキ事件に関して懲役1年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決を行っています。この判決のなかでは、「加えて、本件によって、ハガキを送付された被害者はもとより、その家族及び関係者らに与えた精神的苦痛も大きいうえ、本件は、新たな部落差別を助長しかねない犯行と言うべきであって、社会に与えた影響も軽視できない」と部落差別との関係に言及しています。
      
      また、2001年11月末には、「呉離婚強要差別事件」に関する9年間に及ぶ裁判で、差別者側から訴えられていた部落出身者側が全面勝訴しています。この事件は、部落出身を理由に結婚に猛反対されながらも、老後の不安を抱える夫の両親の面倒をみるために、京都から呉に転居したにもかかわらず、両親の差別意識や夫の変節によって、離婚の強要、家の立ち退き、慰謝料の請求など次から次へと訴訟を起こされ、9年間の長きに亘って裁判で争われてきた事件です。

      さらに、千葉県小見川町では2000年9月、町会議員の後援会機関誌に部落差別記事が掲載された事件で、千葉地方裁判所佐原支部は、2002年1月31日、記事で中傷された県連書記長らが提起した民事訴訟で、原告勝訴の判決を行い、被告らに損害賠償の支払いと謝罪広告の掲載を言い渡しています。

(12)意識調査結果

  1. 「寝た子を起こすな」、「部落分散論」、「部落責任論」など、部落問題に関わった基本的な問題についての間違った意識が依然として根強いことが分かります。例えば、徳島県の県民意識調査結果では、同和問題を解決する方策に関する回答のなかで、「そっとしておけば自然になくなる」とした回答が36.6%(93年調査 37.8%)、「分散して住めばよい」が24.1%(93年調査 24.1%)となっています。

      鳥取県民の意識調査結果では、「そっとしておけば自然になくなる」が17.6%(93年調査 21.3%)となっています。大阪府民の意識調査では、「そっとしておけば自然になくなる」との選択肢について「非常に重要」と回答した人は18.9%、「やや重要」と回答した人は18.0%で、両方合わせると36.9%に達します。また、「同和地区住民が差別されないようにもっと努力する」との選択肢について「非常に重要」と回答した人は21.8%、「やや重要」と回答した人は26.8%で、両方合わせると48.6%となっています。

  2. 結婚に際して「家柄」を気にする風潮、「世間体」を気にする風潮は根深いです。例えば、徳島県民の意識調査結果では、結婚に際して相手の家柄を気にする風潮に対する意見を求めたところ、「当然」とした回答が10.0%(93年調査 8.7%)、「おかしいと思うが自分だけ反対しても仕方がない」が19.8%(93年調査が 20.3%)、「間違っている」が65.5%(93年調査 70.2%)となっています。

  3. これまでの同和事業の成果に対する「ねたみ差別」が根強いです。例えば、鳥取県民の意識調査結果では、「同和地区だけに、ことさら特別対策をすること自体おかしい」とした回答が32.5%(93年調査 32.3%)あります。また、大阪府民の意識調査結果では、同和地区出身者に対する差別がある原因として「同和地区だけに特別の対策を行うから」と回答した人が49.9%に上っています。

  4. 人権条例や、国際人権に関する認知状況はまだまだ弱いです。しかしながら、部落解放運動の働きかけの結果、部落内の方が周知状況が高くなっています。

    例えば、大阪府の意識調査結果では、大阪府の人権条例について「内容もよく知っている」と回答した人は3.0%(部落 5.5%)、「名称を聞いたことがある」が27.5%(部落 33.5%)、部落差別調査等規制等条例について「内容もよく知っている」と回答した人は5.6%(部落 8.1%)、「名称を聞いたことがある」は28.6%(部落31.8%)となっています。また、国際人権規約については、「内容もよく知っている」と回答した人は7.6%(部落 9.4%)、「名称は聞いたことがある」は43.5%(部落 42、0%)、「人権教育のための国連10年」については、「内容もよく知っている」と回答した人は2.6%(部落 4.4%)、「名称は聞いたことがある」は18.0%(部落 19.1%)となっています。

      徳島県の意識調査結果でも県の部落差別調査規制条例について「内容もよく知っている」と回答した人は4.0%(部落 10.4%)、「内容は少し知っている」は13.2%(部落 19.3%)、「制定されたことは知っている」は26.2%(部落 24.3%)となっています。また、国際人権規約の認知状況は、13.4%(部落 18.0%)、人種差別撤廃条約の認知状況は、26.7%(部落 41.9%)、「人権教育のための国連10年」についての認知状況は、11.7%(部落 20.4%)となっています。

  5. 永年に亘って同和問題や人権問題に関する後援会や研修会が実施されているにもかかわらず1度もそれに参加していない人が3割〜5割弱います。例えば徳島県の意識調査結果では、「何回となく参加した」と回答した人は、21.0%(部落 40.9%)、「1〜2回程度参加した」が27.3%(部落 23.9%)、「参加したことはない」が47.1%(部落 24.4%)となっています。

    鳥取県民に対する意識調査結果では、「10回以上」が19.4%(93年調査 14.1%)、「5〜9回」が14.1%(93年調査 12.4)、「1〜4回」が32.7%(93年調査 32.7%)、「参加したことがない」が32.4%となっています。大阪府の意識調査結果でも、同和問題の学習状況(学校教育を含む)を聞いたところ、「受けたとこはない」と回答した人は27.3%(部落 24.1%)あります。

  6. 今後同和問題や人権問題に関する教育や啓発は重要な役割を果たしますが、現在の教育や啓発のあり方に対する批判があります。例えば徳島県の意識調査結果では、同和教育に関する意見を求めたところ、「全ての学校でやるべき」との回答が38.3%(部落 44.9%)、「全ての学校でやるべきだが進め方に問題がある」が9.5%(部落 15.1%)、「やらない方がよい」が13.4%(部落 11.6%)となっています。

    また、「今後の同和問題の教育や啓発のあり方について」意見を求めたところ、「人権問題全体の一環として行う」と回答した人が45.2%(部落 28.6%)、「他の人権問題についても積極的に行う」が17.6%(部落 33.4%)、「同和問題については特に重点的に行う」が3.0%(部落 12.1%)となっています。大阪府の意識調査結果でも「同和問題学習を受けた感想」について、「受けてよかった」が51.0%あるものの、「内容を改善すべきと思う」が26.1%、「受けない方がよかった」が7.2%となっています。

  7. 同和問題や人権問題に関する教育や啓発に積極的に参加している人の意識は変わってきています。例えば、鳥取県民の意識調査結果では、「子どもの結婚相手に身元調査を行うことについて」の回答を、講演会・研修会参加状況別にみたとき否定的な回答は、「10回以上」では60.9%、「5〜9回」では49.1%、「1〜4回」では44.3%、「参加したことがない」では40.2%となっています。同様に「部落差別をなくすために真剣に取り組みたい」についての回答状況を見ると、「そう思う」との回答が「10回以上」で71.6%、「5〜9回」で54.8%、「1〜4回」で41.7%、「参加したことがない」で34.6%となっています。

  8. 部落差別を撤廃していくうえで、部落と部落外の積極的な交流が重要な役割を果たしていきますが、このことに関して積極的な回答が寄せられています。例えば、大阪府の意識調査では、同和問題解決に「重要だ」と思うことについて、「同和地区と周辺地区の人々が交流を深め、協同して「まちづくり」を進める」との選択しに対して、「非常に重要」と回答した人が34.6%(部落 38.5%)、「やや重要」が30.3%(部落 26.3%)と合計64.9%(部落 64.8%)もの人々が賛意を示しています。

  9. 部落差別以外の差別や人権問題に対する関心が高まってきています。例えば鳥取県民意識調査結果では、「同和問題や人権問題について知りたいことがら」を尋ねたところ、部落問題については、「部落差別の現れ方や差別事象」と回答した人は19.3%、「同和問題を解決するための行政の仕組みや事業の現況」が17.8%、「同和問題の歴史」が17.0%等でした。

    部落問題以外のテーマとしては、「個人のプライバシー」が26.2%、「障害者の人権」が25.5%、「女性の人権」が22.6%、「子どもの人権」が21.4%、「高齢者の人権」が21.2%、「病気にかかっている人の人権」が15.1%、「世界人権宣言や国際人権規約など人権の理念」が12.1%、「外国人の人権」が8.9%となっています。


(13)部落の女性がおかれている実態

近年、国連等においても「複合差別」の問題が深刻な人権問題として注目されるようになってきています。そこで、部落の女性がおかれている実態をみたとき、識字、教育、雇用等の実態面で厳しい実態が明らかになっています。

  たとえば、大阪の実態調査結果で「読むことに関する識字状況」をみると、「読むことが困難」と答えた人は、女性13.0%(男性 7.4%)、「書くことに関する識字状況」をみると、「書くことが困難」と答えた人は、女性16.8%(男性 11.5%)となっています。

  また、最終学歴をみても、「不就学」が女性6.4%(男性 3.1%)、「初等教育終了」が女性49.7%(男性 49.4%)、「中等教育終了」が女性32.3%(男性 31.0%)、「短大・高専」が女性9.5%(男性 6.0%)、「大学」が女性4.0%(男性 6.3%)となっています。

  さらに、被雇用者の給与形態でみたとき「月給」が女性50.8%(男性 64.6%)、「日給月給」が女性11.3%(男性 17.8%)、「日給」が女性4.8%(男性 8.4%)、「時間給」が女性30.3%(男性5.6%)となっています。

(14)各地、国のレベルでの実態調査実施を

  1969年に同和対策事業特別措置法が施行されて以降33年間に及ぶ同和対策事業の実施によって、住環境面の改善を中心に部落差別の実態は一定改善されてきました。しかしながら、長期不況の進行、小泉内閣による構造改革の強行、一般施策の受け皿を準備しないままでの「特別措置」の終結、といった部落を取り巻く情勢の激変のなかで、部落の実態は急激に変化してきています。このため、各自治体に働きかけて早急に実態調査の実施を求めていくことが必要です。また、1993年以降実態調査を実施していない国に対しても、ねばり強く実態調査の実施を求めていく必要があります。

(出典:部落解放同盟第59回全国大会方針書より)