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国連文書・訳文
 
掲載日:2002.9.10
日本に関する記述に対する訂正、追加、要望

2001年7月25日

部落解放同盟中央本部
部落解放・人権研究所

 

 「職業と世系に基づく差別」についてのグネセケレ委員の報告書作成に敬意を表します。日本の部落差別並びに「最終意見」について、訂正、追加、並びに要望を提出しますので、よろしくご検討下さい。

úJ 日本の部落差別について

40パラグラフ

1. 400年前に始まったのは、近世封建社会である。(訂正)
2. 「穢多」、「非人」の携わった職務に「見張り番」とあるところを「下級警吏」に訂正
3. 「穢多」の仕事にも、「刑執行官」を追加すること。
4. 「非人」の仕事に「物貰い」を追加すること。
5. 現在では、「非人」身分のひとびとやその子孫の大半は、身分差別から解放されているので、元々は「穢多」や「非人」の人びとの一部と、と訂正すること。

【注】以上の訂正は、部落史を研究している寺木伸明桃山学院大学教授の指摘による。

41パラグラフ

1. 1965年の政府報告書ではなく、内閣同和対策審議会答申と訂正すること。

2. 「部落差別の範囲を分析し」を「部落差別をはじめあらゆる差別を撤廃し人権を確立するため」と訂正すること。

42パラグラフ

1. 英文のミス  inをisとすること。

2. 部落の人びとの生活水準は、改善されてきているが、課題がなくなったわけではない。例えば、高校進学や大学進学においてもまだ開きがある。したがって、「一定改善されてきている」と訂正すること。

3. 部落地名総鑑は、被差別部落の所在地のリストであって、部落民のリストではない。したがって、「部落世帯のリストを、居住者の名前を付けて印刷し」を、「部落の所在地のリストを印刷し」と訂正すること。

4. 部落地名総鑑の販売や企業による購入、就職差別を禁止した法律は、日本には存在していない。それ故「政府は、このような活動を規制する法律を制定していないため」と訂正すること。

5. 現行の「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」が、2002年3月末で期限切れを迎える。その後の部落差別撤廃に向けた方策を検討するためには、部落の実態調査が不可欠であるが、2001年7月現在それがなされていない。(ちなみに、1993年に政府によって行われた部落実態調査が最も新しい調査である。)

このため、実態調査の必要性を指摘していただきたい。

6. また、「地対財特法」期限切れ後の、部落差別撤廃に向けた国の戦略が明確にされていない。さらに、部落差別撤廃に向けて総合調整、企画立案のための政府のセクションも現在では総務省の中の地域改善対策室として存在しているが、法期限後は廃止される予定である。このため、「地対財特法」期限切れ後の、部落差別撤廃に向けた国としての明確な戦略を示すことと、部落差別撤廃まで総合調整・企画立案機能を持ったセクションを政府の中に設置しておくことの必要性に言及していただきたい。

7. ちなみに、2001年3月20日、人種差別撤廃委員会から日本政府の第1・2回報告書の審査を踏まえた「最終所見」が示された。この中で、部落差別は条約第1条の定義の中にあるdescentに含まれること、次回の報告書には、部落のひとびとか置かれている実態とともに、2002年3月以降の部落差別撤廃に向けた政府の戦略を報告することが求められている。今回の報告書に、この点についても言及していただきたい。

úL 最終意見への要望

1. グネセケレ報告に対して、再度敬意を表したい。しかしながら、この報告書自身にもあるように、この報告は「序論」にすぎず、更なる調査と研究に基づく提言をしていただきたい。

2. その際、可能な限り現地を訪問し、「職業と世系に基づく差別」に苦しむ当事者、身分差別撤廃に取り組むNGOや研究者と直接会って情報収集をすることを要請する。(日本の部落差別に関する調査には、部落解放同盟や部落解放・人権研究所は、全面的に協力をする用意があります。)

3. 今回の報告で触れられなかったアフリカ、南アメリカにおける「職業と世系に基づく差別」も是非カバーした報告書を作成していただきたい。

4. さらに、「職業と世系に基づく差別」を撤廃するために求められる、最低限の方策に関する提言も含んだ報告書をまとめていただきたい。

以上