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国連文書・訳文
掲載日:2002.12.24
国連                                         (A/56/114-E/2001/93)

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総会
経済社会理事会
                                                配布:一般
                                                2001年6月20日
                                                原文:英語

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国連総会                              経済社会理事会
第56会期                              本会議2001
準備リストの項目121*                      準備された議題の議題項目14(b)**
世界の社会状況、若者、高齢化、                社会と人権に関る問題:社会開発
障害者と家族に関する問題を含む社会開発




国連識字の10年の起草提案と計画


国連事務総長による覚え書き

国連事務総長はここに、ユネスコ事務局長のレポートと共に、
国連識字の10年の起草提案と計画を提出する。



  * A/56/50
 ** E/2001/100




国連識字の10年の起草提案と計画

はじめに

1.  第54会期国連総会は、国連識字の10年を想定した決議(2000年1月20日の決議54/122)を採択した。この提案は最初、CONFINTEA V (第5回 成人教育国際会議、1997年 ハンブルグ)に提出され、2000年、ダカールの世界教育フォーラムにおける円卓会議で支持され、そして、ジュネ−ブでの2000年国連総会特別会期で再度強調された。

2.  ダカールで開催された世界教育フォーラムで、国際社会は次のことに取り組むことを約束した。2015年までに、すべての子どもたちが質の高く、かつ無償の初等義務教育にアクセスでき、また修了できるようにすること。成人の識字のレベルにおいて50%の向上を達成すること。重要性を損なわないでより一般的に言えば、これらの目標は、社会開発世界サミット(1995年)のコペンハーゲン宣言の一部であり、社会開発サミット後の5年を記念した国連総会特別会期で再確認された。この目標を達成するためには、それまでに1億1300万人の子どもが質の高い学校教育環境に囲まれ、約5億人の若者と成人が日常生活において読み書きの技術を習得する必要がある。

3.  8億8000万人の非識字の若者と成人がおり、1億1300万人の不就学の子どもがおり、彼ら/彼女らが毎年、世界の非識字の統計を存在たらしめている。彼ら/彼女らは最貧困層にある。非識字の成人の3分の2と不就学の子どもの60%が女性である。世界の低開発国のなかで、識字率が最も低いのは、サハラ以南のアフリカ(平均57%)と南西アジア(平均58%)であるが、約6億の非識字の若者と成人が、9つの大国−合わせると世界の人口の半分以上を占める−に存在している。非識字の分布が、社会的、性的、民族的不平等の分布と重なりあうという事実により、識字のための闘いは単に教育的成果のためだけでなく、社会的正義と人間の尊厳、エンパワーメントのための闘いとなる。2000年9月、国連ミレニアム宣言は、それらを受けて、女性と女児の教育に特別の重点をおいた。また、2000年9月の国連総会決議55/586「国連貧困撲滅のための第1次10年の実施に向けて」は、これら貧困の中で暮らしている人々のエンパワーメントにおける、定型・非定型教育と、トレーニングと基礎教育の果す決定的な役割を強調した。識字は持続的な学びと暮らし、また教育の機会に通じる扉である。

4.  「万人のための教育(Education for All: EFA)」の枠組みのもと、1990年代を通じて子どもに関して、また初等教育の面で重大な努力がなされてきたが、完全識字普及にむけた展望は明るくない。

・ 子どもの初等教育への就学 およそ8200万人分増加

・ 発展途上国全体で平均純就学比率が80パーセントを超過

・ 多くの地域で、初等教育の就学面で性の平等に関してゆるやかな前進がみられた。

1998年の女子学生が1990年に比べて4400万人多い。 

・ 反復と中途退学率が減少した。

・ 幼児期のケアと教育がゆるやかながら、主に都市部において増大した。

   6歳未満の8000万人以上の子どものうち、何らかの幼児教育の恩恵をうけているのは、3分の1に満たない。

・ 全体の成人識字率が、男性で85%、女性で74%にまで上昇した。しかし、これは成人 非識字率を1990年レベルの半分にまで減らすという目標にほど遠い。

・ 非定型教育と技術訓練の伸びが低調である。

5.  ユネスコの推計によれば、現在の動向が続けば、2010年までに成人の非識字者人口は8億3000万人になり、割合でいうと20%からわずかながら17パーセントに減少する。(単純にいえば、6人の成人のうち1人が非識字)一方、子ども、若者、成人の識字の基本的要求を満たすためには、これまで以上に複合的な努力が求められる。なぜなら、現代社会か要求する教育レベルが増進すると共に、新しい情報コミュニケーション技術の出現を含めた、識字のより高度な適用が求められる状況にあるからだ。

6.  情報や知識へのアクセスと処理が、機会と成長の基盤となっている世界において、上記のような状況は受け容れがたいものだ。識字の10年は、変革への決定的な窓を開く。ダカールでの約束への取り組みに、さらなる力を与えるチャンスだ。このチャンスが逃されてはならない。識字の10年は、率における国際的な目標に到達することと、絶対数を削減することの両方に通じる施策と資源を投じるという挑戦に立ち向かわなければならない。現在の傾向に変化がおきなければ、明らかに2015年の目標に到達できないことを別表Iが示している。

7.  過去数十年間、2000年は、それに向けた人類の最も大きな望みを打ち出した、“地平線”として存在した。完全識字普及はその望みの1つであった。しかしながら、世紀が変わっても、「万人−子ども、若者、成人−のための識字」は、未だ達成されていない目標であり、絶えず動いている課題である。大掛かりな目標、不十分で平行線状の努力、不適切な資源と戦略、規模と課題の複雑さへの認識が継続的に不足してきたことの結合が、この状況を説明しているようだ。状況のいかんを問わず、過去数十年の経験から学べることは、完全識字普及の目標を達成するため求められていることは、より懸命な努力のみならず、刷新された政治的意思と、あらゆるレベルで物事を異なるやり方で実行することだ。社会開発及び「万人のための教育(EFA)」に対する、地球的規模での刷新された取り組みにおける不可欠な一部としての識字に焦点をあてた、主要な新しい世界規模のイニシアチブを通じて「万人のための識字」の目標に刷新された取り組みが求められている。

 

8.  今日の識字の政策やプログラムは、過去に支配的であった、識字に対する限定的な捉え方を超えることを求めている。「万人のための識字」は、識字に対する刷新された捉え方−識字とは文化的アイデンティティ、民主的参加、市民権、寛容、他者の尊重、社会開発、平和と成長を育むものである−を求めている。識字はある特定の年齢層、制度(例:学校教育制度)またはセクター(例:教育)に限定されると捉えられるべきではない。識字は、個人また社会生活の様々な側面と発展に関係するものであり、生涯を通じた学習のプロセスである。識字の新しい捉え方によって、実行の様式、検証と責任のプロセスとメカニズムも、新しいものが求められている。

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・ なぜ国連識字の10年なのか

子ども、青少年および大人の完全識字普及は、開発途上国と先進国の双方にとって主要な数量的および定性的課題であるから。

識字は基本的人権であり、基礎的な学習ニーズ、そして学習のための重要な礎であるから。

これまでの経験から、識字普及との闘いには、単発のプログラム、プロジェクトまたはキャンペーンを超えた徹底的、集中的そして持続的な取り組みの必要性が示されているから。

国連とその諸専門機関が、教育についての権利にアクセスするための戦略を立てる唯一の場を提供しているから。教育についての権利は基本的人権であり、特に「万人のための教育」は1990年のジョムティエンにおける「万人のための教育世界宣言」で同意され、2000年のダカールでの世界教育フォーラムにおいて再確認されている。

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目的

9.  国連は、「万人のための識字の10年」を通して、「万人のための声」、「万人のための学習」を目指している。この10年間は国際開発の目標達成をより強く推進し、現在、教育を受ける機会から疎外されている人々−最も貧しく社会的に取り残された人々−に優先的にその機会を与えるために計画されている。

(a) 「万人のための声」−グローバル化する世界において、貧しい人々と社会から取り残された人々の声はしばしば失われ、社会的存在感が薄く、政治的発言権をもたなくなっている。「万人のための識字」は今日の知的社会において、自己表現と議論への参加を可能にする決定的な手段である。基礎教育は21世紀の社会と経済活動に効果的に参加する必須手段であり(ダカールフォーラム、第6章)、識字は基礎教育への決定的な第一歩である。未来の世代における活発な市民の育成は、今日の子どものための質の高い識字学習にかかっている。文書を書くことによるコミュニケーションとしての識字は、知るということの素晴らしさおよび社会の現実を表現し共有することで人々に力を与える。そして母語やその他の言語での識字を活用するという熟慮の過程で、人々は特定の教養知識を構築し、その土地固有の新たな価値を与える。つまり、識字教育の実施により、知識はより広範囲に循環し、他の人々が持つ知識との創造的な対峙を可能にする基盤を提供することができるのである。人々は識字を通して民主主義のプロセスにおける市民としての権利と責務を執行できる活発な参加者になることができるのである。

(b) 「万人のための学習」−識字は持続可能な学習、そして「個人の能力と潜在能力を引き出す教育、学習者の個性を育成する第一歩となる。それによって学習者の生活向上と社会の変革が可能になる。」(ダカール行動枠組み、第3章)。識字により学習者である大人と子どもの双方が、異なる視野から多くの知識へアクセスできる能力をもつようになり、知識の有効性と価値を批判的に評価できるようになる。識字は万人のための生涯学習の構築および強化に役立つ。

(c) 「万人のための識字」:新たなビジョン−「万人のための声」、「万人のための学習」、「万人のための識字」を達成するためには以下の要件が挙げられる:

・ あらゆる方面からの新たな取り組み:国家政府、社会、地域コミュニティーおよび

  国際機関

・ 年齢層を越えた取り組み;これは生涯学習の基礎であり、世代間および年齢層を越

えた学習への鍵である

・ 万人を対象とした取り組み:子ども、青少年、大人、少女、少年、女性、男性、地方、都市、南・北両方に位置する国々すべて

・ 効果的で持続可能な識字レベルの保障:家庭、コミュニティー、職場、学校そして

メディアにおける識字発展へ向けた十分な環境と機会の保障

・ 識字習得だけでなく、表現、コミュニケーションおよび生涯学習の手段としての識

字の複合的かつ有意義な利用に向け活発な政策と集団的取り組みを図る。

(d)   万人のための10年−これまでの取り組みは、特定の集団に識字の機会を与え

てこなかった:女性、少女、都会および地方の貧困者、少数民族および先住民族、アクセスが不可能な地域や紛争後の地域、受刑者などその他多数の人々である。識字は、貧困者が自身の生活をコントロールする力を増大させ、貧困を緩和する取り組みの中で重要な意味を持っている。万人のための教育に対する取り組みが真にすべての人々に影響を及ぼすため、識字の10年はこれらの集団に特に力を注いでいく。

10.  現在の方針で取り組むことができなかったこれらの集団に特に重点を置いた、「万人のための識字」というビジョンに向け、これからの10年は:

(a) 識字率向上に向けあらゆる資源を投じるため、国家政府および国際社会における政 治的意思を強化する;識字の必要性に対する高い認識と拡大するその重要性に基づいて行われる;持続可能な識字の実行を保障するために、初等教育の有効性についての理解も深める取り組みを行う。

(b) 識字を推進する上で、活発かつ広範囲な参加を可能にするために、より包括的な政策作成環境を形成する。特に、最も貧しい人々や最も社会から疎外された人々にまで届き、学校および学校外という形に替わる学習方法を探るため、パートナーシップ、資源、そして革新的なアプローチを展開させる。

(c) とりわけ国家レベルでの新たな方針を考案・策定し、それにより地域の実行主体も、貧困撲滅につながる有益かつ質の高い識字能力取得の機会を提供できる力を持つようにする。

原則

11.  様々な実行主体の行動力に焦点を当て、識字の10年の多くの取り組みを連携させるための原則は次の通りである。

(a) 権利ベース:原点は学習および教育についての権利にあり、識字もそれらの権利の基本的な一部である。すべての人々は自分の目的のため読み書きをする権利を有しており、この権利は政府、市民社会および国際社会に選択の余地はなく、実現させなければならない責務である。

(b) アクセス志向:識字能力習得の機会から除外される人がないよう、たゆみない努力を行わなければならない;あらゆる種類の弊害−社会、地理、ジェンダー関連、文化、言語、民族、経済−は克服されなければならない。

(c) 貧困に焦点を当てる:識字の取り組みとは、2015年までに1日1ドル以下で生活する人の数を半数に減らすことを目的とした、統合的なアプローチの一部である。そのためには、医療、食糧生産、マイクロエンタープライズおよびスキル訓練など、他の分野との積極的なパートナーシップの発展が必要とされる。

(d) パートナーシップ重視:共同での取り組みが、最大の効果と資源の最有効利用を保障する唯一の方法である。国レベルおよび政府、市民社会、民間部門そして地域社会の間での定期的な開かれた対話の整備が求められる。

(e) 質の重視:質の高い教育のみが長期的な成果を生み出す;質の高い教育(指導、 アニメーション)、有益な教育内容および地域識字環境の推進などの基盤を活用して、識字の持続的使用が可能になる。

(f) 学習者中心:識字習得のプロセスと目標設定には、学習者である大人および子 どもの状況や特徴が考慮されなければならない;識字に対する地域の特性も理解し尊重する;複数言語を口頭で使用している場合、多言語のアプローチが必要であり、参加型学習プロセスは既存の知識の上に形成できる。

(g) コミュニティー規模:学習の機会はコミュニティー全体−子ども、大人、女性、男性、高齢者、青少年−の状況を考慮して構成する。学校および学校外教育の境界線を見直し、コミュニティー規模での学習環境促進に向け、新たなアプローチを組む。

(h) 「識字環境」:完全識字普及への取り組みは学校教育、青少年および成人教育プログラムへの参加増加のみに必要なのではなく、家庭、学級、職場、コミュニティー、図書館、校庭、運動場などにおける、十分かつ刺激的な識字環境も、識字の習得、向上および使用に必要不可欠な要素である。

(i) 効果追求:あらゆる活動は草の根レベルの効果を基に判定される;適当なサポートを伴った持続的な地域主導の識字実現は、最大効果を得ようとする機会と意識を伸ばし、学習と評価につながる。

主な実施計画

12.  「万人のための識字」達成は、利用可能な様々な学習機関やシステムを活用し、複数の異なるグループや彼らの背景を対象にすることとなる。地元、国、地域およびグローバルの各レベルに適合かつ有益な計画、内容および仕組みを作り出す必要がある。

(a) 需要と国主導の介入−識字の10年は国が先頭に立って行いながらも、上から下ではなく下から上へのアプローチが取られるべきである。統一されたグローバルな枠組みのなかで、「万人のための識字」国内計画および行動は、その国特有の状況、ニーズ、そして可能性に合ったすべての人々のための教育計画の一環として行われるべきである。どういった人々を10年間計画の対象とし優先するのか、「万人のための識字」実現に向けどの計画を採用するかは、各国、各コミュニティーが自由に決定する。

(b) 既存のシステムの活用:全ての国は、学校および学外においての識字対策およびその向上に既に取り組んでいる。新たな体制や特別なプログラムを立てるよりも、必要に応じてこれまで工夫をこらしてきた政策や教訓を整備し、既存のシステムの上に更なる強化、拡大または方向修正を行うべきである。識字の10年の活動を家庭、学校、地域や国内のコミュニティーなどの日常生活と、国際機関の政策とに合致させることが成功への秘訣である。

(c) 部門、団体そして機関を超えた取り組み−識字は個人・社会の生活や発展と様々な面で関連しており、教育だけでなく経済、社会そして文化といった分野にまたがる総合的な取り組みが必要である。さらには、識字の習得、発展そして活用の責任は、もはや一つの機関、部門または教育方式が負うものでもなく、学校あるいは学外教育のプログラムのみで達成できる課題でもない。政府、NGO、大学、公的および私的機関、そして市民社会全体を含む相補的かつ相互的活動が求められる。「万人のための識字」を強く推進するには、地域、国そしてグローバルなレベルでの広く持続的な社会的活動に支えられた大規模な取り組みが不可欠であり、教育分野だけでなく社会、文化および経済団体や政策を広く取り込んだものでなければならない。

(d) 包括的、柔軟かつ補足的な取り組み:「万人のための識字」国内計画と戦略は、市民社会からの情報提供や実施プロセスから学んだ教訓、10年間の状況の変化や発展を柔軟に受け入れていくべきである。また、最も恵まれない状況にある地域や集団に対する更なる差別を回避するため、地域間、コミュニティー間に存在する地域的・社会的不平等を是正する特別措置や資源の投入が不可欠である。

(e) 地域・コミュニティーベースの取り組み−地域レベルの行動はコミュニティーを尊重して行う。それにより:

・ 関連するすべての地域機関が取り組む、真の参加型プロセスによって意思決定がな

される

・ 計画と行動を各コミュニティーおよび地域の特徴、ニーズそして有用性に適合した

ものにする

・ 様々なコミュニティーの機関間の統一、協力そして補完が助長、具現化される

・ 自治と責務の枠組みの中で、監視と責任の所在が地域レベルで明らかに定義される

調整メカニズム

13.  「ダカール行動枠組み」は、「万人のための教育(EFA)」の目標を達成するためのプロセスは国主導で、生産的かつ相互支援を伴うパートナーシップに基づくものであることを明らかにしている。また、主な実行主体は国レベル、具体的には政府、政府系機関、市民社会、NGO、コミュニティーとその関係機関と民間部門であることを強調している。また、その他の援助機関や国連などのパートナーは、国レベルの教育的取り組みを支援・合理化するため活動する。これを受けてこの10年間は、国際社会の活力の先導的役割を果たす。

14.  主なパートナーは国レベルで次のことを行う:

(a) 各国政府:各国政府は、学校教育と学外教育の隙間を埋め、識字が基礎教育政策の中心に位置し、あらゆる年齢層を対象とすることを保障する。また、識字政策が、収入、年齢、ジェンダー、民族その他の条件から最も疎外され不利な立場にある集団に主に焦点を当てることを保障する。

(b) 市民社会:「万人のための識字」達成には、広い社会参加と責務が伴う。草の根レベルで大人および子どもと活動を行っているNGOやコミュニティー団体、家族、学校、教育・文化および宗教団体、図書館、学術・研究機関、メディア、民間企業、社会団体やスポーツクラブなどあらゆる組織が目標達成に向けてそれぞれの役割を担っていく。

「万人のための教育(EFA)」国内政策を通じて識字教育に関連するすべての実行主体を、持続的対話と政策形成において統合する基盤を作る、という提言はダカールで出されたもので未だ実現はしていないが、識字の10年を開始するにあたっての優先課題となる。

国レベルでは、より広い「万人のための教育(EFA)」の対話基盤の一環として、あらゆるパートナーが協力し識字に対する取り組みの計画、実施そして評価を行う。国および市民社会は、識字促進への関心を一新し、この真剣な活動力に不可欠なパートナーとなるであろう。

15. 国際的には、識字の10年を提言した国連決議と「万人のための教育(EFA)」プロセスの調整枠組みに則りユネスコがこの10年間の活動の先頭に立って調整を行う。その際、次のパートナーシップを基盤とする:

(a) ユネスコおよび次のようなユネスコの研究機関−ユネスコ教育研究所(生涯学習)、ユネスコ統計研究所(監視)、国際教育局(IBE)(カリキュラム)、国際教育計画研究所関連機関(訓練)−、国連児童基金(UNICEF)、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、世界保健機構(WHO)、他の国連機関および世界銀行;地域の諸機関、ネットワーク、仕組み、地域開発銀行などの機関:地域そして国際的な機関が、識字の10年で期待される成果を上げるべく国レベルでの共同・協力活動構築に努力する。

(b) 「万人のための教育(EFA)」体制(「万人のための教育(EFA)」作業グループなど)内での対話と様々な機関の専門家間の継続的な交流を通じて、地域および国際レベルの協力を強化する。各機関は識字支援の一貫した調整を保障するべく「活動の中心人物」を任命する。

期待される結果

16.  国際社会の足並みがそろった取り組みにより、識字の10年において次の7つの成果を保障する:

(a) 基礎水準の知識:特別な状況下にある女性の識字習得に対する圧迫;少数言語集団の世界的な非識字人口率;断片的に教育を受けた成人非識字者率;学校と学外境界線を確保する方法と不均衡な資源分配を是正する概案作成などの、これまで十分に対処されてこなかった問題に取り組み、「万人のための教育(EFA)」の目標達成にむけた進捗状況調査(2000年)評価の上に非識字構造の明確な理解を築く。

(b) 政策策定:「万人のための教育(EFA)」国内政策における対話を基盤とし、「万人のための教育(EFA)」国内計画の一環とする、「万人のための識字」国内計画を、政策策定および完成のための国レベルでの主導に対する地域および国際的な支持を伴う現実的な政策策定枠組みを作る。

(c) 流動化:国レベルでは、特別な識字への取り組みが必要な集団を優先し、目標を達成する。政府、市民社会、他の実行主体が協力して活動し、地域レベルではより強力な学校・コミュニティー間のつながりとコミュニティー全体の学習が実現される。

(d) 計画:国よりも小さなレベルでは多岐にわたる敏感な問題について考慮しつつ、そのような問題に対処する計画を立てる能力を増強させる。

(e) 質の向上:コミュニティーにおける識字プロセスの継続には、確かな質が重要である。学習者に提供する情報の質や、地域で入手できる資料を重視せず、識字の機会のみを倍増させるだけでは十分ではない。つまり、学校教師や教育者の訓練、特に母国語を取り入れた多言語のアプロ−チ、双方向の学習方法、日常生活を含んだ学習プロセス強化を視野に入れた学校・コミュニティー間の連携の発展など、革新的な教育学的アプローチの向上および強化は必要不可欠である。

(f) 貧困撲滅に対する効果:持続的な識字環境に必要とされる条件は、識字能力の機能的使用も促進する。文化・言語に配慮した方法を用いた識字の実践と実体が個人と社会を貧困のサイクルから脱却させることができ、更に広い社会発展の目標追及が可能になる。

(g) 情報技術の利用:2つの方法で新しい情報技術を適切かつ効果的に利用する:

(i) 国際レベル、地域そして国内レベルでバーチャルなフォーラムや討論グループを作り、実践例や識字に関する計画、問題、進行状況などの情報を交換する場とする;

(ii) 学習者レベルでは、疎外されていて貧しい集団と地域に対し、新たな技術が行き届く手段を緊急に発展・応用する必要がある。ITは、社会的・文化的環境と発展を脅かすものでなく、識字だけでなくエンパワーメントを支える学習手段として捉えられるべきである。

推奨される行動

17.  上記の結果に到達するため、次の行動が計画されている。すべての行動には期限が付けられており(可能な時間表を参照)、10年間を通して段階的に実行される:

(a) 基礎水準となる知識能力の構築:地域および国内のワークショップを通して、地域の優先課題を重視し、かつ体系および分析に主眼を置いた国内の研究能力を強化する。収集されたデータと分析結果は、どの集団をターゲットとするのか、資源が入手可能であるか、そしてニーズを明らかにし、また計画を立てる上での手段となるであろう。

(b) 政策フォーラムの組織:国内と地域の「万人のための教育(EFA)」フォーラムおよび会議で合意された政策と計画を実施すべく、共通理解、共有権をもち、集団での取り組みを構築するため、「万人のための教育」計画全体に関連して、国内における「万人のための識字」政策および計画を作成する。これらのフォーラムには政府組織、市民社会、民間部門および国際機関の地域代表が参加する。

(c) 飛躍のための専門家審議会:あらゆる実行主体と活力を流動化する。国内およびそれ以下のレベルでの専門家審議会を10年の初期段階で開催する。識字環境において有効な識字利用に対する考え方や、各実行主体が特定の状況下での有効な識字利用の実現にどう貢献できるのかなどを議論する。その要件としては、実行可能な手段と入手可能な資源の具体的な記録などが挙げられる。

(d) 戦略的実施と協力:特定の戦略計画が、教育の行き届きにくい人々に届くよう設計されている場合にのみ、「万人のための識字」の普及が可能になる。基幹研究を活用し、また政策と国の計画を基礎とし、学習と開発の文化的側面や、識字学習の問題、参加型開発における学習の役割などに取り組んでいる人々や、メディアで活動している人々(ラジオ、テレビ、報道、インターネット)など、識字関係者との集中的対話が万人のための識字普及の条件である。

(e) 質の向上ための能力構築:良質の訓練プログラム企画のための地域ワークショップの開催は、社会や機関(従来のものと最近認定されたもの)の地域知識の再確認と、自信ある文化的発言に基づいた持続可能な識字環境の促進を可能にし、そのような手法は国内の識字訓練教官の知識を向上させ、刺激を与えるだろう。

(f) 情報と交流:識字への取り組みの効果と識字環境の発展の関係は、地域や国によって大きく異なる。知識の共有、ネットワーク作り、南と南・南と北のつながりは、教育者と教官が識字促進方法の根本的違いを実感する機会となる。ユネスコは戦略的交流の機会を作り、また成功例に関するより広い情報共有を可能にするバーチャル・フォーラム((g)を参照)の利用や、他の試験的プロジェクトへの資金援助に勤める。

(g) ITの利用:

(i) ユネスコは、(ユネスコ統計研究所データベースとリンクした)識字のニーズ、識字の実践と問題点に関するデータベースと、それらをリンクしたバーチャルなフォーラムを作成する。これにより、識字関連の問題を議題とした双方向の議論が可能となる;

(ii) ユネスコは、地域の創造性や自己表現において、インターネット上の外来の情報にアクセスするだけの手段ではなく、他の協力機関と共に識字学習者と新学習者向けの学習手段としてのITの利用についての理解を築き、明確な計画を立て、多年にわたる研究・実験的プログラム実施の可能性を調査する。

(h) 祝典:10年の特徴として、国際識字デーに焦点をあてた祝典を毎年開催する。学習者、調整担当者など、関連するあらゆる参加者間の識字への活力を表現し増加させる手段とする。したがって、進展が最も明確に見える場として、国内および地域レベルでの祝典が最も重要である。祝典は、多大なニーズを覆い隠し、識字の普及と進歩に対する日頃の批判的分析をもみ消すものであってはならず、各レベルにおいて地域での重要な進展を記念し、翌年への更なる活力を生み出す機会とすべきである。

ユネスコは、ジェンダーの平等性、多様性、調整担当者と教師、創造的な書など(付録IIを参照)、識字普及の取り組みにおける特定の側面を毎年テーマとして取り上げるという特別な役割を担う。その他にも、プレスパックやテーマを絞った背景資料などを使い、地域の状況を広くメディアで取り上げるよう働きかけることなどもできる。この国際的活動は国内の業績に知名度と更なる促進をもたらすことを目的としている。地域および各国は独自の方法で地域の目的にあったテーマを選択するよう奨励される。

予想される時間表案

18.  識字の10年の2002年開始を提案する。国際識字デーは標石となり、10年間の進展を評価、批判そして祝う機会である。10年の終わりを祝う最終イベントは、2012年9月8日に開催される。

19.  行動計画は10年を通して行われる具体的かつ期限を区切ったイベントや活動を提案している。付録IIの表が10年間の段階案である。

監視と評価

20.  監視および評価は、10年間とその終わりにおいて非識字撲滅という国連の目標に対する世界の進展状況と、ジェンダーの平等性、教育についての権利、持続可能な開発の保障の一部、そして貧しく疎外された人々の生活の質の向上を評定する基準となる。そのため、監視と評価のプロセスは定期的な評定を通じて次の識字に関連する3つの側面に焦点をあてる:

(a) 識字人口の絶対数と割合の変化;

(b) 学校および学外教育の識字習得に対する相対的貢献;

(c) 人々の生活の質に対する識字の効果。

これらの指標は様々な協力機関の多様な手法と参加を必要とする。

21.  ユネスコ統計研究所は「万人のための教育(EFA)」の監視機構の下、医療指標、収入向上、政治参加、文化的自己表現などの進展についての識字の効果と業績を、他の部門と連携し確かな量的指標を立証するという特別な役割を担う。識字データは「万人のための教育(EFA)」の監視プロセスの一部として大いに利用され、10年を通して追跡調査される。

22.  効果指標の向上は定性的かつ民族学的アプローチを必要とする。ユネスコ/ユネスコ統計研究所は、他の機関や市民社会、NGO,大学、研究機関などの協力団体と協力的プログラムを組織するべきである。これらのパートナーシップは、長期的な識字の価値評価につなげるため、どの指標を出し、10年を通してどのようにデータを収集するかなどについての意見の一致に焦点を絞って行うものとする。したがって識字の経緯は、多様な事例研究、国全体の分析と地域比較にわたって徹底的に整理されるであろう。

23.  識字の10年自体の組織、プロセスとパートナーシップも中間地点と終了時に評価される。さらに「万人のための教育(EFA)」作業部会の小部会も毎年進展状況を調査し、必要ならば計画修正を提案するものとする。

24.  10年の終了時には2015年までの成人識字率の50%向上という目標に対する具体的な進歩が見られなければならない‐直線的な計画によれば、その時点で就学年齢の子どもと青少年および成人の新識字習得者の双方において、目標の4分の3に達成していなければならない。初等教育におけるジェンダーの平等性は、「ダカール行動枠組み」どおり2005年までに到達していなければならない。それに加え、多くの貧困と窮乏のサイクルからの脱出を可能にし、識字の10年が貧しく疎外された人々の生活の質に影響を与えていることが望まれる。では、どのように10年の終了後も取り組みを続けていくべきであろうか。

10年の後

25. その後の取り組みは、これらの大きな目標がどれだけ達成されたかにも大きく依存する。たとえ目標に到達したとしても、更なる多大な取り組みが必要である。10年の間に課題と取り組むための知識をどれだけ身に付けたであろうか。2012年までに識字への取り組みは次のように拡大されているべきである:

(a) より明確かつ詳細な課題の分析;

(b) より広い集団的取り組み、政治意志と成果;

(c) より強固で特定的な国内政策と計画(および計画力);

(d) より強く教育プログラムの質を重視する(教師、教材など);

(e) 学外教育を識字の取り組みの一つの柱とする総合的プログラム;

(f) ITの学習計画への導入と広い基盤での普及機能;

26. 課題が残る中、識字の10年の精神と潮流は継続されなければならない。成果を維持し、新たな取り組みを通常のプログラムと予算に組み込む。増強された力と政治的意志は更なる努力を奨励し、継続的な取り組みを可能にさせるであろう。国内レベルでの「万人のための教育(EFA)」政策、国際レベルでの作業グループそして「万人のための教育(EFA)」の目標に重点を置いたユネスコ自身のプログラムは、10年の成果によって強化され、継続的な枠組みを提供するであろう。

27. 世界中で継続的な持続可能な識字の習得と地域社会における多数の実行者があればこそ、識字の10年は効果をもたらす。自らの識字を活用し祝い、そしてそれを次の世代に引き継ぐことのできる能力を備えた社会においては、継続的な効果が示されるであろう。

28. 上記の点において、執行委員会は以下の決定を考慮する:

執行委員会は、

1. 159EX/決定 7.1.3を想起し;

2. 文書161 EX/7を精査し;

3. 2000年4月ダカールにおける世界教育フォーラムでの決定をさらに想起し、

4. 学校および学外教育、生涯学習そして社会開発を含む基礎教育における識字の中心的役割を認識し;

5. グローバルな規模および協調された中で、「万人のための教育(EFA)」の不可欠な要素としての識字を再び強調する緊急の必要性を明確に理解し、

6. 第56回国連総会議題に掲げられる国連識字の10年に対する特別の留意と支援を加盟各国に求め;

7. 事務局長に、第161回執行委員会における同委員会の意見および所見を考慮し、経済社会理事会を通して第56回国連総会への国連識字の10年行動計画案の提出権限を授与する。


翻訳:安田 朋子 / 世界人権宣言大阪連絡会議