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国連文書・訳文
掲載日:2002.12.24
国際連合                                            A/RES56/116
総会
                                                配布:一般
                                                2002年1月18日


第56会期
議題項目108



総会採択決議

(第3委員会の報告を基に[A/56/572])

56/116. 国連識字の10年:すべての人々に教育を


総会は、

世界人権宣言1、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約2、そして子どもの権利条約3において、すべての個人の教育についての権利は譲ることができないと認識されていることを想起し、

また、1990年を国際識字年として宣言した1987年12月7日の総会決議42/104と、国連事務総長に、ユネスコ事務局長と加盟国およびその他関連する組織や機関と協力して、国連識字の10年の提案を、世界教育フォーラムおよび社会開発世界サミットの5ヵ年レビューのための総会特別会期から出た結果を基にした行動計画の草案と、その10年の可能な時間枠と共に、総会第56会期に提出するよう要請した1999年12月17日の総会決議54/122を想起し、

1995年1月1日から始まる10年を国連人権教育のための10年として宣言し、すべての政府に非識字を根絶することになお一層励み、教育を人間の全面的な発展とすべての人の人権と基本的自由の尊重の強化に向けるよう訴えた1994年12月23日の決議49/184を再確認し、

教育についての権利に関する2001年4月20日の国連人権委員会決議2001/294に留意し、

加盟国が、2015年までに、世界各地の子どもたちが、少年も少女も等しく初等教育を修了できるようにし、少女と少年があらゆるレベルの教育に平等にアクセスをもつようにすると決意した、2000年9月8日の国連ミレニアム宣言5 − その宣言からすべての人々の識字を促進するための新たな誓約が必要とされていることを想起し、

また、社会開発に関するコペンハーゲン宣言6と社会開発世界サミットの行動計画7、および総会第24特別会期から出た、“社会開発世界サミットとそれ以降:グローバル化する世界における万人のための社会開発の達成”8と題した文書を想起し、

識字は、すべての子ども、若者および成人が、生きていく中で直面する困難に立ち向かうことを可能とする大切な生活スキルを修得する上で決定的に重要であり、21世紀の社会および経済に効果的に参加するために不可欠な手段である基礎教育の基本的ステップに相当することを確信し、

特に少女たちにとって、教育についての権利の実現は貧困撲滅に貢献することを確認し、

「万人のための教育」の目標達成に向けた進捗状況調査(2000年)に向けてとられた、国内および地域レベルの活動を認め、あらゆる年齢層の人々、とりわけ少女と女性の、ベーシックニーズを満たすために努力を倍加する必要性をさらに強調し、

基礎教育にみられる重要な前進−とりわけて教育の質の向上に力点が置かれたことによって初等教育の就学率が上昇した−にもかかわらず、主要な問題−新たに出現している問題と継続的な問題の両方−は、今もって執拗であり「万人のための教育」の目標を達成するために、国内的かつ国際的レベルでのより強力で一致団結した行動が求められることを認識し、

世界の成人の非識字者の3分の2近くが女性であるという事実が示すように、教育におけるジェンダーギャップが執拗に存在することに深く憂慮し、

加盟国に、国際組織および非政府組織との緊密なパートナーシップのもと、すべての人々の教育についての権利を促進し、すべての人々に対する生涯教育の条件を作り出すよう促し、

1. ユネスコ事務局長の“国連識字の10年の起草提案と計画”9と題した報告に留意す

   る。

2. 2003年1月1日から始まる10年を国連識字の10年として宣言する。

3. 2015年までに成人の識字レベルを50パーセント向上させ、教育の質を高めること

   を誓約した、世界教育フォーラムで採択された「ダカール行動枠組み」10を再確認す

   る。

4. ジェンダーを特に意識した教育対象とプログラムを含む、明確な目標とタイムテーブルを設定しながら、「ダカール行動枠組み」に沿った国内行動計画を作成することにより、「万人のための教育」の目標を実現するための独自の目標を達成し、すべてのレベルの教育におけるジェンダー格差をとり除き、女性と少女の非識字をなくし、完全で平等な、教育へのアクセスを少女と女性がもつようにするため、すべての政府に努力を倍加させることを要請するとともに、地域社会、協会、メディアおよび開発機関と積極的に協力することによって、そのような目標を達成することをすべての政府に要請する。

5. また、すべての政府に、10年の目標を達成するために、政治的意思を固め、より包

   括的な政策策定環境を発展させ、最も貧しく最も社会から疎外された集団に対する   取り組みと、学習のための代替可能な定型および非定型アプローチの模索を可能   にするための革新的な方策を工夫するよう要請する。

6. すべての政府に、識字への取組みの政策策定、実施および評価に関する持続的対話

   に、関連する国内の実行主体すべてを集め、国内レベルでの10年の活動の調整を先

   頭に立って行うよう要請する。

7. 「万人のための識字」は、すべての人々に基礎教育を保障することの根幹であり、識字教育環境を整えることが貧困の撲滅、幼児死亡率の減少、人口増加の抑制   そして男女平等を実現させ、持続的発展と平和と民主主義を保障するために必須の

   条件であることを再確認する。

8.  すべての政府と、経済や金融の国内および国際組織および機関に、識字率を高め、

   「万人のための教育」の目標と10年の目標を達成する取り組みに、適切であれ   ば、特に20/20のイニシアチブを介して、さらに大きな財政的および物質的支援を

   提供するよう要請する。

9. 加盟国、国連システムの専門機関およびその他の組織、さらには、関連する政府間組織および非政府組織の活動を、より効果的に調整し、10年の枠組内でそれぞれが行う発展への貢献を高めるために、それらの組織が「万人のための教育世界宣言」11、「ダカール行動枠組み」、そして最近の主要な国連会議やその5ヵ年レビューで行なわれた識字促進の誓約や勧告を効果的に実施する努力を、あらゆるプロセスで進行中の教育を補完し、それらと整合性をもたせるような方法で、さらに高めるよう勧める。

10. ユネスコは10年の枠組において、国際レベルの活動を刺激して促進する調整役を

   担うべきであると考える。

11. 事務総長に、ユネスコ事務局長と協力しながら、第57会期の総会提出に向け、目

   標設定が明確で行動指向型の行動計画を作成して完成させるために、10年の計画草

   案に関する意見や提案を政府および関連する国際組織から求めて、検討するよう要

   請する。

12. 第57会期の暫定的議題に、“国連識字の10年”という題の議題を含めるよう決定

   する。

第88本会議

2001年12月19日


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1 決議217 A (III)

2 決議2200 A(XXI), 付録参照

3  決議44/25, 付録参照 

4  経済社会理事会公式記録、2001年補足No.3(E/221/23)第II章、セクションA参照

5  決議55/2参照

6  1995年3月6〜12日、コペンハーゲンにおける社会開発世界サミット報告(国連刊行物、Sales No.E96IV.8)、第I章、決議1、付録I

7  同、付録II

8 決議S-24/2, 付録

9 A/56/114-E/2001/93およびAdd.1参照

10 ユネスコ、世界教育フォーラム最終報告、セネガル、ダカール、2000年4月26-28日参照

11 「万人のための教育世界会議:基本的な学習ニーズを満たす」最終報告、1990年3月5-9日、タイ、ジョムティエン、万人のための教育世界会議の機関間委員会(国連開発計画、ユネスコ、国連児童基金, 世界銀行)、ニューヨーク、1990年、付録I

翻訳:小森 恵/世界人権宣言大阪連絡会議