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国連文書・訳文
掲載日:2003.3.20

(人種主義・人種差別・外国人排斥および関連のある不寛容に
取り組むための)国内行動計画のためのガイドライン



ヨーロッパのNGOコーカス

目次

1.ICAREとは

2.ICARE内の「ヨーロッパ国内行動計画」のサイト

3.国内行動計画のためのガイドライン(和訳)

ICAREとは 

Internet Centre Anti Racism Europe の略。普遍的な人権基準、とりわけ非差別の原則を発展させるために活動している人々を支援したり、そういった人々によって使われることを目的にした、1999年10月に開設されたバーチャルネットワーク。設立母体は、UNITED for Intercultural Action とMagenta, Complaints Bureau for Discrimination on Internet の2団体。インターネットは、世界中の人々との共働を可能にするが、ICAREは活動の焦点をヨーロッパにおいている。2001年に南アフリカ共和国のダーバンで開催された、国連の「反人種主義・差別撤廃世界会議」とそれにいたる準備過程においては、インターネットの活用により、会議に参加できないが関心を持っている広範な人々の関与に道を開いてきた。(ICAREホームページはこちら http://www.icare.to

「ヨーロッパ国内行動計画」のサイト

http://www.icare.to/naps/ の和訳です。(2002年7月現在)

NAP国別情報にでてくる月日は、国連反人種主義・差別撤廃世界会議の翌年にあたる2002年のものと思われます。


ヨーロッパ国内行動計画

このページ(http://www.icare.to/naps/ )には、ヨーロッパ諸国における国内行動計画(NAPs)、NAPsのガイドライン、そしてNAPsの提案のあらましが書かれています。ICARE (Internet Center Anti Racism Europe, http://www.icare.to) はまたNAPsに関するメーリングリストnap@icare.toの管理をしています。購読を希望するヨーロッパのNGOや個人(ヨーロッパ外の関心あるNGOや個人も)は、件名に‘subscribe nap’と書いて、info@icare.toまでメールを送信してください。

国内行動計画のガイドライン(NAPs)

国内行動計画のガイドラインの文書は、人種主義・人種差別・外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議(WCAR)の第2回・3回準備委員会に出席したNGOヨーロッパコーカスが作成し、世界会議の後、パリ・イニシアチブによって新しくされました。その目的は、国家が国レベルで人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に効果的に取り組むために求められる具体的な行動を明らかにすることです。ガイドラインはヨーロッパの情況を考慮して作成されました。パリ・イニシアチブはさまざまなネットワークに属する個人のグループであり、これらネットワークが行動を共にすれば相乗効果が生まれることを示しています。グループのメンバーはファシリテータとしてNAPsを推進しています。

国内行動計画のガイドラインは、ストラスブルグ評価会議(2月27日・28日)の場において、ECRI (European Commission Against Racism and Intolerance 人種主義と不寛容に反対する欧州委員会)および各国代表団に対してECRI事務局およびストラスブルグ地域準備委員会を準備したワーキンググループが提出しました。

NAP国別情報 − 各国の進捗情況

オランダ

3月21日に国内プラットフォームが設置され、そこにすべての実行主体(政府および市民社会)が参加して国内行動計画に基づき活動します。このプラットフォームの裾野ができるだけ広がるよう、NGOの世界にいる反差別組織や関係のある団体に参加を呼びかけてきました。

イギリス

英国政府は、WCARの政府文書(未編集版)、WCARの前に作成されたUK人種&ヨーロッパネットワーク(UKREN)のNGO国内協議報告、ヨーロッパガイドラインを基にして、国内行動計画を策定することを決定しました。また、文書に含まれる法的条項や政策的条項と、英国の国内法や慣行の比較検討もします。英国のNGOはそれに対して修正などの意見を出さなくてはなりません。

チェコ

3月18日、プラハにてダーバンのフォローアップの国内セミナー(NGO向け)をOPIM(マイノリティ統合支援組織)が開催、連絡先Jana Tikalova (janatikalova@hotmail.com)。4月12日、NAP推進のための議会セミナー“ダーバンの翌朝”をチェコ共和国の上院議員および異文化交流のためのDuha/NITEDが開催、連絡先 Mirek Prokes   (prokes@hotmailcom)。チェコ外務大臣およびWCARのチェコ代表団団長のH.E.Jan Kavanによる基調講演。チェコおよびスロバキアのNGO歓迎。

あなたの国のNAPに関する活動について情報を送ってください。このページ(http://www.icare.to/naps/ )で紹介します。

〔翻訳:小森 恵 / 部落解放・人権研究所〕



国内行動計画のためのガイドライン

1.はじめに

本書は、国連・人種主義・人種差別・外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議(WCAR)の第2回・3回準備委員会に出席したヨーロッパNGOコーカスが作成し、WCARの後、新しくされた。その目的は、国家が国レベルで人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に効果的に取り組むために求められる具体的な行動を明らかにすることにある。ガイドラインはヨーロッパの文脈で作成されている。

私たちはヨーロッパ諸国家に、2001年9月8日の最終全体会議で採択されたWCAR行動計画のセクション“A. 国内レベル−1.人種主義および関連する差別の防止およびそれらからの保護に向けた立法上、司法上、規制上、行政上およびその他における措置”の66条、第3部“予防措置”の“2.政策と慣行”の99条から102条、並びに、第5部の167条“完全で効果的な平等を実現するための戦略”に基づき、国内行動計画(NAPs)を採択するよう呼びかける。私たちは、各国家に、国内状況に応じて本書のガイドラインを修正して使用し、NAP実施の義務を明確にもつ特別機関を設置し、その進捗状況をモニターするよう勧告する。加えて、国連人権高等弁務官に、反人種主義世界会議のフォローアップの一環としてNAPsの進捗状況を評価するよう要請する(以下の3を参照)。ヨーロッパでは、NAPsの実施をECRI(European Commission Against Racism and Intolerance 人種主義と不寛容に反対する欧州委員会)の定期レビューに組みこむべきである。

2.国内行動計画の全体的戦略

2.1 立法上および行政上における重要な点:

国家は次の目標を達成すべきである。

− あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(ICERD)に留保なしで署名して批准し、現在留保を行なっていればそれを撤回し、個人あるいは集団の人種差別撤廃委員会への通報を認めた人種差別撤廃条約第14条の宣言を行なう。

− すべての移住労働者およびその家族の権利の保護に関する国際条約(MWC)、女性差別撤廃条約(CEDAW)とその選択議定書、国際刑事裁判所のローマ規程およびその他の関連する国際文書に署名して批准する。

− 既存の国内法の内容と、それの世界的および地域的人権基準への準拠を包括的に見直す。

− 国内法、規制および行政手続をICERD、MWC、CEDAWおよびその他関連する国際文書に合わせて改正、統合および施行する。

− 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の形態、表現および効果に関するジェンダーと性別データを系統的および定期的に収集する。

− 人種差別を監視して撲滅する具体的責務を帯びた独立の人権オンブズマンを確立させる。

− 人種主義的行為や発言の加害者に対する調査や、救済および賠償に関する勧告を行なう権限をもたせた効果的な人権機関(ジェンダーと民族的バランスのとれた対象グループのメンバーから構成される)を設置する。

− 差別事件を調査して救済を提供する専門機関が施行する包括的な反差別法を導入する。

− あからさまな差別、遠まわしな差別および制度的人種主義を扱う国内の反人種差別法を立案あるいは改正し、効果的に実施する。

2.2 対象集団に関する特定の重要点:

国家は次の目標を達成すべきである。

2.2a あからさまな差別および遠まわしな差別の定義

− あからさまな差別および遠まわしな差別の定義を採択する。これは、人種あるいは民族的出身に関係なく、人々の間の平等な処遇の原則を実施するEC指令から得ることができる。そこには、“あからさまな差別とは、一つの比較できる状況において、ある人が人種的あるいは民族的出身を理由に別の人より不利に扱われる、扱われた、あるいは扱われるであろうときに起きるものとし、、、、、遠まわしな差別は、中立的と思える規定、規準あるいは慣行が、一つの人種的あるいは民族的出身者たちをその他の人たちと比べて特定的に不利な立場に置いていて、そのことが合法的な目的により正当化されていず、その目的達成手段が適切で必要でない場合に起きるものを指す。”

− その国の経済的、政治的および社会的構造のすべてを考慮した定義を採択する。この点において、東ロンドンで白人青年の一味に殺された10代の少年ステファン・ローレンスの死に関して英国首都警察が行った調査報告の‘2000年4月マクファーソン・レポート’にある定義が、おそらく検討材料にできるだろう。そして制度的差別とは、“一組織が、肌の色、文化あるいは民族的出身のために、ある人々に対する適切で専門的なサービスの提供を集団的に怠ること”と定義できるだろう。それは、マイノリティの民族集団を不利にする偏見、無知、無思慮および人種的なステレオタイプ化により差別に至るまでの過程、姿勢および振舞に見ることができる。

− 居住地分離に反対して防止する具体的な措置をとる。

2.2b 文化を理由にした差別と、多様性とりわけ文化の多様性の積極的推進

− 包括的社会の平等の価値である人種的、民族的、文化的および宗教的グループのアイデンティティーを制度的に発展させる具体的な公共政策を作って実施する。ただし、宗教を利用して、女性の基本的人権を否定したり、さらにはそれを奪うようなことを決してすべきではない。

− 人口の多様性と社会全体における移民の利益を反映する文化機関(例、博物館、文化センター等)を発展させる。

− シーク教徒のように目立った文化的アイデンティティーをもつ民族集団に属する人々は、宗教、人種、文化および民族に基づく複雑な相互作用による特定の差別に直面しており、それゆえ、民族性や宗教あるいは人種を保護する法律や政策でカバーされていないかもしれないことを認識する。それら人々の保護を保障する。

− 全体的な多様性、とりわけ文化的多様性を、いかにして国内法、公共、経済、社会および商業機関や当局、国および地方政策や慣行に、統合/反映できるかについて調査を実施する独立した専門機関/センターを設ける。

2.2c ロマ、シンティ、ジプシーおよびトラベラーズ

− ロマ、ジプシー、シンティおよびトラベラーズに対する反ロマの人種主義や差別を非難し、ロマのアイデンティティーの制度的発展を促進する国内政策プログラムや、質の高い教育と平等な正義を含めたロマ、ジプシー、シンティおよびトラベラーズの市民的、政治的、社会的および文化的権利の平等な享有、発展のための資源への平等なアクセス、そしてあらゆる当局の意思決定プロセスへの完全参加を保証する特別措置を実施し、さらには、ロマ、ジプシー、シンティおよびトラベラーズの領土をもたない民族性の認知を深める努力をする。

2.2d 難民、正規・非正規の移民、外国人、人身売買の被害者、国内避難民および庇護希望者

− 普遍的および地域的人権基準における各国家の義務の準拠を保証する法律および庇護と移民の政策を確立して、見直して、監視して、実施する。

− 1951年の難民に関するジュネーブ条約および1967年の選択議定書、とりわけ第13条‘ノン・ルフールマン原則’に準拠するよう国内法と国内政策を見直して実施し、査証制度、輸送(業)者への制裁および‘第三国’の慣行によって、難民や庇護希望者への保護を拒否しないようにしなくてはならない。

− 難民の定義をジェンダーに基づく暴力を含むように改正あるいは更新し、ジェンダーに基づく暴力を迫害の一形態として認め、ジュネーブ条約とその選択議定書のもとでの庇護の根拠として認めなくてはならない。

− 補償措置や賠償への自由で直接的なアクセスを可能にする。

− 政府当局、とりわけ、警察やその他の法執行官、入国管理職員、事実上の入国管理職員による差別的処遇をなくす。

− 刑事犯罪を犯していない難民や庇護希望者の恣意的および保護的な拘留、強制退去や拘留中の身体的、心理的および精神的に虐待するような拘束、性的虐待と暴力、並びに移動、発言および結社の自由への規制など、行政的、制度的および法的に差異を生じさせる慣行のすべてを廃止する。

− 制限的な上陸・入国管理政策の過剰な重視は、否定的なステレオタイプ像を作り、それにより、対象集団に属する人々や外国人の社会統合にマイナスの影響を与えることを認識する。

− 現行の入国管理政策を見直して、法的地位に関係なく家族の再結合を可能にし、女性、子どもおよび若い移住労働者に人種差別からの具体的な保護を与えるようにする。また、移住労働者や外国人に、住居、保健、雇用、労働、賃金条件などのサービスへの平等なアクセスを与える。

− 適切な法律を施行し、移民の出身国における保護的措置を開発することで、人身売買の現象をなくす具体的措置を採り入れる。とりわけ、政府は、国際的組織犯罪に対する国連条約を補完している“人身売買とりわけ女性と子どもの人身売買を防止、規制および処罰する議定書”に署名、批准して実施すべきである(2000年、イタリアのパレルモで採択)。

− 移住労働者の配偶者に独立した法的地位と労働許可を与え、とりわけ家事労働者として雇用された女性の移住労働者を搾取的な労働条件や性的虐待から保護することを目指した法律を発展させる。

2.2e 子どもと若者

− 子どもの権利条約(CRC)とその選択議定書を留保なしで署名して批准する。

− 国連子どもの権利委員会が認め、明瞭に表現しているように、子どもや若者の法的地位に関係なく、国家の管轄内において、基本的権利がすべての子どもと若者に実現されるよう保障する。

− 子どもや若者に影響を及ぼす問題に関する詳細な統計データを積極的に収集して、子どもや若者に対する人種差別に関する報告を改善する。国家はまた、子どもや若者がそのようなプロセスに関与することを支持する。加えて、国家は、国内および国際人権機関やNGOに同様のことを行って、そうした情報を人種差別撤廃委員会やその他の関連機関が自由に入手できるようにするよう奨励する。

− 国連青年ユニットや欧州評議会の青年およびスポーツ理事会など、既存の構造を活用して、黒人青年の才能を奨励、育成、維持する効果的な新しいネットワークを設ける。黒人青年が国際的な連帯の絆を強化できるよう、世界中の仲間と協力できるプログラムの交換を、財政的あるいはそれ以外の面で、支援してアクセスを提供する。

2.2f 女性

− 行動計画とNAPsの本流にジェンダーの側面を入れる、とりわけジェンダーに敏感でジェンダーに特定的なガイドラインを作成し、あらゆるレベルで性別のデータを利用するようにする。

− 民族性/肌の色とジェンダーの相互作用を調べ、女性に対する複合差別とその影響を特定する方法を編み出す。この方法は、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の撤廃を目指した法的文書、政策、プログラムの作成と実施の土台となるべきである。

2.3 教育、トレーニングおよび情報公開

国家は次の目標を達成すべきである。

− 文化的多様性を調査し、それを促進して、国内および国際的政策や慣行に統合させる方法を研究する。

− 多様性の価値と、社会に対する移民の貢献を強調することで、移住の肯定的な側面を一般社会に広める。

− 人種主義と人種差別の危険性と文化的多様性のメリット、並びに、文化的多様性と人権原則を包含して積極的に促進することの重要性について、定型および非定型教育、一般の意識高揚、そして公務員、警察官、メディア管理者、ジャーナリスト、裁判官、教育従事者のトレーニングに組み入れる。

− すべての人々、とりわけ子どもと若者に、同等の質の教育への同等のアクセスを保障する。また、教員トレーニングに人種平等の側面を取り入れるよう、子どもや若者と協議して貢献してもらう。

− 学校のカリキュラムや高等学習機関に反人種主義プログラムを含めるなど、学校や職場に人権教育を導入する。

− 学校の教科書やカリキュラムを見直し、文化的・民族的多様性を奨励していて、マイノリティを軽蔑するような表現を含んでいず、ジェンダーおよび民族を基にした差別を排除しているよう保障する。加えて国家は、教科書やカリキュラムにおいて、すべての文化や民族集団の肯定的なイメージを促進すべきであり、過去および現代の奴隷制、植民地政策、ホロコースト/ポラジモス(ナチによるロマの皆殺し)およびその他のジェノサイドや人道に反する罪の問題をそれらに取り入れるべきである。

− 異文化学習、アイデンティティ主張および自己肯定意識の育成ための定型および非定型教育を促進する。

− 学生が教育から十分に恩恵をうけることができるよう、多言語教育を提供し、適切な場合は、希望する学生の集団にマイノリティの言語の学習を提供する。

− マイノリティおよび先住民族に属する教員のトレーニングや雇用を促進する。

− マイノリティの子ども、若者、その親たちを、学校における意思決定やカリキュラムの開発に積極的に巻きこむ。

− 教育制度に関する情報を、草の根レベルで民族的マイノリティや移民女性が入手できるようにし、民族的マイノリティのコミュニティにおいて、宗教的背景に関係なく、少女や女性の教育が重要であることを知らしめるキャンペーンを促進する。

− すべての政党に、非人種主義的社会のための欧州政党憲章に署名し、それを厳密に守るよう奨励する。

2.4メディア問題

国家は次の目標を達成すべきである:

− メディアを通した人種主義、差別および外国人排斥の内容の情報の配布、および、人種差別、外国人排斥あるいはあらゆる形態の不寛容や差別を助長する組織を犯罪と定める。

− 新しい技術(インターネットやマルチメディア等)を介して広められる人種主義を監督する国内諮問機関および監視機関を設立する、あるいは既存の機関を支援する。

− インターネット上の差別的内容を処理する苦情受付機関(ホットライン)のような既存の規制機関を支援し、そのような機関を設けようとする市民社会の取り組みを支援する。

− メディア、インターネットのプロバイダーおよび広告代理店に、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に関する行動綱領のような自主規制のツールを採用するよう奨励する。

− メディアに社会の多様性を反映した雇用方針を採用するよう奨励する。

− 人種主義的プロパガンダへの対応として正確で客観的な情報を提供しようとする市民社会の取り組みを支援する。(例:迅速な対応サービス、反人種主義のホームページ、ニュースレター)

− 人種主義撲滅に関する情報を提供し、人種、民族、文化および宗教集団の否定的なイメージやステレオタイプに対抗して、肯定的なイメージを促進し、人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の撤廃に積極的に活動している国内NGOへのウェブ上のリンクを提供するような政府後援のパブリックアクセスのインターネットのサイトを設ける。

− ポルノグラフィの非常に有害な効果に終止符を打つ具体的で緊急の措置を取る。これらは黒人、移民および民族的マイノリティの女性や‘エキゾチック’な性的対象として描かれる有色の肌の女性に対する人種主義的なステレオタイプを助長している。

2.5 矯正、依頼、救済、補償およびその他の措置

国家は次の目標を達成すべきである。

− 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容が原因で起きた大西洋横断の奴隷貿易、ホロコースト/ポラジモスそしてアルメニア人の大虐殺は、すべて人道に反する罪であると認める。

− すべての奴隷貿易および植民地化は現代的人種主義を支える重要な要素であると認める。

− 奴隷制、植民地化そしてアパルトヘイトの過去および現在も続くインパクトを救済するために賠償やその他の措置を使う。

− 現代的形態の奴隷制、強制および債務労働、ジェノサイドそして旧ユーゴスラビアやチェチェンで起きたような民族浄化の事実を認め、非難する。

− 商業および経済活動のあらゆるレベルから、人種、国籍、文化、民族的出身、宗教や信念、ジェンダーおよびその他の理由による差別の撤廃を保障するため、公共の受注契約の条項に効果的な反差別の条項を取り入れる。

2.6 完全で効果的な平等を達成する戦略

国家は次の目標を達成すべきである。

− 国内の経済、政治、社会および文化的構造、すなわち教育、保健および社会保障サービス、裁判、法執行、メディア、労働市場、住居および商品へのアクセス、移民機関、難民協議会およびその他の国家機関の中における、人種、国籍、民族的出身、宗教あるいは信念、ジェンダー、年令、性的指向、障害、社会的地位および文化などを理由とした制度的差別をなくすために、具体的な法的措置を取る。差別に取り組むとき、国家は、人種、肌の色、国籍、民族的出身、宗教あるいは信念、ジェンダー、年令、性的指向、障害、社会的地位および文化などを理由にした、個人の差別的姿勢や行動も含み、差別的な制度的政策や慣行を特定し、それらを改めるべきである。

− 人種差別を防止して救済する肯定的な行動が即時に取られるよう保障する。

− 先住民族および部族に関するILO第169条に定められている権利を保障し、“民族的、言語的および宗教的少数者に属する人の権利に関する国連宣言”の勧告を実施する。

− 国内政策および慣行のすべてと、意思決定の全段階を含むあらゆる領域の公的生活の主流に、人種主義をなくす視点をとり入れる。主流へのとり入れには、平等検証(equality proofing)、ガイドライン、基準、良い慣行、人種主義経験集団の参加、ポジティブ・アクション(積極的差別是正措置)、データ収集、積極的監視および効果評価(impact assessment)の利用が含まれる。

− すべての住民が政治的、社会的、経済的、市民的および文化的権利を完全に享有できるような法律を採択する。

2.7 市民社会の関与

国家は次の目標を達成すべきである。

− 国内行動計画の作成、実施および評価において、NGO、労働組合および市民社会のその他関心ある集団との積極的な協議を保障する。

− ECRIや国連人種差別撤廃委員会に提出する国別報告の作成前および作成過程において、また、国連人種差別撤廃委員会(CERD)が採択した最終所見のフォローアップにおいて、NGOやその他市民社会の関心ある集団とのオープンな対話をもつ。

− すべての集団、とりわけ子どもや若者が、反人種主義および反ジェンダー政策に関するすべての決定において意見を求められ、関与できるように保障する。

2.8  地方当局およびコミュニティ

国家は次の目標を達成すべきである。

− 国内行動計画の枠内において、地元コミュニティの協議および参加を伴う地元の行動計画を作成して実施する。

− 地方議会やその他の地方当局は、地元の行動計画の調整や監視を促進すべきである。

3. 国内行動計画の国レベルおよび国際レベルでの実施と監視

3.1 国内行動計画

関係省庁の代表、市民社会の代表、とりわけ対象集団の代表からなる国内執行機関に、国内行動計画の実施任務を託すべきである。

国内行動計画の年次見直しを、NGOや市民社会のその他の関係者と協議しながら、独立した機関が行うべきである。国会はこの年次見直しを審議すべきである。

3.2  人種主義、人種差別、外国人排斥および関連ある不寛容に反対する世界会議の結果のフォローアップにおける欧州評議会の役割

ECRIには具体的な責務を与えなくてはならない、そして、そこが2005年までの国内行動計画の実施および評価を監督できるよう、適切に資金を供給しなくてはならない。

3.3 フォローアップ

ヨーロッパにおける反人種主義の闘いの進展を評価し、獲得した結果に沿って行動計画を適宜変えるため、欧州評議会は地域フォローアップ会議を2005年までに組織すべきである。

3.4 予算/資金割当

各国政府は国内行動計画の効果的実施のために具体的な予算を立てなくてはならない。

さらに、国内NGOの国内および国際的な人種主義反対活動に対して、そして、汎ヨーロッパレベルおよび世界レベルにおける人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容の撤廃に活発なNGO に対して、政府機関は資金援助を提供しなくてはならない。

原文出所:http://www.icare.to/naps/naps-guidelines.html

〔翻訳:小森 恵 / 部落解放・人権研究所〕