I.貧困の削減における進展
A.導入
1. 2015年までに、日給1ドル以下の貧困層の比率を半減させることを目標とする。
B.進展の評価
2. そのための主たる指標は、ミレニアム宣言に示された目標値にどの程度ちかづいたか。
※世銀:日給1ドル以下の貧困層は29.6%から23.2%へ(90年から99年まで)
※しかし人口的には50億人に増加
世界的に見れば目標は達成できるという見込みがあるが、地域的に見れば薗様相は異なる。南アジア・東アジア・太平洋地域を除き、ゆり戻しがある。
3. 総会決議57/266では、女性のエンパワーメントが強調された。その後、労働市場における性別格差は改善しつつある。しかし、インフォーマルセクターでの男性の進出が顕著で、こういった傾向は逆転しつつある。
4. 安全な飲料水の供給無しには、貧困の削減は不可能である。南・中央アジアでは改善が見られたけれども、サハラ以南のアフリカでは世界で最もその割合が低い。
5. HIV/AIDSの蔓延は深刻で、成人女性にかなり急速に広まっている。
政府開発援助
6. 政府開発援助は4.8%増加したけれども、目標達成のためには全く不足。年500億ドルの追加支援が必要(世銀推計)。イギリス提案の「国際金融機構」のようなものが必要。
債権放棄
7. 重債務貧困国プログラムを通じて、約40%の借款が免除された(世銀・IMF推計)。
8. このプログラムの成果として、26カ国が中間地点(決定点)、8カ国が達成点に到達。
C.10年実施に際してのいくつかの問題点
9. ここでは、国際的・国内的レベルでのガバナンスの問題、そして貧困削減戦略の問題を選んで議論する。
ガバナンス
10. このガバナンスの問題は貧困撲滅に向けた統合的アプローチの重要な要素として重視されてきた。社会・経済開発に対する民主的ガバナンスについての懸念は、国連の会議やサミットでもたびたび取り上げられてきた(例えば2002年ヨハネスブルクでの持続可能な開発に関する世界サミット)。
11. 多くの開発途上・民主主義への移行中の経済は、参加型意思決定プロセスの発展を通じて、ガバナンスを強化しつつある。他方で、基盤が脆弱で会えることから、権威主義に後戻りする場合もある。その点で、地域的・国際的な支援がきわめて重要。
12. アフリカでの支援の例
13. 良い経済ガバナンス(Good economic governance)の重要性は貧困撲滅を達成する上で極めて重要。また、後発開発途上国の特別の必要が強調されるべき。
貧困に対処するための戦略(Poverty Strategies)
15. 国連開発計画は、貧困戦略イニシアティブ(Poverty Strategy Initiative)を1996年に立ち上げた。1100万ドルを原紙に、11カ国でのプロジェクトが開始された(1997−98年)。
- 貧困の量的評価、家計実態調査、貧困のありかたのプロフィール作成、貧困削減戦略・計画策定など
16. 概して、このイニシアティブによる研究は、貧困削減プログラムの策定に対してかなりのインパクトを与えた。貧困に関する知見を明らかにすることにより、政策立案の議論を刺激し、意識を高めた。また、国内専門家や市民社会(NGO)の力量を高めることにも繋がる。
17. 概して、貧困削減戦略の策定・採択・実施は、いくつかの方面で、実によく進展している。
18. 貧困削減戦略文書の焦点にあるのは、ミレニアム宣言の開発目標を達成すること、である。このメカニズムは、二国間の開発援助を差し向ける手段として用いられている。
19. 2003年3月までに、25件の貧困削減戦略文書が再検討され、中間的な目標が23カ国で達成された。社会開発委員会は、次の点がきわめて重要であると指摘した。すなわち、貧困削減戦略文書がよりよい社会的な結果を達成するためには、かかる文書をより広い文脈に置くための広範なプラットフォームが必要である。
20. ミレニアム開発目標のモニタリングが既に進行中である。諸国は自発的に報告書を策定して提出した。これらは政治的リーダーに関与させ、市民社会などを動員するものとしてとらえられるべき。
D.結論
21. 貧困撲滅のための10年の実施状況は、地域によって不均衡である(Patchy and uneven)。急速に成長している開発途上国においては、多方面での進展が見られるものの、より貧困な開発途上国では、経済社会開発が必要で、かなりの遅れがある。更なる努力が国内レベルで必要であるが、地域社会・国際社会の支援を要する。
22. それでも、進展に向かっていることを示すいくつかの発展と結果が存在する。これらの努力は強調的な支援を地域・国際レベルで行うに値するものであって、この方面でも進展が見られることは特筆に価し、とりわけ近年顕著となっているのはアフリカである。もしこれらの努力が継続し、てこ入れされるならば、政治的及び社会的環境は経済的・社会的発展のために健全かつ安定的な基盤を提供することとなるだろう。
23. また、貧困削減のための戦略が、さらに多くの国々で採用されてきていることも特筆に価しよう。この戦略は経済的・社会的発展にむけた統合的アプローチの一部とされ、国家的所有(National Ownership)とステークホルダーの広範な参加を重視している。この方面での進展は、貧困撲滅に向けた国家のコミットメント、そして諸国の総合的な政策枠組とその対外的な援助プログラムとの緊密な連携を強調するものである。しかしながら、貧困削減戦略文書がよりよい社会的成果を生むためには、あらゆる社会的目的が十分に考慮されたより広い文脈に、これらの文書を位置付けるような広範なプラットフォームが必要である。
24. モンテレイで行われたコミットメントに従って、政府開発援助が若干増加したことは、心強いことである。そのレベルが、ミレニアム開発目標を達成するために必要とされる最低限のレベルをかなり下回っているにせよ、近年の出来事からすれば、それらが継続して起こるかもしれないとの楽観的な見通しが導き出される。最も貧困な諸国が直面している現実は依然として変わっていない。つまり、多くのそういった国が最善の努力をおこない、開発と貧困削減のために国内の資源を十分に活用しようとしているけれども、これらの諸国が開発目標を達成することができるよう確保するためには、対外援助や国際協力が極めて重要だ、ということである。
II.2005年国際小口金融年の目的と取り組みの提案
A.導入
25. 総会は、決議53/197で、2005年を国際小口金融年とすることに決定、貧困の撲滅における小口金融の役割、社会開発、貧困の内に生きる人々の生活に対する積極的な影響について、さらに高い認知を広めるよう、各方面に招請。また、貧困撲滅に取り組む全ての者に対して、追加的な措置を取ることを考慮するよう招請したが、これには、既存の、または今後設立される小口金融機関の強化が含まれる。
26. 小口金融年について、提案される目的と活動は、2002年12月6日付けの口上書に対する加盟国の見解を考慮に入れたものである。また、国連システムの関連機関、及び関心を有するNGOの見解をも反映している。近年の主要な国連の会議及びサミットにおいて打ち出された勧告もまた、考慮に入れている。
B.背景と全般的な方向性
27. 近年、貧困者特有の、そして多様なニーズは、様々な金融商品・金融サービスを必要とする点が、強調されている。貧しい人々にとって小口金融は有益だという考え方から、貧困の内に生きる人々が一連の金融ツールへのアクセスを得るに値するという認識に発展している。
28. 貧しい人々に向けた一連の金融サービスの提供は、しばしば小口融資と呼ばれる。小口金融や小口融資は、効果的な貧困撲滅のツールとして、一層の注目を得てきており、多くの開発途上国で貧困から人々を救い出すことに成功裏に貢献してきた。貧困撲滅における小口金融の役割は、経社理が1997年7月25日に採択した合意された結論1997/1でも強調されている。
29. 主要な国連会議や首脳会議でも、貧困撲滅と、貧しい人々、とりわけ女性のエンパワーメントにおける小口金融や小口融資の役割が強調されている。
30. 主要な国連会議や首脳会議に刺激を受けて、1997年に、ワシントンで小口金融サミットが開催された。ここでは、9年間の世界キャンペーンを立ち上げ、2005年までに1億の最も貧困な家族に、自己雇用のための貸し付けやその他の金融・ビジネスサービスに手を届かせようと取り組んでいる。2001年末までに、2680万家族が、この計画によって便益を受けた。
31. 健全な小口記入は、貧困な人々の生活に積極的なインパクトを持っているが、殆どの人々はそのアクセスを絶たれている。そこで、現在の課題は、その範囲を広げ、持続可能な形でより効果的なサービスを発展させることである。また、エンパワーメントの手法を小口金融に織り込むこと、さらに女性がより一層参加するよう主張するネットワークを構築することもまた、重要な優先課題である。焦点としては、よい実践の促進、小口金融機関の能力向上、各ステークホルダー間のパートナーシップ醸成である。
C.目的の提案
32. 国際小口記入年は、世界中での小口金融・融資プログラムへの弾みをつけるという点で、重要なイベントとなるであろう。その目的としては、次のものが考えられる。
- 小口金融・融資と開発目標。
- 公衆の認知。
- 貧困層寄りの金融システム。
- 持続可能なアクセス。
- イノベーションとパートナーシップ。
D.国内的、地域的、国際的レベルでの取り組みとイニシアティブ
1.小口金融・融資と開発目標
33. 小口金融・融資が広がることによって、ミレニアム宣言その他に含まれる目標の達成に貢献することとなる。その貢献を評価し、促進するために次の取り組みが考えられる。
- 1億家族に持続可能な金融サービスに到達させるという目標にむけてなされた進展の評価
- 小口金融・融資活動の把握、マッピング、促進
- 現状の、小口金融・融資の資源配分の評価、そして目標達成に要する資源の評価
- 各加盟国に対して、この国際年を、小口金融が有する開発目標への貢献という観点から戦略を策定する機会とするよう促すこと
34. これら努力の結果は、フォローアップに関する勧告と合わせて、報告書において総合されるべきであろう。
2.公衆の認知
35. この国際年の取り組みは、公衆の認知を高めるためのプラットフォームを提供するものである。
国際レベルでの取り組み
36. 小口金融・融資の重要性について認識を高めるために、次のような主張活動が行われるべき。
- 世界小口金融・融資デーの設定
- 情報へのアクセスの拡大、様々な媒体の活用
- 新たなイノベーション、連携、その他のよい実践の促進を、様々なメディアを用いて行うこと
- 小口金融・融資に関して得られた経験・教訓の共有
- 返済、小規模企業の立ち上げなど、様々な小口金融の顧客の優良事例を強調するキャンペーンの実施など
地域・国内レベルでの活動
37. 活動には、次のものが含まれる。
- 地域・国内のスタディーツアーやワークショップの組織化
- 認知向上のためのイベントの開催
- 公衆の意識形成のために文書やビデオなどの教材作成
- マーケティング改善を通じたアウトリーチの拡大
- 教育機関の参画の奨励
3.貧困者寄りの金融システム
38. 各政府が、持続可能な、貧困層寄りの金融セクターを刺激し、小口金融を国内金融システムにおける重要な部分と位置付ける戦略を策定するための重要な措置を明らかにする機会を、この国際年は提供する。
国際レベルでの取り組み
39. 作業部会を設置し、貧困層寄りの金融政策・規制・法的枠組についての勧告を策定。特定のイニシアティブとして、次のものが含まれる。
- 各方面と協議し、研究成果に基づいて、政府が取るべき措置を明らかにすること。
- 各方面が行う作業を統合すること。
- 貧困層寄りの金融セクターを刺激するための勧告を準備すること。
- その刺激のために必要な重要な措置に関して、訓練のためにワークショップを開催すること。
- 優良な実践を行っている国について表彰制度を設置すること。
地域・国内レベルでの取り組み
40. 取組みには、次のものが含まれる。
- 法上・規制上・組織上の枠組について、再検討する必要性を考慮すること。
- アクセスや能力を改善するための訓練やインセンティブを提供すること。
- 公式的な金融セクターと協働して、小口金融機関立ち上げなどでその関与を拡大すること。
4.持続可能なアクセス
41. この国際年は、小口金融・融資セクターにおける持続可能性を確立するための機会でもある。かかるセクターの基盤は、各小口金融業者の能力と、かかる業者を支援するドナー・政府の能力にある。
国際レベルにおける取り組み
42. この国際年は、現在入手可能な研究に基づくものであるが、これに加えて、一連の新たな活動によって、持続可能性の重要性が強調され、ステークホルダーに対して小口金融の基盤強化のためにツールと知識が提供されることとなろう。
- 各方面のステークホルダーが、持続可能な小口金融を拡大するために要する戦略を実施する作業プラットフォームの促進
- 統一的なパフォーマンス測定基準を実施する努力の増大
地域・国内レベルにおける取り組み
43. 小口金融サービスへの持続可能なアクセスを促進するための先駆的な役割を、このレベルでの取り組みは果たすであろう。例えば
- 資金提供の調整メカニズムを創設する国内金融セクター戦略の策定
- 持続可能な小口金融に対する障害の探求と、それらを確立・強化するために執られる行動の評価
- 小口金融・融資セクターの能力向上訓練プログラムの評価
- 持続可能な金融機関に対する資本投入(capitalization)及び制度上の支援の提供
5.イノベーションとパートナーシップ
44. この国際年は、各ステークホルダー間のイノベーションと戦略的パートナーシップを促進・支援・創出し、さらに小口金融機関の成功を拡大する機会を提供する。
国際レベルにおける取り組み
45. 戦略的パートナーシップを創出する上で、個別的・集合的な目的、比較的な利益、役割及び責任に関するコンセンサスに立脚することが重要で、この努力は、次のような国際的な取り組みに繋がっていくであろう。
- パートナーシップ・イニシアティブを支援・促進し、イノベーティブで協働的なソリューションを確立する活動・イベントの開催
- コミュニケーション・プラットフォームを調整し、私的セクターが貧困削減について有する役割を認識し、かつ私的セクターの金融イノベーションと公私パートナーシップを促進すること。
- 能力向上ネットワーク、パートナーシップ確立のためのやりとり(partnership building exchange)、メンタリングの機会の促進。これによって最前線にいる実務家が経験を交換することが可能になるであろう。
- 金融・情報・コミュニケーション技術と小口金融セクターとのイノベーション・パートナーシップの支援・促進
地域・国内レベルでの取り組み
46. 地域及び国内レベルでは、イノベーションと戦略的パートナーシップを奨励し、支援するための調整されたアプローチにより、パートナー間の実践を促す努力を強化し、その機会を創出することとなるだろう。そのイニシアティブには、次のものが含まれる。
- 小口金融の深まり、規模の効果、そして効率を高め、不利益を被っている女性のアクセスを容易にするために、地域ネットワークと連携・協働すること。
- 資金提供者と後発開発途上国との会合を行うことを通じて、固有の小口金融ニーズを明らかにすることを目的とした協働イニシアティブを立ち上げること。
- 国内のよい実践を研究し、文書化し、そして紹介するためのプラットフォームを開発すること。
E.制度的・予算的取極め
47. 国際年やその他類似のイベントにおける過去の経験から、総会が通常国連内部の機関を指名して、かかる取り組みについて国連システムの活動を調整・実施する主管機関の役割を果たすよう任じていることがわかる。小口金融年についてのこの主管機関の役割は、国連資本開発基金と事務局の経済社会問題局とが協働でその任にあたることとなるだろう。資本開発基金とは、国連開発計画(UNDP)の中にある小口金融に関する諮問技術提供センターであって、かかる調整機関に参画することは最適である。また、経済社会問題局も、主要な国連会議の結果の実施において役割を果たしてきたことから、最適な機関といえる。
48. パートナーシップや、全ての関連アクターの参加を通じた国内レベルでの活動・イニシアティブは、この国際年の取組みにとって、極めて重要である。このようなアプローチは、国内調整メカニズムを立ち上げることを通じて推進されうる。
49. この国際年の取り組みを成功させるかどうかは、自発的な貢献を通じた資金提供を動員する能力にかかっている。全てのパートナーからの支援が必要である。
F.結論と勧告
50. 貧困層に向けた小口金融または他の金融サービスは、貧困削減と貧困層とりわけ女性のエンパワーメントにとって重要な手段である。この国際年の取り組みは、小口金融の重要性についての認識を高めるために極めて重要な機会を提供する。
51. 総会は、次のような行動を考慮するよう望まれる。
- 経済社会問題局と国連資本開発基金に対して、共同で国際年の取り組みについて準備するために国連システムの活動を調整するよう招請し、国連システムの関連諸機関に対して、これら調整機関と協働するよう求めること。
- 世界銀行、国連資本開発基金の貧困層支援諮問グループ、及び国連システムの関連する諸機関に対して、持続可能な、貧困者寄りの金融セクターを創出するための勧告を準備するよう招請すること。
- 加盟国に対し、この国際年の取り組みに関連する活動を促進することについて責任を負う国内調整委員会又は窓口を設置することを考慮するよう招請すること。
- 加盟国、国連システムの関連諸機関、非政府機関、私的セクターその他のアクターに対して、国際年の準備及び実施に関して協働するよう求めること。
- 加盟国に対して、国際小口金融年のための非公式グループを開催するよう招請すること。
- 加盟国、国連システムの関連諸機関、非政府機関、私的セクター及び財団、並びにその他のアクターに対して、この国際年に支援するために、自発的な貢献を行うよう奨励すること。
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