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1999年1月、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで、国連のアナン事務総長が、国連と企業の新たなパートナーシップの枠組みとして[グローバルコンパクト]を提唱した。それは、人権、労働、環境の三つの分野において企業の社会的責任を求めると共に、国連はその取り組みなどを支援していくというものである。
その基礎には、
- 国際的に宣言された人権の支持、尊重
- 人権侵害に組さない体制の確立
- 結社の自由、団体交渉の権利の確立
- 強制労働、義務的労働の排除
- 児童労働の実効的な廃止
- 雇用と職業における差別の禁止
- 緩急問題に対する予防的取り組みの支持
- より大きな環境責任を負う事に対する積極的な取り組み
- 環境にやさしい技術の開発と普及の奨励、
の9原則がある。
こうした動向は、1992年の国連環境計画が主導した「環境と持続可能な発展の関する銀行声明」(署名はすでに30カ国150銀行をこす)や2001年の国連人権小委員会による「企業のための基本的人権原則」(草案)の作成、NGOによる児童労働の禁止などを求めた認証制度・SA8000(1997年)などにみられるように、一過性のものではない。
こうした背景には、企業の社会的責任の内容が量的にも質的にも大きなものとなってきていることがある。1つは、グローバル化の中で、企業自体が旧来のような株主だけではなく、国内外の消費者や従業員、取引会社、投資家、コミュ二ティなどさまざまな関係者に責任を負った経営を求められてきていることや、2つに、これまでの国家を主とした国連のシステムでは行き詰まりが生まれてきていること、そして3つ目に、NPO(NGO)活動が「監視・要求型」と共に「情報提供・アドボカシー型」の取り組みとして大きく発展してきていること、などの要因が存在しているのである。
国連「グローバルコンパクト」は提唱より3年以内に1000社の賛同を得ることを目標にしているが、すでに欧米のみならず多くの国の企業が賛同し取り組みを進めている。
日本でも多くの企業が検討はしているものの、実際に参加しているのは現時点で1社だけである。またさきの「銀行声明」に署名しているのも1社という状況である。「グローバルコンパクト」や「銀行声明」への賛同は、企業の社会的責任にたいする国内外への意見表明であり、その意味では企業の取り組みの到達点を示すものであり、また新たな出発点でもある。1日も早く多くの企業が国連「グローバルコンパクト」に賛同され、国際社会において名誉ある位置を得る必要がある。
またさまざまな社会的責任を担っている「誠実な」企業を支援できる社会的仕組みを確立していく必要がある。日本でも近年ようやく「エコファンド」や「社会貢献ファンド」のように、環境や公正な雇用・市民社会への貢献などの観点から選んだ企業に投資するファンドが生まれてきているし、朝日新聞文化財団や「インテグレックス」による社会的評価も進められている。日本経済は厳しい不況に直面しているが、こうした時こそ真価が問われているといえる。