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自明のことであるが、研究所に求められているのは、部落差別をはじめとするあらゆる差別の撤廃のために過去・現在・未来を明らかにすることである。差別が成立した過去を探り、差別の現状をあらゆる角度から分析し、将来の方向性を明確にすることである。そうした研究を通じて、人権確立社会と部落解放運動の前照灯になることである。
社会が情報化していく中で、質の高い知識や情報の重要性はますます高まっている。それらを蓄積して創造し、発信していくのが研究所の本来の役割である。発信機能としての啓発・企画は現在の研究所の総合力からすればかなりの比重が置かれ、ある面では総合力以上のことを展開しているといえる。これからは、発信機能の前提となる知的蓄積と創造により大きな比重を置くことが重要になってくる。
つまり、研究・調査部門により力点を置いた研究所へ改革していく必要がある。そのためには研究所内のシステムと雰囲気を変え、研究者をはじめとする多くの人びとが知的好奇心をもって集うようなものにしなければならない。知的創造を担うのは人であり、それらの人びとを結集できるかどうかが鍵である。研究所の現在の資源をそのために振り向けたり、人的配置を考えていかなければならない時期である。それができなければ研究所は単なる啓発機関になり、他の機関がその部分を担うことになってしまう。研究所が部落問題における知的競争のトップランナーとして、部落解放運動に知的貢献を続けるためには30周年を契機に研究面に一層の力点を置く改革の実行が重要だといえる。
(『明日への挑戦―部落解放研究所から部落解放・人権研究所へ30年の歩み―』より)