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これまでの部落問題調査(生活・意識を問わず)に関して、調査対象者、調査対象数や抽出方法、質問(回答)項目の内容、調査者の認識不足に伴う調査結果の問題、比較データ等々、多岐にわたって検討の必要性が指摘されている。
同時に、下記のような点でも検討すべき課題があり、部落問題調査のあり方が大きく問われていると思う。
第1に、調査対象の領域が総合的な内容で終わってしまい、結果としては問題の総花的な存在の確認に終わりがちであることである。例えば、近年の調査では最も工夫がされている学力調査ですら、こうした課題を内包している(高田一宏「教育調査と教育改革」『解放教育』369号、1998年9月)。意識調査の場合も、もっと焦点を絞った市民意識調査や被差別体験者の意識調査など検討されてもいいのではないか。
ただ誤解のないように付言すれば、現実にはこうした総合的な調査すら実施していない都府県・市町村があるし、それを継続的に実施している地方自治体は極めてまれであるという問題がある。また、各地の部落差別の実態からすれば、こうした総合的調査も一定、有効であることは言うまでもない。
要は、総合的調査とテーマ(分野)別階層別個別調査の適切な組合せが必要だということである。
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第2に、歴史的には解放運動や同和行政の発展の中で初めて可能となってきたものではあるが、逆に今日では調査方法が質問紙調査による統計的手法に偏りがちな傾向があることである。
これも上記の指摘と関連するが、調査の具体的な目的が十分検討され、その目的との関係で、統計的方法だけでなく、個人インタビュー等の事例研究法やさまざまな方法が調査方法として検討されるべきで、あるいはそれらの組合せが検討されるべきである。
第3に、部落を対象にした場合は生活実態調査のみで、市民を対象にした場合は意識調査のみ、という枠組みがあることである。
これは、部落問題の認識において、前者は生活実態の格差是正論、後者は意識における差別・被差別の側面だけの関係論を前提にしている。
こうした認識に立つ調査も一定、有効であることは言うまでもないが、こうした認識のみの調査で終始したのでは極めて不十分ではないか。第3期の解放運動の創造をめざす立場からいえば、部落住民の自立に関連した意識(例えば、教育や職業への希望・意欲や部落アイデンティティと実際の達成状況との関係)、市民と部落住民とを共に対象とした調査(例えば、人権意識の基礎となる自尊感情、コミュニケーション力、寛容性等の意識やジェンダーに関する意識等)が検討されるべきである。
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以上のような問題意識に基づいて部落問題調査の全体像をおさえた上で、当面する、調査の具体的目的、実施主体やその力量等に応じた調査方法を検討し、調査を実施すべきである。
しかし、こうした種々の調査のためには、前提になる問題意識、仮説の十分な検討、それに基づく予備調査などがしっかりと基礎作業としてなされていなければならない。この点では、研究者サイドの取組みが大きく立遅れているのではないか。
もちろん、個別的にはこうした問題意識に基づく先進的な調査が実施されている。これらの成果も吸収し、部落問題調査のあり方を早急に発展させていかなければならない。