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意見・主張
 
研究所通信286号より
掲載日:2002.6.10
第2回原田伴彦・部落史研究奨励金

第2回原田伴彦・部落史研究奨励金について選考会議が開かれ、以下の3名に奨励金が支給されることになった。

友寄 景方さん

(選考理由)

従来ほとんど知られていない、近代のスラムにおけるキリスト教受容の実態を、キリスト教関係の史料から明らかにする研究は、今後の近代史研究においても重要な意義があると考えられる。研究の対象とする芝新網町は近世の被差別民である「願人」の流れを組む人びとの集住地域であり、社会的差別(賤視)との関連も明らかにされることと思う。同氏にはすでに東京・大阪の被差別部落における同様の実績もあり、成果が期待される。

高木 信夫さん

(選考理由)

近年の部落史・解放運動史の研究は、‡@部落解放運動(水平運動)だけではなく、同時に存在した融和運動や部落改善運動を含め、なおかつ‡A全国(中央)の動きとあわせて地域に密着した姿をトータルに明らかにする方向へ間違いなく進んでいるが、史料の発掘という点で言えば、これまでの研究のあり方に規定されて充分ではない。地方紙を素材に融和運動の展開を考察することは、今後の部落史研究に大きな貢献をすると考えられる。

宮前 千雅子さん

(選考理由)

宮前千雅子さんは、これまで主として近代部落史、近代部落の女性史およびハンセン病の歴史などの研究に取り組んでこられ、その成果を論文として発表してこられた。

このたびハンセン病に関する史料を収集・整理して、ハンセン病およびハンセン病者への差別の特質を解明するための基礎的研究をしたいとして、応募してこられた。重要な研究課題であるにもかかわらず、研究が著しく遅れている分野にあって、その意義は大きく、かつ時宜を得たものである。研究奨励に十分値するとして選考された。

ただし、一年間という限られた期間で、古代・中世まで含めて史料収集・整理およびその分析を行うのは、困難であると思われるので、さしあたって近世中心に研究を進めるのが望ましいと思われる。