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意見・主張
 
研究所通信256号より
掲載日:1999.12.10
活 動 の 基 本 は 研 究 に

寺木伸明(桃山学院大学)

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 去る6月24日に行われた部落解放研究所第48回総会にて、創立以来30年の活動実績を振り返り、かつ活動の現状と人権をめぐる内外の情勢をふまえて、部落解放・人権研究所と名称変更することが正式に決定された。部落解放研究所創立翌年の1969年末から研究所の活動に、右も左も分からないまま少しずつかかわり始めた私にとっても、さまざまな思い出が脳裡をよぎり、一定の感慨を禁じ得ない。今、創立30周年の時点に立って、今後の研究所のあり方について、私の望むところをいくつか書いてみたい。

 第一に、第48回総会でも確認されたように、名称変更はなされたが、本研究所は部落問題を中心に捉えた人権研究所であるということを常にわきまえておかなければならないということである。そのことを基本に、他の人権関係や平和関係研究機関とネットワークを結びながら、それぞれの特色・独自性を尊重しながら連携を密にしていくことが大切であると思う。

 また、本研究所は、文字通り研究機関であるので、部落問題を中心とした人権問題を解決するための研究活動に重心をおかなければならないということである。確かに啓発活動なども必要であり、かつ大事でもあるが、基本は研究にあることを軽視してはならないと思う。

 第二に、嘱託研究員制度をさらに充実させ、若手研究者の結集を促すことである。あわせて、いっそう広く研究者の結集をはかるよう努力することである。関係資料の収集にも力を入れて、名実ともに日本における部落問題を中心とした人権研究センター的な役割を果たしうる機関になってほしいと願っている。

第三に、部落解放運動との関係のあり方をさらに意識的に追求していかなければならないであろうということである。研究所は、運動の下請け機関ではないし、また、そうあってはならない。そうなれば、真の研究が停滞し、結果は運動にとってもマイナスになるということは、多くの歴史的実例が教えるところである。しかし、かといって運動とまったく切り離されたところで、部落問題の解決のための研究が活発に進むわけでもない。両者の望ましい関係を相互の立場と独自性を尊重しながら、協議と相互理解を通じて構築していく必要があると思う。

 第四に、研究所の運営に関しての意思決定への、スタッフのさらなる参加を実現することである。あわせてスタッフの研究活動の場と時間をさらに保障するように努めることが望まれる。以上、私の期待を率直に書かせていただいたが、ご批判を仰ぎたい。

(『明日への挑戦―部落解放研究所から部落解放・人権研究所へ30年の歩み―』より)