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意見・主張
 
研究所通信255号より
掲載日:1999.11.10
グローバル化時代の人権問題研究を

桂 正孝(大阪市立大学)

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 世界は、グローバリゼーションの時代に突入したといわれる。そうした地殻変動と連動して、日本社会も激動転換期に入っている。本研究所も、日本社会に固有な部落差別の解明とその撤廃の道筋を示すことによって、現代日本の人権問題の解決に貢献し、グローバル化に立ち向かうことができる。

 それには、第1に、研究がこれまで以上に総合化され、学際的に展開される必要がある。文化人類学や環境倫理学、宗教社会心理学や臨床心理学などの研究成果と研究方法の導入も図られねばなるまい。

 第2に、日本社会も急速に多エスニック化しつつあり、「近代化と差別」の視点と統一して部落問題・人権問題の追究がなされるべきであろう。

 第3に、部落差別が、日本社会の「差別の重層構造」に組み込まれて機能してきた経緯から、アイヌ民族をはじめ、他のエスニック・マイノリティに対する差別との比較研究を重視すべきであろう。さらに、性差別や障害者差別などとの関係性も解明されるべきであろう。

 第4に、人権問題と人権教育の研究にかかわる国連をはじめとする国際的研究機関のネットワークに参入し、国際交流を積極的に展開することが望まれる。

 以上、述べた研究活動の諸成果は、いうまでもなく部落解放運動をはじめとする人権運動によって検証され、生かされねばならない。つまり、シンクタンクと研修・啓発の役割を果たすことが期待されているのである。

 

(『明日への挑戦―部落解放研究所から部落解放・人権研究所へ30年の歩み―』より)